この前のトヨタの”カイゼン”
今回は介護がサービス業といわれながらも
果たしてスタッフがどこまでそれを感じているか??
私も時折読む「プレジデント」から抜粋。
それぞれの立場から書かれた具体的内容は
いろいろ考えさせられますね。
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29年連続日本一。「加賀屋」の泣けるサービス
■鍋蓋の片づけ方を白熱して議論する
フロアリーダーの若葉さんが、おしぼりの出し方、椀物の蓋を片づける
タイミング、煎茶の美味しい淹れ方など、望ましいサービスの手本を見せていく。
従業員たちはみな真剣な眼差しでその様子を見つめていた。
一つのテーマを終えるたびに、若葉さんがこう問いかけるのが印象的だった。
「意見があったら言ってください。みんなでつくり上げていきましょう」
「これはベターであってベストではありません。少しでもいいなと思うことを、
みんなで掘り出していこうと思います」
するとこれまでの緊張した雰囲気がふっと緩み、ぽつぽつと質問の声が
あがり始める。特に議論が白熱したのは、
お膳の鍋蓋の処理に話題が及んだときだった。
椀物の蓋は貝やカニのカラ入れにも使えるので、すぐに下げてはならない。
しかし、一回り大きい鍋の蓋はどうか──?
現場での体験を彼女たちは胸を張って語る。
現在、昨年秋からの不況の影響で、加賀屋の業績は厳しい状況が
続いているという。だが、その声に暗さは見られない。
細やかな議論を交わす様子からは、この旅館で働くことへの自信や、
少しでもサービスを良くしようという意欲がむしろ伝わってくる。
29年連続総合日本一に輝く、加賀屋の基礎体力を感じさせる瞬間だった。
加賀屋では各フロアのリーダーが集まる「リーダー会議」で
140人の客室係の意思統一を図っているが、
とりわけ重要視されているのは、宿泊客からのアンケート(マークシート式)を
もとにした月に一度の「アンケート会議」だと彼女は言う。
アンケートの数は年3万通。それを集計し、小さな点まで「改善」の目が
行き届くように心がける。その結果は個人ごとに数値化され、
フロアリーダーを通じて客室係へフィードバックされる。
また、宿泊客からの「お褒め」や「お小言」などは、従業員用の廊下に
常に張り出されてもいた。1年間に集められた具体的な情報は、
「クレームゼロ大会」によって検証されるという。
女将の小田真弓さんは「お客様からのクレームは大事なもの」と語る。
「注意をしてくれるのは期待があるから。その意味で一番怖いのは、
問題があっても何も言われずに帰られてしまうことです。
そこには天国と地獄の差があります」
こうしたやり取りの繰り返しによって、客室からの声を無駄にしないという
基本姿勢が共有されていくわけだ。
だが、加賀屋の「おもてなし」は、それだけではない。楠さんが続けた。
「もちろんマニュアルはありますし、それを守るのは大事です。
ただ、“おもてなし”というものは、マニュアルをこなせて60点。
それ以上はお客様と接する本人の感性次第です。その意識を全員が共有して
初めて、積極的に前へ出て何かを言おうという雰囲気ができて
いくのだと思います」
マニュアルにはない心遣いを、加賀屋では客室係が自らの裁量で行う。
「何かに気づいたら、客室係は客室センターに直接電話をかけます。
後は『花瓶は私が持っていくから、あなたは花を準備して』と
裏でリレーですね。誕生日や還暦など、記念日の種類ごとに記念品を
準備はしています。でも、それらは結局、客室係がお客様とのさりげない
会話から察するしかないものです」(楠さん)
夕食時は1分1秒を争うような忙しさとなる調理場も含め、多くの従業員を
巻き込む柔軟な対応は周囲の理解なくしてありえない。それが可能なのは、
「お客様と接する客室係が、いちばんお客様のことがわかっている」という
価値観が旅館全体に浸透しているからだろう。
真弓さんによれば、そんな加賀屋の“客室係重視”ともいえる
経営方針のルーツは、先代の女将の時代にあるという。1906年創業の加賀屋は、
もともと和倉温泉の小さな旅館の一つに過ぎなかった。
そんな中で、サービスに対する姿勢を徹底させることで、
宿泊客の満足度を上げようとしたのが先代だったそうだ。
「お客様のためなら富山までハイヤーを飛ばして銘酒を買いにいかせる。
たとえ収支がマイナスになっても、お客様のためならそれをやる、という
“精神”を先代は持っておりました」
加賀屋では当時から、「お迎えからお見送りまで」を一人の客室係が
行ってきた。
前日の酒席が遅くまで続こうとも、笑顔を崩さずにお客をもてなす。
■大きくなっても小さな加賀屋でいく
旅館の巨大化があるジレンマを生み出したのも事実だった。
現在、加賀屋の社員は360名。バブル期をピークとした設備の拡張の中で、
「客室係の顔や名前を覚えることも追いつかない」という時期もあった。
その中で、いかにして前述の“精神”を守り抜いていくのかは、
常に課題として意識されてきた。
「“大きくなっても小さい加賀屋でいこう”がスローガンです。
そして、そのために必要なのは、お客様の満足度は働いている側の
満足度があって初めて成り立つ、ということです」と真弓さんは言う。
「しっかりと休憩を取り、日々の生活を安心して送ることができて、
初めてすっきりした笑顔になれる」からだ。
加賀屋では茶芸や陶芸など“一人一芸”が奨励され、
それはサービスや料理の勉強会などが頻繁に開かれる契機にもなった。
冒頭のミーティングもまた、その流れを汲んで客室係から自発的に
提案されたものだ。
「いいときも悪いときもみんなで分かち合う。
お客が普段よりも少ないときだからこそ、自分を高めるために時間を費やして、
笑顔で働いてほしい」
そうした眼差しが培う自信と旅館への信頼。従業員の生き生きとした
表情をつくり、好循環を生み出す基盤だろう。
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ホテルのホスピタリテイと
老健のケアは似ている点も多々あると読んでから感じました。
出てくる言葉もフロアリーダーや客室係など類似する言葉も多いです。
おむつひとつで熱く討論できる介護スタッフなら
加賀屋にも負けないホスピタリテイをお届けできるはずです。
今回は介護がサービス業といわれながらも
果たしてスタッフがどこまでそれを感じているか??
私も時折読む「プレジデント」から抜粋。
それぞれの立場から書かれた具体的内容は
いろいろ考えさせられますね。
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29年連続日本一。「加賀屋」の泣けるサービス
■鍋蓋の片づけ方を白熱して議論する
フロアリーダーの若葉さんが、おしぼりの出し方、椀物の蓋を片づける
タイミング、煎茶の美味しい淹れ方など、望ましいサービスの手本を見せていく。
従業員たちはみな真剣な眼差しでその様子を見つめていた。
一つのテーマを終えるたびに、若葉さんがこう問いかけるのが印象的だった。
「意見があったら言ってください。みんなでつくり上げていきましょう」
「これはベターであってベストではありません。少しでもいいなと思うことを、
みんなで掘り出していこうと思います」
するとこれまでの緊張した雰囲気がふっと緩み、ぽつぽつと質問の声が
あがり始める。特に議論が白熱したのは、
お膳の鍋蓋の処理に話題が及んだときだった。
椀物の蓋は貝やカニのカラ入れにも使えるので、すぐに下げてはならない。
しかし、一回り大きい鍋の蓋はどうか──?
現場での体験を彼女たちは胸を張って語る。
現在、昨年秋からの不況の影響で、加賀屋の業績は厳しい状況が
続いているという。だが、その声に暗さは見られない。
細やかな議論を交わす様子からは、この旅館で働くことへの自信や、
少しでもサービスを良くしようという意欲がむしろ伝わってくる。
29年連続総合日本一に輝く、加賀屋の基礎体力を感じさせる瞬間だった。
加賀屋では各フロアのリーダーが集まる「リーダー会議」で
140人の客室係の意思統一を図っているが、
とりわけ重要視されているのは、宿泊客からのアンケート(マークシート式)を
もとにした月に一度の「アンケート会議」だと彼女は言う。
アンケートの数は年3万通。それを集計し、小さな点まで「改善」の目が
行き届くように心がける。その結果は個人ごとに数値化され、
フロアリーダーを通じて客室係へフィードバックされる。
また、宿泊客からの「お褒め」や「お小言」などは、従業員用の廊下に
常に張り出されてもいた。1年間に集められた具体的な情報は、
「クレームゼロ大会」によって検証されるという。
女将の小田真弓さんは「お客様からのクレームは大事なもの」と語る。
「注意をしてくれるのは期待があるから。その意味で一番怖いのは、
問題があっても何も言われずに帰られてしまうことです。
そこには天国と地獄の差があります」
こうしたやり取りの繰り返しによって、客室からの声を無駄にしないという
基本姿勢が共有されていくわけだ。
だが、加賀屋の「おもてなし」は、それだけではない。楠さんが続けた。
「もちろんマニュアルはありますし、それを守るのは大事です。
ただ、“おもてなし”というものは、マニュアルをこなせて60点。
それ以上はお客様と接する本人の感性次第です。その意識を全員が共有して
初めて、積極的に前へ出て何かを言おうという雰囲気ができて
いくのだと思います」
マニュアルにはない心遣いを、加賀屋では客室係が自らの裁量で行う。
「何かに気づいたら、客室係は客室センターに直接電話をかけます。
後は『花瓶は私が持っていくから、あなたは花を準備して』と
裏でリレーですね。誕生日や還暦など、記念日の種類ごとに記念品を
準備はしています。でも、それらは結局、客室係がお客様とのさりげない
会話から察するしかないものです」(楠さん)
夕食時は1分1秒を争うような忙しさとなる調理場も含め、多くの従業員を
巻き込む柔軟な対応は周囲の理解なくしてありえない。それが可能なのは、
「お客様と接する客室係が、いちばんお客様のことがわかっている」という
価値観が旅館全体に浸透しているからだろう。
真弓さんによれば、そんな加賀屋の“客室係重視”ともいえる
経営方針のルーツは、先代の女将の時代にあるという。1906年創業の加賀屋は、
もともと和倉温泉の小さな旅館の一つに過ぎなかった。
そんな中で、サービスに対する姿勢を徹底させることで、
宿泊客の満足度を上げようとしたのが先代だったそうだ。
「お客様のためなら富山までハイヤーを飛ばして銘酒を買いにいかせる。
たとえ収支がマイナスになっても、お客様のためならそれをやる、という
“精神”を先代は持っておりました」
加賀屋では当時から、「お迎えからお見送りまで」を一人の客室係が
行ってきた。
前日の酒席が遅くまで続こうとも、笑顔を崩さずにお客をもてなす。
■大きくなっても小さな加賀屋でいく
旅館の巨大化があるジレンマを生み出したのも事実だった。
現在、加賀屋の社員は360名。バブル期をピークとした設備の拡張の中で、
「客室係の顔や名前を覚えることも追いつかない」という時期もあった。
その中で、いかにして前述の“精神”を守り抜いていくのかは、
常に課題として意識されてきた。
「“大きくなっても小さい加賀屋でいこう”がスローガンです。
そして、そのために必要なのは、お客様の満足度は働いている側の
満足度があって初めて成り立つ、ということです」と真弓さんは言う。
「しっかりと休憩を取り、日々の生活を安心して送ることができて、
初めてすっきりした笑顔になれる」からだ。
加賀屋では茶芸や陶芸など“一人一芸”が奨励され、
それはサービスや料理の勉強会などが頻繁に開かれる契機にもなった。
冒頭のミーティングもまた、その流れを汲んで客室係から自発的に
提案されたものだ。
「いいときも悪いときもみんなで分かち合う。
お客が普段よりも少ないときだからこそ、自分を高めるために時間を費やして、
笑顔で働いてほしい」
そうした眼差しが培う自信と旅館への信頼。従業員の生き生きとした
表情をつくり、好循環を生み出す基盤だろう。
--------------------------------------
ホテルのホスピタリテイと
老健のケアは似ている点も多々あると読んでから感じました。
出てくる言葉もフロアリーダーや客室係など類似する言葉も多いです。
おむつひとつで熱く討論できる介護スタッフなら
加賀屋にも負けないホスピタリテイをお届けできるはずです。
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