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津軽ツアー2009春(後編)

3月22日(日)
 今日は演奏はお休み。ぶん太さんは昼間のお仕事へ。さすがに前日は演奏後にお客様からいただく日本酒を一手に引き受けて(運転申し訳ないです)、その後鍛冶町の「侍庵」にていただいたすばらしいジンフィズがよくまわり……でも本当によく眠れました。二日酔いにはまったくならず、津軽の酒、そしてTAIANのマスターのすごさを改めて実感。

 昼間は弘前市内でタンゴピアニストの中村早紀子さんと打ち合わせ。7月3日(金)に弘前の「スペース・デネガ」でSAKIKOさんのコンサートがあり、ゲストで呼んでいただきました。本番まではまだ日にちがあるとはいえ、さすがにちょっとリハで青森に…とはいかないので、この日を空けていただいてリハーサル。

 思えば昨年4月に初めて弘前に来てからどんどん津軽に縁ができてうれしいかぎり。きっかけはケーナの岩川光さんのコンサートで、そもそものきっかけは岩川さんがチャランゴの福田大治さんと前年に知己を得たこと。それで4月に私も一緒に呼んでいただいたところ、そのコンサートの世話人の方が私にとって10年来の縁がある8弦ギタリストの池田宏里さんだったこと。このとき池田さんに紹介いただいたのがぶん太さんで、お互いの演奏を聴いたことがきっかけで昨年秋と今回のツアーが実現。そして少し戻って、その岩川さんのコンサートの時にもお手伝いされていて、同じホールで定期的に演奏していると、やはり池田さんから紹介いただいたのがSAKIKOさん。駆け足でややこしいですが、そういった経緯で今度の7月にご一緒させていただきます。すてきなピアノとの共演、今からとても楽しみにしています!

 暗くなるまでみっちり練習、ぶん太さん宅まで送っていただき部屋に戻ると、ぶん太さん一家が何かを準備しています。その名も「Bunder BAR」。折り返し地点ということもあり、そういえば夜にお宅でゆっくりするのは今回はこの日のみ。まったりと音楽を聴いたり、ぶん太さんによるツアーの日記を読みながら前半を振り返ったり。あやちゃんとひーくんはブロックで車を次々と開発して見せてくれました。あやちゃんがあっというまに新モデルを製作。そのひとつひとつがちゃんと車になってる!やっぱりすごい家族です。

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3月23日(月)
 午前中は弘前市内の観光へ。ぶん太さんからの紹介で、ボランティアのガイドの方に案内していただきました。ぶん太さんのご両親にもお付き合いいただきます。弘前は津軽藩の居城だったことから歴史は古く、明治以降も青森県内で初めてつくられた建物・施設の多くが弘前なのだそうです。青森最初の教会や銀行、本州最北の五重塔、そして弘前城。もちろん桜はまだ咲いていなかったのですが、桜の木がすごい。これが満開になったときの様子を思い浮かべながら城址を歩きます。

 しかしこの日はあいにく天気がよくなくて…というか寒い!私は一応厚いBody…に守られているもののさすがにこれはすごいです。雪は舞っている程度ですが、風が…寒い中案内いただいたガイドの梅子さん、そしてご一緒いただいたご両親に感謝!

 お昼は、弘前城のとなりにある施設「津軽藩 ねぷた村」へ。実はここがぶん太さんの昼間の仕事場です。ねぷたの展示はもちろん津軽の伝統工芸や芸能を学ぶことができ、多くの演奏家や伝統工芸士の方が、津軽のさまざまな文化を実演を交えながら紹介しています。ミシュラン観光ガイドでも星を獲得、観光施設ではめずらしいそうです。

 食事をいただいた後、入口のねぷた展示のところにいくと…! 何かオーラがただよっています。ぶん太さん、いや文太さん…菅原文太がプライベートで来てました!スタッフの方たちがいろいろ理由を作って?集まってきます。ミーハーな気分をおさえつつ、ぶん太さんたちによるねぷたの笛と太鼓の実演を楽しみました。

 文太さんは先に展示の方に行ってしまったので、こちらは太鼓を叩かせていただくことに。ねぷたの太鼓は本当に大きい!そして特徴的なのがバチ。まっすぐな棒ではなく、ゆるやかな孤をえがいていて、バシッ!としなるんです。ねぷたは絵が本当にきれいです。弘前ねぷたのときは照らされて鮮やかに輝き、「やーやとおー!」の掛け声ともに練り歩く…想像するだけでわくわくします。
 

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 ぶん太さんからのはからいで、なんと津軽三味線の体験レッスンを受けさせていただくことになりました。一日入門させていただくのは山田里千美さん。ねぷた村内にある「山弦堂」でのすばらしいミニライブの後、1対1のレッスンを受けます。なんて贅沢な時間!通常使う太棹よりも一回り小さい楽器を使わせていただいたのですが、ギターに比べてもかなりの重量です。安定して構えができるまでが大変。文字通り手取り足取りの指導がありがたいです。演奏したのは津軽甚句「どだればち」。今回ぶん太さんとのセットでも弾いている曲なのですが、ギターを弾いている感覚で向かい合ってはいけません。三味線の音の出し方、調子のとり方、呼吸の合わせ方…わずか1時間のレッスンでありながらも、その奥深さを少しだけ感じさせていただきました。里千美さんありがとうございます!

 三味線の体験に続いて、今度は津軽塗の体験までさせていただきました。指導いただくのは伝統工芸士の鈴木茂さん。製作工程について説明いただいたのですが、こんなにたくさんの工程があったとは!時間をかけて漆を塗り重ねていき、最後に研いで一気に模様を出していきます。とても美しい模様です。研ぐのは「塗箸」で、その最後の方の「研出」の部分をします。この体験もなんと1対1で。おそるおそる耐水ペーパーで箸を研ぎ始めます。最初は荒いペーパーで少しだけ模様を出し、徐々にやすりを細かい目にしていきます。紙やすり自体は爪を磨くのにしょっちゅう使っていても、箸に向かってこの猫背、ぎこちない磨きっぷり。鈴木さんの楽しそうな笑顔を頭頂部で感じます。実は鈴木さんにも里千美さんにも昨年のコンサートを聴いていただいただけに、かなりの落差?があるようです。本人はそのままのつもりなのですが…鈴木さんにやさしくいじっていただきました。果たして仕上がりは?

 ねぷた村の閉館時間に合わせ、ぶん太さんと今夜の会場に向けて出発。つがる市の木造町にある「福助」での演奏。ご主人とぶん太さんは登山囃子のつながりで、焼鳥屋を営んでいます。お店の並びにある貸しスペースを使って、この日もお囃子の関係の方がたくさんみえました。

 この日のステージは私たちのライブだけではありませんでした。以前青森でお会いしている横笛奏者でギタリストの田村さんと再会。ライブ後お話しているうちに、周りから「演奏してよ!」という流れになりました。田村さん、登山囃子なら…とおもむろに立ち、ステージに向かうと、すぐに客席で普通に会話していた別の方たちが鐘と太鼓を手にスタンバイ。そして吹き始めます。これがものすごい演奏!なんという瞬間!一気に吹き終わって大喝采!

 するとぶん太さんがすかさず「わもやる~!」と飛び出してきました。その場で横笛バトル。同じ曲なのにまたぜんぜん違う響き。2人の横笛奏者の真骨頂をみたような気がします。田村さんとは岩木山神社での登山囃子の大会の長年のライバルだったそうで、もう本気と本気。持っているものを全て出し合う場。そのままねぷたになだれ込み、お客さんが一体となって「やーやとおー!」の掛け声。外ではもはや地吹雪。しかし中ではこんな熱い空間が広がっていました。その中にいることができたのが幸せです。

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3月24日(火)
 昨夜の興奮冷めやらぬ中早起き。今朝は保育所での演奏。この日は津軽三味線奏者の佐藤通芳さんとご一緒します。通芳さんは昨年4月にライブハウス「山唄」に行ったときに演奏されていたのを聴いていて、今回共演の機会ができてうれしいです。前日から泊まり込みでBunder BAR in Diningで語り、翌朝さっそく音あわせ。

 保育所は建物も新しく、りっぱなステージがあります。PAをセッティングしているときから園児のみんなは興味津々。元気なあいさつをもらってこちらも一気に目覚めます。プログラムも特別編成でそれぞれの楽器を紹介しながら進めました。通芳さんはカホンも用意。先生もピアノで加わって、「むすんでひらいて」を歌ったのは何年ぶりだろう。みんなで手をいろんなところに向けながらの大合唱が楽しい!最後は通芳さんのレパートリーで、佐藤通弘さん(通芳さんのお父さん)作曲の「ジョンから元気」をソロ回しを交えながら演奏しました。

 午後、通芳さんは次のスケジュールがあってここでお別れ。こちらの次の予定はなんと農業体験。ぶん太さんの友人のりんご農家での作業を手伝う予定だったのですが、前日に続き雪。しかもこの日はWBC決勝。出先でワンセグ観戦しながら…あっ!9回裏韓国が追いついてすごいことになってます。さらにお世話になる予定だった方は元高校球児だそうで、これはさすがにとぶん太さんが電話、体験は中止になって急いで帰宅。テレビで日本優勝の瞬間を見届けました。

そのまま少し休憩、夜に備えます。ライブとしては今夜がいよいよしめくくり、「集い処 満天」での演奏になりました。近所の方たち、子どもたちもたくさん集まって、ぶん太さん一家も全員来てくださいました。初日にも共演した太鼓の貴裕くんも一緒になり、今回のツアーの集大成となる演奏を。いや本当に楽しいです!アンコールもたっぷり時間をかけて。貴裕くんフィーチャーの神楽、さらに登山囃子も登場。最高の夜でした。

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3月25日(水)

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 朝、家族全員で岩木山のふもとにある温泉へ。津軽のお湯は本当にやわらかくて、ゆっくりと体に染み込んで温まります。いろいろ振り返ると寂しくなってしまうので、できるだけ何も考えずに、ぶん太さんやお父さんとよもやま話をしながら湯につかります。午後は地元の福祉施設での演奏。30分の演奏がもうあっという間……レポートも最終日となると筆もなぜか先へ先へと走ってしまい、とうとう夜になってしまいました。

 ぶん太さんの知り合いのお宅でのホームコンサート。実は昨年の秋に一度おじゃましてリハをしています。この時ちょうどいらしていたのがベーシストのえがわとぶをさんでした。今回もなんとちょうどこの日、翌日の仕事の関係で弘前にいらしていてうれしい再会。しかも今度はご一緒させていただくことになりました。地元のジャズバンドやボーカルの方、そして貴裕くんも。たくさん集まって大人数でのシークレットライブ。えがわさんベースによる「鍛冶町の夜」がすばらしい演奏に!宴はいつまでも続いていきました……。

 今回の津軽ツアーで本当にたくさんの方にお世話になったこと…言葉では言い尽くせないのですが、ぶん太さんをはじめご家族、ご友人のみなさんにこの場を借りて心から感謝!!ありがとうございました。

※写真上から、「三味線入門(右・山田里千美さん)」「登山囃子(24日満天)」「温泉後の一杯」

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