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津軽ツアー2009春(前編)

 津軽への旅!昨年10月の笛師・佐藤ぶん太。さんとの共演から5ヶ月、早くも第二弾が実現しました。

 青森へ移動しながら、記憶に新しい前回の思い出がいろいろとよみがえります……思えば昨年10月20日の夕方、弘前駅で待ち合わせてすぐにいただいたのが、りんごまるごと一個。ぶん太さんのお宅につくまでに完食し、ガレージでのリハ→焼肉→翌朝4時に起きて夜明けの白神山地に連れて行ってもらい紅葉のあまりの美しさに感動→岩木山を見ながら温泉に入り→弘前Joppalにてコンサート初演……今書いていてもなんて豪快な日程。しかし自分でもびっくりするくらいの演奏になって、ぶん太さんと津軽にいろいろなものを一気に引き出していただきました。たくさんの方に聴いていただき感謝。今回は、より多くの場所で、お客さんに近い場所で演奏したいというぶん太さんからのお誘いをありがたくいただき、2度目の共演ツアーとなりました。

Buntayshirakami

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3月18日(水)
 夕方に弘前に着き、ぶん太さんと、前回もご一緒している太鼓奏者の成田貴裕くん(高校1年)と再会。今回はまず男三人でカツ丼。そのままリハーサルへ。

 今回はレパートリーを一気に半分以上入れ替えてお互いのオリジナル曲も増やし、セッション色の強い曲や、笛とギターのアンサンブルとしてまとめた曲など、よりバリエーションを広げた構成になりました。おどろくのは、この短期間の間にぶん太さんがもう新曲を書いて用意してくれたこと。そのバイタリティーの高さはすごいです。

 その新曲のひとつは、「祈り~眠る魂(こころ)へ」という曲。江戸時代後期の1807年に起こった「津軽藩士殉難事件」(津軽藩士100余名が幕府の命令により北海道・知床の斜里[シャリ]で北方警備にあたり、その多くが越冬できずに亡くなった事件)について、ぶん太さんが実際に今年の1月に斜里に行き、着想を得て作曲したものです。この出来事についての津軽弁での朗読(むかしっこ)とともに、今回のツアーのひとつのテーマになりました。

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3月19日(木)
 昨夜からぶん太さんのお宅にホームステイ。前回も2泊お世話になりましたが、今回は1週間をこえる長期滞在、大変お世話になります。2人の小さな子どもがいて、この子たちがまた元気元気。いきなり朝7時ごろに下の子ひーくんに約束どおり?襲撃を受けます。プリントアウトされた私の写真を届けてもらいました。どうやら私のホームページから印刷された資料のうち、プロフィールのページを抜き取って持ってきてくれたみたいです。

 ぶん太さんは朝から別の仕事のため、こちらは今回のレパートリーを部屋で確認。そして午前中はぶん太さんのお父さんに温泉に連れていっていただきました。秋田県との県境近くにある碇ヶ関のすばらしいお湯につかりながら、ライブのイメージを組み立てます。おいしいラーメンまでごちそうになりました。

 帰って引き続き準備していると、今度はお姉ちゃんがドアをちらっと開けて。あやちゃんは紙と色えんぴつを持っています。こんなかわいい子に誘ってもらえるなんて、わは幸せ者です。

 夕方、お父さんに市内に送っていただき、ぶん太さんとパン屋で待ち合わせ。今日の演奏会場・松森会館に向かいます。関係者向けのライブでありながら、50名を超えるお客さんがみえました。多くの方が昨年のコンサートで聴いてくださった、またお手伝いいただいた方たちで、こうして再会できるのがとてもうれしいです。パーカッションの弘前ジョージさん、ベースの今井哲さんと5人の編成で、最初のライブはとても盛り上がりました。

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3月20日(金)
 この日の昼に演奏する福祉施設「長慶苑」本部長の三上直樹さんに迎えていただき、午前中は車で案内いただきました。弘前から北に向かい、着いたのは五所川原・金木にある津軽三味線会館。さっそく三味線のミニライブを聴きます。津軽三味線といえば勇壮な「じょんから節」が有名ですが、「よされ節」「あいや節」など、名前は知っていても比べて聴く機会がなかったのでとても貴重な時間でした。三味線の奏法も「叩き」重視のスタイルや「弾き」重視のスタイルがあったり、さらに即興要素が強いことから奏者の個性がすごく表れる…ライブ後、楽器の展示をみながら想いをはせます。自分の場合どうしてもギターのあれこれとも比較しがちですが、うん、ギターもそうだよなあ…うなずくことばかりで、とても勉強になりました。

 この金木には太宰治の生家・斜陽館があり、三上さんの案内で、津島家をぐるっと見学しました。ものすごい建物です。後日調べたのと合わせて、まさに「事実は小説より奇なり」…その言葉はこの人のためにあるかもしれない文豪・太宰治に想いをはせます。

 いろいろ圧倒されながら、午後に長慶苑での演奏に向かいます。ぶん太さんはこの時間も仕事だったので、ギターソロでの演奏になりました。デイサービスの勉強会で、まずは施設のスタッフによる講座。骨折をテーマに舞台劇で分かりやすく解説。後ろでスタンバイしていたのですが、スタッフの方たちの熱演にびっくり。こちらも気合が入ります。30分くらいのステージを聴いていただきました。

 演奏後、まだ夜のライブまで時間があるので岩木山神社へ。大鳥居の向こうにお山がそびえています。毎年旧暦の8月1日に「お山参詣」という行事があり、たくさんの人たちが囃子を奏でながら歩きに歩いて詣でるそうです。今回のツアーでお会いしているあの方もこの方も、そのお囃子の担い手。拝殿まで参道を歩きながら、あらためて想いをはせます。一日ご一緒いただいた三上さんに感謝、ありがとうございます!

 ぶん太さんと前日と同じ場所で待ち合わせ。夜のライブ会場は「水輝」。久須美酒造の銘酒が並び、演奏と合わせてお酒をふるまっていただくというすばらしい企画です。そして何よりも水輝の女将さんから本当に歓迎いただいたこと、うれしいかぎりです。

 この日はぶん太さんとのドゥオ。笛とギターだけで2時間のライブは初めて。津軽山唄と私のオリジナル曲のかけあいがあったり、ぶん太さんのオリジナル曲もますますさえわたります。お店の常連の方もたくさんみえて、演奏中のお客さんとの会話もライブになるのが醍醐味。

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 後半の最初に演奏した「紅神~フレアカムイ」という曲は秋の白神山地をテーマに書かれていて、10月の時はできたての「無題」としてぶん太さんがソロで吹いています。…一緒に白神山地に行ったときに吹いてくれたのですが、演奏が終わったときに「ギャーギャー」と茂みから声がきこえます。どうやらサルが何匹かいるようです。ぶん太さんもう一曲吹く。「もう終わりだよ」というと、言葉がわかるのか、茂みからサルの親子が飛び出してきて、山の方へと登っていきました…

 音楽はもちろん音ですからその瞬間、その瞬間の営みだと思うのですが、演奏するとき、聴くとき、前後にあるいろいろな想いや記憶が呼び起こされます。この日の演奏で過去の出来事を思い出し、また演奏したこの日の瞬間がいつか縁を結びつけたり、次の演奏のときに何かの形でよみがえるかも…音楽の持つ一面をめいっぱい感じながら、水輝さん、そしてすてきな女将に感謝!畳の上で「亀の翁」の杯を交わしながらのライブ。忘れられない夜になりました。

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3月21日(土)
 ぶん太さんは仕事お休みで、したがって一日いっしょ。前日に続き五所川原へ。今回の日程で初めて朝から空が晴れ渡り、岩木山もくっきり見えます。弘前から見るとなだらかな3つの山をえがく岩木山、それが五所川原方面に行くと、とんがったひとつの山に見えます。本当に景色が変わってびっくり。

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 五所川原の駅に到着。これから津軽鉄道の「ストーブ列車」に乗車します。津軽平野を北へ、津軽五所川原~金木~津軽中里間を走ります。帰りに団体客向けの15分弱のライブの予定だったのが、行きにも思いのほかたくさんの乗客、津軽鉄道の社長さんや地元の新聞社2社まで取材でいらしていてすごい雰囲気。というわけで、記者の方と話をしたあとすぐに、行きの車内でも演奏することになりました。私も年に2回くらいしかしない立っての演奏。しかもいくら鉄道好きだからって車内で演奏するのは生まれて初めての経験です。私はコードを思い切り間違えたりしながらも、なんとか顔で弾ききりました。ちなみに翌日の『東奥日報』と翌々日の『陸奥新報』に2人の演奏風景が掲載されています。

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 ほっと一息。「ストーブ列車」では車両の中央にだるまストーブが置かれていて、上でするめを焼くことができます。いかの匂いを届けたい。駅弁がまたすばらしいです。季節によって「風鈴列車」「鈴虫列車」が運行していて、まさかの真夏の「ストーブ列車」もあるそうです。

 帰りの団体客のみなさんでの前での演奏も盛り上がっていただき、とても幸せな列車の時間でした。ぶん太さんは日ごろ大勢の観光客を相手にしているだけあって、15秒でお客の心をつかむ力はさすが。ちょうどぶん太さんと進行方向うしろ側を向いて演奏したのですが、そこからのびる線路がまっすぐ見えました。笑顔と線路は最高のコンビです。

 車でも列車にゆられる気分に浸りながら戻ります。途中五所川原の「立佞武多の館」(たちねぷた)に寄り見学。青森・津軽地方のねぷたはいろいろな形があるそうですが、五所川原はとにかく巨大。本当にそびえたっています。ぶん太さんの知り合いの方がスタッフでいらして、特別に修復作業、今年の祭りに向けての張替えの様子を見せていただきました。

 夜はぶん太さんの出身地でもある平川市内の「ギャラリー 野の花」へ。吹き抜けになった開放的な空間での演奏。おいしい料理までごちそうになりながら、今回のツアーの前半をしめくくる演奏を。このころになると夜に急に冷え込むようになってきてます。来たときはあったかかったのに…ううおおっ。

 今回のセット後半では、ぶん太。さんの「鍛冶町の夜」という曲を弾いています。ちなみに「かじまち」の「ち」にアクセント、「ち」と「つ」で7:3くらいの割合で発音します。私はまだうまく言えてません…
 
 弘前の繁華街、鍛冶町にあるBAR「侍庵」(TAIAN)をモデルにした曲で、この日のライブ後に連れていっていただきました。デビューします。凄腕バーテンダーのマスターのカクテルが絶品!その場でマスターに「鍛冶町の夜」を演奏。実はこの後の記憶が…2Fのフロアでフラメンコを習ってるというお客さんがいらしてその場でセビジャーナスを弾いた…2時ごろラーメンを食べた…そのあたりだけ覚えてます。

(つづく)

※写真上から、「白神山地にて・2008秋」「水輝にて」「岩木山(弘前側より)」「ストーブ列車・折り返し」

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