普段からライブをしていても、実はこれってけっこう難しい。「ライブ」は、お客さんの多くは自分たちの演奏を聴きに来てくださるけれど、「ディナータイム演奏」は違う。お客様に食事を楽しんでいただくための、お店のサービスの一環と言われればそれまでの話。そこから始めなければならない。そしてそこからが、演奏家として問われるのかも。スペインから帰国してすぐの仕事がそれだったから、いろいろ考えましたよ。
でも、しばらくやっているうちに、自分の演奏がどうだったかと同じくらい、それを聴いてくださった方はどうだったか、その場もどうだったか、大事に考えられるようになってきたような気がする。どんな場所でも、演奏を通して、何かをその空間に残すことができれば。例えばゆうべの場合は、ワインもう一杯頼みたくなった、誰かがそう思ってくれる、それだけで、演奏の意味はあったかもしれない。…美しいかもしれないけれど、これはあくまで葛藤のいちプロセスね。