今年の秋は笛(横笛&縦笛)の演奏家の方々との共演の機会に恵まれました。10月前半のケーナ奏者渡辺大輔さん(縦笛)との2公演、Renさん(縦笛)のオータムツアーに続き、後半は津軽笛奏者(横笛)の佐藤ぶん太さんとのデュオツアーでした。
2月投稿の写真(Chieiguitar Instagramより)
佐藤ぶん太さんと初共演から15年、2年ぶりの共演はひょんなきっかけで決まりました。2月、松山から羽田に向けて出発する際にSNSに投稿したところ、機内で「今どこ?」というメッセージが。なんとほぼ同じ日時にぶん太さんが青森から羽田に移動していることが判明。機内wi-fiでやりとりして、JAL移動のぶん太さんは第一ターミナルから、ANA移動の私は第二ターミナルから、ちょうど間をつなぐように位置する京急線の地下ホーム上でハイタッチ再会。食事中にだいたいのスケジュールが決まってしまうというすごい展開でした。
ぶん太さんはこの5,6年は全国で横笛のワークショップを開催。コンクールや笛の演奏家が集まるイベントや合宿なども主催されています。たくさんの人に笛を楽しんでほしい、その中から笛の演奏家や、その地域の笛文化を担う吹き手が生まれてくれたら、という大きなビジョンで展開するプロジェクト。
コロナになったときはいち早くオンラインレッスンのグループを構築。そして今回は動けるようになってから企画された初のライブツアー、これは私も責任重大です。
初日の前日に埼玉県内でリハーサル。本番と同じような音響セッティングでシミュレーションします。今回のツアーに向けては書き下ろしの新曲などもあり、みっちり合わせて備えます。
10月19日(木) 埼玉・吉見
ツアー初日は埼玉県吉見町の「茶房ギャラリー 夢」 初日から満席!ありがたいです。この会場では笛のワークショップも定期的に開かれていることもあり、たくさんの生徒さんが手伝いに関わってくださっています。会場入り時にはすでに「笛の空間」ができあがっていました。
さて、今回のツアーにはもう1つテーマがあり、これまでぶん太さんに指導を受けた笛奏者の方が各公演でゲスト出演、さらに参加型企画として『NEO囃子』に収録されている曲をみんなで吹く『オリジナル曲を横笛の二重奏で吹く企画。しかもゲスト出演の方には(大阪公演を除き)リハーサルで師匠による最終チェック?もありました。
正面に満席のお客様を想定、左右はぶん太さんと私という大きい人たち。良い意味で緊張感もありつつ、場のテンションもあがります。ちなみにこのツアーでは全員「ぶん太チェック」をクリアして本番でご一緒することができました。さすがです。
初日のゲストは「鹿詩永さと女(かしながさとこ)」さん。笛を吹き始めたときの度胸の据わり方が素晴らしく、演奏後の笑顔とのギャップもまたすてきでした。
さとこさんカメラ(大きい2人の間)
10月20日(金) 神奈川・横浜
大変盛り上がったツアー初日の勢いを持ちながら、ぶん太号に合流、横浜に向かいます。長丁場のツアーの場合、モチベーションを保つため、またうっかり油断して次の公演が変なステージにならないように、良い意味での「リセット」が必要になりますが、このツアーでは場所はもちろん、環境も共演者も公演ごとに変わるので、つねに新鮮な気持ちでのぞむことができます。ちなみに横浜に到着後さっそく中華を堪能。「ご当地グルメ」もまた、その土地になじんで気持ちを切り替えるための重要な手段です。
さて、横浜公演はある意味最もタイトなスケジュール。会場の横浜市イギリス館の都合で18時入り、セッティングして19時開演、21時に終演して22時には完全退館しなければなりません。しかしここは横浜の生徒さんチーム「笛吹き隊」そして共催のジャズバンド「B&B Siu☆Star Jazz Band」のみなさんのご尽力で全てがスムーズに。本当にありがたいです。
この日のゲストは「鈴木亜樹(すずきあき)」さん。お祭りのオーラを全身にまとう力強い音色でした。そして「笛吹き隊」のみなさんを中心に参加型企画。歴史ある洋館いっぱいに鳴り響く横笛が素晴らしかったです。実はぶん太さんの地元・弘前にも明治~大正期に建てられた和洋折衷のモダンな建築物が数多くあり、不思議なマッチングを感じました。
横浜市イギリス館
10月21日(土) 横浜~移動
午前中はぶん太さんのワークショップを見学。ちょっとした姿勢や息の出し方を修正することでみなさんの音がグッと変わる瞬間に立ち会うことができました。そしてその流れから「スピンオフ企画」。1人1曲1テイクで笛とギター1対1のレコーディング。ちょうどいい緊張感がある空間、私も1テイクなのでドキドキしましたが、みなさんが心をこめて笛を鳴らして歌い上げる姿に感動しました。
打ち上げの雰囲気がまた楽しいです。またしても中華(ちなみにうちら2人は4軒目)を堪能しつつ一足先に出発。なんとか日付が変わる前に愛知県入りできました。
10月22日(日) 愛知・岡崎
このツアーで唯一の2公演開催は愛知・岡崎の三浦太鼓店。エントランスのショールーム兼ギャラリーを使用してのステージ。奥の工房を楽屋として使用させていただきました。太鼓の桶胴から制作されているだけでなく、古い三味線などの楽器を修理して、子どもたちが和楽器に親しみやすいように提供されているそうです。
午前・午後の公演はプログラムを入れ替えての上演。前半のテーマはぶん太さんセレクトの「津軽の四季」、午後は「アンダルシアの薫り」と題して私が選曲を担当しました。愛知公演のゲストは香村規子さんと原まみこさん。参加型企画も2ステージ通しで参加してくださった方も多く、大変盛り上がりました!とても気持ちのいい空間で三浦太鼓店のみなさまに大変お世話になり、ありがとうございます。
ちょうどこの日サンポーニャ・ケーナ奏者の岡田浩安さんが別の仕事でいらしていて、夜の打ち上げに合流してくださいました
10月23日・24日 名古屋
私は翌日に開かれる鍵盤ハーモニカ奏者の吉田絵奈さんのリハへ。夜に名古屋市内でのワークショップに顔を出しました。演奏は体づくりから!と体操、そして「間」の取り方を鍛えるぶん太流メソッドも開催。私もちょっと参加しました。
「かっちゃん」との1対1セッション
翌日の吉田絵奈さんのコンサートのレポートはこちら
声がよく出たような気がします。きっとワークショップのおかげです!
10月25日(水) 大阪
大阪公演の会場は守口市にある「鼓屋(つづみや)」。こちらには2019年にデュオライブで出演しています。最近改装して合宿もできる構造になっていました。それにしても暑いです。
スペシャルゲストは京都で活動されている篠笛奏者の「比江嶋さとる」さん。さとるさんとはオンラインレッスンのイベントでご一緒していて、3年を経てようやくお会いすることができました!トリオで1曲、そしてさとるさんのオリジナル曲を笛とギターのデュオで共演。シュッとした佇まいからは想像もできない骨太なサウンドにびっくり。ご一緒できてとてもうれしかったです。
京阪電車の沿線ということもあり、京都からもたくさんのお客様や生徒さんが。以前ご一緒したクリスタルフルート奏者の福谷一美さん、OBAKA笛制作家の布越九郎(ふえつくろう)さんとも久しぶりにお会いできました。
さとるさん、スタッフのみなさんと開場前のお弁当&たこ焼きタイム
こういうのがまた楽しいです
10月26日・27日 大阪~尾道~松山
今回のツアーでぶん太さんがどうしてもやりたかったという夢、それは「しまなみ海道」を自転車で走破すること。この日のために地元ではもちろん、出張先でも空き時間にレンタサイクルでトレーニングしていたそうで、かなりガチです。
26日は岡山の手前までは下道でドライブして、ゆっくり時間をかけて尾道へ。27日は7:00のレンタサイクルの営業時間に合わせて出発をお見送り。愛媛と香川でお手伝いいただく篠笛奏者の松村寧さんと合流、一足先にぶん太号で松山へ向かいます。
「しまなみ海道」は車でノンストップだと1時間以内で渡れますが自転車だと約70kmの道のり、しかも各島内や橋を渡る際のアップダウンが大きいのできっと大変。しかもこの日は嵐がせまっていて、ちょうど最後に四国側に渡る来島海峡大橋で嵐の始まりに…それでも無事走破おめでとうございます!
Before (尾道)
After (今治)
10月28日(土) 愛媛
松山でぶん太さんと共演するのは4年半ぶり、会場はこれまででもっとも大きい愛媛県美術館の講堂。けっこうプレッシャーでしたが…ふたを開けてみると、このツアーでは最も多い来場者数となり本当に感謝です…。
一方それと引換えに、私はここへ来てのどをやられてしまいました…幸い短いお礼のあいさつができてひと安心…今回のツアーでは(掛け声を除いて)歌う曲がなかったのと、何よりも寧さんや愛媛公演ゲストの稲井幸恵さん(松野・鬼城太鼓)や会場を押さえてくださった久米英治さん、愛媛のチームのみなさんのおかげで乗り切ることができました。
写真提供:もっちさん
10月29日(日) 香川・丸亀
10月ツアーの最終公演は香川・丸亀。お昼に到着=うどんということで主催の井上さんチョイスのお店で堪能します。
そして会場もなんとうどん店。讃岐うどん店の多くが昼すぎまでの営業ですが、「なかむらうどん」は屈指の人気店であっという間に売切れになってしまうそうです。太鼓仲間の大将のはからいで、お客様にはうどんとりんごを提供。国内シェア9割という丸亀産のうちわにねぷた絵師が絵付けして展示と、いろいろな意味でスペシャルな最終公演となりました。
激レアな夜営業 釜たまうどんがまた絶品でした
久しぶりのツアーであらためて、訪れた場所で迎えてくださった関係者の皆様、公演のことを紹介してくださる皆様の存在の大きさを感じました。ぶん太さんが笛奏者の育成のために数年かけて種まきを続けて、花が咲いたり実がなったりする瞬間に何度も立ち会うことができました。本当にありがとうございます。
「讃岐富士」こと飯野山
丸亀の朝