ねえ。君は覚えてる?
二人で遊んだ公園。
あったでしょ。
マンションの谷間から綺麗な夕焼けが見える、あの公園のことだよ。
あの夕焼けが見たくて、怒られる時間ギリギリまで、遊んでたっけ。
あそこの、シーソー、覚えてる?
そうそ。
ぼくたちが子供の頃からボロっちかったシーソー。
◇
あれさ。壊されることになったよ。
うん。
なんかね。
危ないから、ってさ。
◇
初めて君と向かい合って乗った時。
君が断然重くって。
ぼくはずっと宙ぶらりんだった。
足をばたつかせても、
シーソーを揺らしても、
君はビクともしなかった。
泣き虫だったぼくは、シーソーの上で悔し泣きして、君は下から笑ってた。
◇
いつの間にか時が経って。
ぼくが、君より重くなって。
視線も、君より高くなったけど。
その頃には、ぼくたちの、シーソーに乗る時は過ぎちゃってた。
◇
そうそう。一つだけ。
シーソーが、壊されちゃう理由。
古くなって危なくなったから、じゃないんだって。
シーソーっていうモノは、危ない遊び道具だから、
消されちゃうんだって。
ぼくたちだけのシーソーじゃ、ないんだって。
◇
遊具すら、存在を許されないこの時代。
もう。
もう。
君と、ぼくが遊んだ記憶なんて、
どこにも刻める場所は、ないのかもね。
◇
だから。この言葉。
手紙にも、メールにも、まして電話などにも乗せず。
静かに、忘れるに……任せようと、思うんだ。
シーソーと、一緒に、ね。
じゃ、また。
.........see you.
忘れても仕方がないよ。
でも、これだけは忘れないで。
忘れるってことは思い出すこともあるってこと。
手紙にもメールにも電話にも残していなくても
心の中にはきちんと残っていることを。
忘れることは失くすことじゃない。
心の大事な場所にそっとしまいこんでおくってことだと思う。
だから、いつだってこの想いはあるんだ。
戻ってくるんだよ。
だってそうだろう。
君と僕がシーソーで遊んだ時、シーソーは傾いたままだったけれど
今はきちんと元の場所に戻ってきてるじゃないか。
雨上がりのシーソーにうっかり座っちゃった時の、
冷やっこい感触。
ああ、覚えてる。覚えてるよ。
ぼくたちの中で、朽ちたシーソーは、何度でも、
戻っていくんだね。
あの日に。
忘れたくない忘れたくない何時までも覚えていたいこの記憶を留めていたい、って。そう思うけどね。
でも、忘れたくなくて覚えているその間中は、悲しさとか、もう戻ってこない虚しさしか心の中には無くて。
何時しか薄れていって忘れていくその時は、今のこの時に新しい思い出が出来た証拠。新たな残したい記憶が出来たという証拠。
今と未来を大切にしたいから。
これを機に、僕は忘れていくからね?
でも勘違いしちゃいけないよ。
忘れても、記憶が抹消されることは決して無いから。何かをきっかけにして、楽しかったよねって笑って思い出せる君との時間があったことに、なんら変わりは無いよ。
―だからね。
ありがとう・・・。