増田カイロプラクティック【読書三昧】

増田カイロプラクティックセンターのスタッフ全員による読書三昧。
ダントツで院長増田裕DCの読書量が多いです…。

ぼくは考える木―自閉症の少年詩人と探る脳のふしぎな世界

2009-03-15 01:48:12 | 佐野和代 BCSc
 自閉症児の母親が綴ったノンフィクションです。

 ポーシャ(著者)は偶然、詩を書く重度の自閉症児ティトの存在を知ります。
 特異な例とは思いつつもダブを救いたい一身で、ポーシャはティトと母親のソマを自閉症の研究のためにアメリカに招きます。

 この本で興味深いのは、自閉症児には内に秘められた知性があるが、自分の意志で行動や会話ができない可能性があること。自閉症児はコミュニケーション能力が低くみられ、奇異な行動が多いことから知能が低いという偏見をもたれることが多いようです。

 自閉症児には知覚過敏が多いため、視覚・聴覚のどちらかの感覚器官を発達させて状況を認識しようとする傾向があるようです。

 視覚型の自閉症児は、運動スキルや行動の模倣が上達します。しかし、聴覚を通じて処理する領域の発達が抑えられてしまうため、言語の発達が難しくなります。
 一方、聴力型の自閉症児は言語が発達するが、模倣の能力を発揮できず、会話能力が発達しません。

 視覚と聴覚の間の相互作用(クロスモダリティ)が正常に働かず、結果としてコミュニケーションを取ることが難しくなっているようです。

ソマが開発した訓練は、自閉症児にみられるスティミング(手をひらひらしたり、意味のない音を発するなどの行動)の先手を取り、右側から刺激をいれ左脳へ情報を入力し、左手を軽く押さえて右脳を抑制するもの。
この方法は、神経学的にも効果があるのではないかと思います。

 ポーシャは元々、科学分野には疎い人でした。
 でも、息子ダブのために必死に知識を身につけ、財団(CAN:Cure Autism Now)を立ち上げます。

 メインは、ティトを通して自閉症児の意識や認識はどうなっているのか分析していく内容です。

「ティトのようなケースは自閉症の百万人に一人」ともいわれます。
しかし、ラマチャンドランの研究にもみられるように、手法によっては例外的なケースから重要な一般的法則が導きだされることもあるのです。

 視覚や聴覚にはそれぞれ成長に最適な時期があります。
 この時期を逃してしまった場合、100%の回復は望めないかも知れません。
 でも、自閉症児にとってもコミュニケーションは重要な意味を持ちます。
 少しでも研究が進むことを願ってやみません。

 


ぼくは考える木―自閉症の少年詩人と探る脳のふしぎな世界
ポーシャ アイバーセン
早川書房

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