昔の日本では、結婚して子どもができないと嫁はリエンされて実家に帰される時代がありました。
その後医学が発達し、不妊の原因は女性だけの問題ではなく、男女半々と聞きます。
子どもが欲しくて結婚した人は、
子どもができなくてその原因が相手にあると、
離婚することを考えるようです。
近年、子どもを作る能力があるかどうか、
結婚前に確認する人も出てきました。
恋愛結婚は相手が気に入って「恋は盲目」の勢いで結婚する傾向がありますが、
家と家との付き合いという要素のある「お見合い」の条件に、
今後は「子どもを作る能力がある」ことを男女とも、
証明する必要(ブライダルチェック)が出てくるかもしれません。
男性側の事情で破談になったと言う記事を紹介します。
▢ 結婚直前に無精子症判明で破談 精子精密検査が開けるパンドラの箱
東京歯科大学市川総合病院・精子研究チーム
(2021.2.19:yomiDr.)より一部抜粋(下線は私が引きました);
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精子の質が「不運」にも悪かったら
精子研究者から見ると、精子形成は「数」が第一、「質」は二の次です。極論すると、1億匹の精子がいれば1億通りの異常があります。とりあえず受精して、遺伝子に問題がある胚は、流産によりどんどん脱落していきます。
・・・長年不妊治療を続けられた夫婦に、精子精密検査の結果をもとに治療断念をお話しすると、ご夫婦は混乱しますが、心の底には「ああ、やっぱり」という気持ちがあります。・・・不妊治療の入り口に立とうというご夫婦に、精子の「不運」をお話ししなくてはならないケースが出てきました。「なぜ私たちが」という思いとともに、心の準備がないだけに、ひどく混乱します。ご夫婦が精子の状態を理解した上で、どこまで不妊治療をするか、ご相談することになります。
結婚前の精液検査増加
以前から、結婚を控えている女性を対象として、感染症や子宮、卵巣の状態など、妊娠や出産に影響を与える病気の有無を調べるブライダルチェックが行われてきました。最近の傾向として、未婚男性が自発的に、もしくは結婚予定の彼女から勧められて、精液検査を希望するケースが増えています。いわば、男性向けのブライダルチェックです。ご自分の精子の状態を早い時期に把握しておくのは、大変良いことです。しかし、問題は厳しい結果が出た時です。
ある泌尿器科医から、ウェディングドレスの仮縫いが終わった後、精液検査で無精子症がわかり、破談になったケースを聞きました。そこで研究チームOBの泌尿器科医2人に同じ質問をしたところ、数例ずつ、破談になったケースを経験しており、「大変微妙な問題だ」と口をそろえました。
私たちは、精液を顕微鏡で観察して、精子濃度と運動率をチェックする程度では精子の実力はわからない、とお話ししてきましたが、婚前の男性に精子精密検査をすることが是か非か、意見はまとまりませんでした。
厳しい結果が出たら逃げ場なし
この検査は、生殖補助医療にエントリーできるかを判定することを目的としており、厳しい結果が出ると、もう逃げ場がありません。精子が元気に泳いでおり、不妊なんて遠い世界のことと思っていた未婚男性に、いきなり「結婚なされても、お子さんは難しいかもしれません」などとお話しすることになります。不妊治療の入り口に立とうというご夫婦以上に心の準備がないまま、一人で厳しい事実を受け止めなくてはなりません。
女性は、排卵誘発しても得られる卵子は数個から十数個であり、せっかく採れた卵子を壊して検査することには抵抗があります。男性のみに精密検査が可能であるという、今までと逆の世界が始まるわけです。サイエンスとしては、重症造精機能障害の背景、そして治療困難であることを隠すべきではないと思います。一方、それを知らせることは、その人に「結婚弱者」としての 烙印 を押すことになります。
精子検査の結果を隠して結婚したら告知義務違反?
例えば、生命保険の申し込みの際、現在の健康状態や職業、過去の病歴など、保険会社が確認する重要な事項について、ありのままを報告(告知)する義務があります。これを結婚予定の男女に当てはめると、造精機能の告知に当たります。
前出の泌尿器科医は、造精機能障害は 瑕疵 、すなわち「当事者の予期するような状態や性質が欠けている」ことに相当する可能性があり、女性が婚前に精子精密検査を要求するのは当然のことであろう、と話していました。将来的に、精子検査の結果が悪かったのを隠して婚活し、結婚した後に告知義務違反などと言われたら、どうしたらよいのでしょうか?
私たちは、パンドラの箱を開けてしまったかもしれません。しかも、最後に希望が残らないパンドラの箱です。人間、なんでも知っておいた方が良いのか、知らなくても良いことがたくさんあるのか、簡単に結論が出るものではありません。