
ーーなるほど。定年の年になってもまだ働きたいという経験豊富で能力のある人を集めて修理のブランドを立ち上げたんですね!!
そうですね。もう一つは職人にそのまま定年後も残っていただくことによって「ダニエル」の家具を作る既存の若手に技術が継承できるということもあります。他にも最近凄く良いと感じることは、他で直せなくなっているアンティークになり得る家具の修理ができる知識があるということです。歴史のある家具を修理しようとすると、馬毛が出てきたり、単独のスプリングコイルの仕様になっていたりするので、現代の家具を修理している人にはない技術が必要なんです。昔の構造等は、経験と知識を持った職人だからこそわかることなので、大変助けられていますね。
ーーそれは確かに相当前の話ですね。
はい。日本で言えば戦前や60~70年前の家具が入ってきたりもします。他では直せないと判断されたものも、熟練の職人たちが残っていることで、大抵のものは修理ができます。
また、若手もその仕事を近くで見ることができるので、しっかりと家具を直すというお客様のご要望にお応えしながら、若手の学びの場にもできるというのは、「家具の病院」の強みだと思います。
現代社会で「ダニエル」が担う役割とは
ーー世界でサスティナブルという言葉やSDGsという目標ができて、良いものを永く使おうという動きが広まってきましたが、ダニエルで取り扱う家具は以前からずっとサスティナブルな家具だったんですね。
今でこそ、エコやSDGsと呼ばれていますが、持続可能な生活環境や目標について、我々は家具を通じてですが本当にずっとやり続けてきました。ですので、当たり前と言えば当たり前のことをしているのですが、時代がそういう流れに乗っているというのは、とても良い環境にあるなと思います。
また、永く使いたい時に直せる人がいないと、継続して使い続けるのは難しいと思います。ですので、家具の修復や修復技術者を育てるということは、私たちが責任を持って担える役目の一つだとも思っています。
「家具の学校」が次世代に継承する文化
ーー「家具の学校」ではどのようなことをされているのですか?
「家具の学校」は、元々「家具の病院」の付属機関になるのですが、一般の方がDIYの延長線上でモノづくりを楽しんでいただける場を提供するという一方、修復の技術を学ぶ場として、修理が出来る人たちを増やし、育成することも兼ねて行っています。
ーー制作と共に新たな人材を育成してまた技術を繋いでいくということですね。
今でこそ、買い換えるのが当たり前の世の中になってしまいましたが、家具を修理・修復できる人が増えれば、また昔のように直して使う文化が育つのではないかと思っています。
ーー店舗の正面に作業場がありますが、なぜこの場所に作業場を作られたのですか?
道路に面した部分は、通常ディスプレイとして目玉商品や売りたい商品を置くと思うのですが、私たちはその場所で定期的に職人が作業するようにしています。道行く人にあえて職人の技術を見てもらうことで、「ここならあれを作ってもらえるかもしれない」という新たな可能性が見つかったり、確かな技術を実際に見てもらうことで信頼にも繋がるのではないかと思っています。
また、次世代を担う子供たちや若い人たちが、職人の技術を見てかっこいいなと興味を持ってくれたら、それが未来に技術を繋ぐ最初のきっかけになると思うのです。
未来を見据えた「ダニエル」の想い
ーー最後に今後「ダニエル」が目指す未来はどのようなものですか?
これからの家具の未来は、カタログや展示会場で見たものを買うというよりは、オーダーメイドやカスタムをして、自分のこだわりを生かしたものが主流になると思っています。そうしてこだわり、選ばれた家具たちは、きっと破棄されずに次世代の方にも使ってもらえるということを、私自身すごく肌で感じています。
私たちはお客様のオーダーメイドのご要望に応えることができる環境にあります。こだわりを持っている方や、モノを大切にしたいという方たちの希望に一つ一つ丁寧に向き合っていれば、そういう方々の受け皿として求めていただける存在になっていけると思っています。
株式会社ダニエル 代表取締役社長 咲寿 義輝
家具の修理を承る際、実際にお客様のご自宅に足を運ぶこともあるという咲寿さん。
家具は直しすぎてはいけない、そこで共に過ごしてきた思い出の痕跡をなくすことなく直すことは難しいけれど、とても大切なんですよね。そう語る咲寿さんからは家具への優しく暖かな想いを感じました。
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