DEEP ACIDなんでもかんでも日記・ヤプログ!より移行

ユーラシア研究所総合シンポジウム「ウクライナのさまざまな選択」

 ロシアのウクライナ侵攻から1年。欧米やロシアからの議論ではなく、ウクライナの内側の視点から問題を理解するシンポジウム。冒頭での司会者の言葉でも、私たちはウクライナが抱える問題について理解が十分ではないことを指摘している。
 登壇者お1人目、神戸大学の研究者の方。在外同胞(русскоязычные)の保護、と言う概念が表面的なロシアの侵攻の根源的な大義。戦争に巻き込まれているのはウクライナ東部(ドネツク州、ルガンスク州、いわゆるドンバス地域)だけではなく、徴兵と言う形で中央アジアの民族も取り込もうとしている。
 で、講師の主旨は言語政策。帝政時代にはウクライナ語は書籍禁止などで当時から圧力がかかっていた。ソ連時代もロシア化教育は強く、ペレストロイカでようやくウクライナ語教育の流れが出てくる。
 ロシア、ウクライナの言語政策の複雑なところは、「民族と言語は一致する」原則が成り立たないことだ。ソ連時代にロシア語が国家語とされ、ロシア語で教育を受けていたから、ロシア語は民族語ではない、と完全に排除できない。特にドンバス地域ではロシア語が母語のウクライナ人も少なくない。
 そしてマイダン革命と言う大きな節目から、クリミア併合と言う有事に至る。僕の個人的主観で言えば、まあ革命を通じて民主化したとも捉えられるが、意地悪い見方をすれば、ゼレンスキーは民主主義と言うより実は国家主義(その意味ではブーチンがゼレンスキーをナチ呼ばわりしたのはあながち嘘ではない)なのではないか、とも思える、ウクライナはロシア語を民族的少数者の言語と定めたりしたが、ハンガリー人のハンガリー語への扱いの低さでハンガリーから抗議があったりもしたようだ。つまり法的には民族的少数者の母語の使用の保障を謳いつつ、きちんと遂行されたわけではないようだ。
 二人目の登壇者は津田塾大学の先生、今度はウクライナと中国の戦略的パートナーシップ(単純に中国をロシア側の国とみなすべきではない)。ウクライナ・中国はマイダン革命後もむしろ経済的な結び付きは強くなっていることを数字で示していただいた。欧州統合と一帯一路は両立可、と言う観点は興味深い。つまり、ウクライナの経済施策は、欧米、非欧米の両者から中立のベクトルを持っていたことのようだ。そのことがウクライナと中国の戦略的パートナーシップにつながっている。とはいえ、クリミア併合と言う有事によって、多方向外交は破綻する。にもかかわらず、ウクライナと中国の関係はむしろ経済的に伸びていく。なんと、ウクライナの武器輸出は中国が断トツで多いと言う。このお話は、ウクライナ侵攻がイデオロギー対立と言う単一的な視点では語れないことを示す興味深い話でした。それにしても、ウクライナの剣初依存率50%!チェルノブイリ事故最大のの被災国がこれってどういうこと?
 3人目の登壇者はワルシャワ大学の先生!ウクライナの最大の難民受け入れ国、ポーランドからの生のお話。実際にはバイデン電撃訪問もあり、意外と高みの現物的な意見も多いらしい。
 まず、ポーランドはEU加盟後、人材の流出に苦しんだらしい。みんな給料の高い西欧に出稼ぎに出ていってしまったと。もう来週ナチスドイツからユダヤ人を保護した美談に溢れていたポーランドは過去の話となってしまったのかもしれない。今回はウクライナ人を保護している(ワルシャワでロシア語ウクライナ語を聞かない日はないらしい)。なるほど、農業国だからこれだけの難民を受け入れられるのか。日本だったら排斥運動が起こりかねない人数でも受け入れ可能と言うのは素晴らしい。
 開戦直後のワルシャワ東駅が難民で溢れかえった時のお話は生々しかったなあ。へー、ポーランドって今好景気で、難民がたくさん来ても仕事はたくさんあるから治安が悪化したりすることはないのか。
 すげーな、戦場ではなくても、日常的に物流に戦車などが見られるというのか。
 と言うことで、3時間のご登壇での講義、ありがとうございました。
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