Ambition 【4】
その翌日のことだった。
放課後美術室を訪れた私の目に入ってきたのは、植物が枯れたかのようにへろへろと地べたに横たわった『願いの虹』の姿だった。「願い」の部分は、昨日乗せたときのままの美しい姿で、中心にただぽつんと立っていた。
私は急いでカンコを呼びに走った。再び作品を前にした私たちは、高さを失った帯状のものとお互いとを、交互に何度も見つめた。頭の中が重くて白い粘土に侵食されたようだ。何一つ言葉が見つからず、口からは小さなため息しか出てこない。
カンコが、「ふぁあ」と大きな欠伸をした。どのくらいの時間が過ぎたのだろう。
薄暗くなった教室の時計を見ると、針は五時二十三分を指していた。
「なんか、これじゃあ道みたい」
ぽつりとカンコが呟いた。確かに、土台に這いつくばった虹は、左から右へ少し傾いた道のように見えた。
「私たちにウエディングケーキは、まだ、少し重かったのかも」
そう言うと、カンコはサッと私に顔を向けた。
「もう、何言ってんのよ。虹には乗らなかったけど、道にはドーンと乗ってるじゃない。道から外れてないんだから問題なし。これからよ、これから」
美術展まであと三日。作品名は『願いの虹』から『Ambition』へ。
願いはまだかけない。野望として、自分の手で掴むことができる限りは――。
〈文字数 3,633文字〉
どうもありがとうございました。
お疲れさまです。
最初から最後まで読んだ人、果たして何人おるんかな?
これが、大学のときのゼミの課題です。
さて、
ゼミの課題の「共通テーマ」ですが・・・お分かりになったでしょうか?
「道の上のウエディングケーキ」
が、お題でした。じゃじゃじゃーん。
さすが小説家の先生。
一筋縄ではいかないお題でございました。
当時、この課題に対しての同期の作品には「大人の恋愛」を描いたものが多かったです。
気だるげな表現も多々みられました。
みんな、自分に酔って小説を書いてましたねw(かくゆう私も、ですがw)
いきなりウエディングケーキを出してから物語を広げる人。
ハードボイルド小説として仕上げた人。
コーヒーの香りと共に物語を進行させた人。
色々ありました。
そんな中、ウエディングケーキとは無縁に感じられる「高校」「青春」をテーマにしたのは私だけだったと思います。
みなが本物のケーキを物語に出す中、「粘土」で制作。
コーヒーなどの香りを描く中、キムチ味のカップ麺登場。(ゼミ中から「キムチ臭い!!」と大不評)
しかも、結果論的に「道の上のウエディングケーキ」に見えちゃった・・・というオチも、私だけでした。
「ストレートで安易な表現の小説は書いてやるもんか」と試行錯誤した結果です。
しかし、「じゃあ私がリアルに書けるのはなんぞ?」と悩んだ末、特別な時期の「17歳」を切り取ってみることにしたのでした。
もちろん私は高校時代、美術部でした。
美術室、準備室、グラウンドの描写など、私の高校を思い浮かべながら描きました。
いやはや、
懐かしくて、なんだかトッチ狂ったことをしたような気もします。
が、気にしなーいw
また、小説を書きたくなりました。
思い立ったら書いてみます。
その翌日のことだった。
放課後美術室を訪れた私の目に入ってきたのは、植物が枯れたかのようにへろへろと地べたに横たわった『願いの虹』の姿だった。「願い」の部分は、昨日乗せたときのままの美しい姿で、中心にただぽつんと立っていた。
私は急いでカンコを呼びに走った。再び作品を前にした私たちは、高さを失った帯状のものとお互いとを、交互に何度も見つめた。頭の中が重くて白い粘土に侵食されたようだ。何一つ言葉が見つからず、口からは小さなため息しか出てこない。
カンコが、「ふぁあ」と大きな欠伸をした。どのくらいの時間が過ぎたのだろう。
薄暗くなった教室の時計を見ると、針は五時二十三分を指していた。
「なんか、これじゃあ道みたい」
ぽつりとカンコが呟いた。確かに、土台に這いつくばった虹は、左から右へ少し傾いた道のように見えた。
「私たちにウエディングケーキは、まだ、少し重かったのかも」
そう言うと、カンコはサッと私に顔を向けた。
「もう、何言ってんのよ。虹には乗らなかったけど、道にはドーンと乗ってるじゃない。道から外れてないんだから問題なし。これからよ、これから」
美術展まであと三日。作品名は『願いの虹』から『Ambition』へ。
願いはまだかけない。野望として、自分の手で掴むことができる限りは――。
〈文字数 3,633文字〉
どうもありがとうございました。
お疲れさまです。
最初から最後まで読んだ人、果たして何人おるんかな?
これが、大学のときのゼミの課題です。
さて、
ゼミの課題の「共通テーマ」ですが・・・お分かりになったでしょうか?
「道の上のウエディングケーキ」
が、お題でした。じゃじゃじゃーん。
さすが小説家の先生。
一筋縄ではいかないお題でございました。
当時、この課題に対しての同期の作品には「大人の恋愛」を描いたものが多かったです。
気だるげな表現も多々みられました。
みんな、自分に酔って小説を書いてましたねw(かくゆう私も、ですがw)
いきなりウエディングケーキを出してから物語を広げる人。
ハードボイルド小説として仕上げた人。
コーヒーの香りと共に物語を進行させた人。
色々ありました。
そんな中、ウエディングケーキとは無縁に感じられる「高校」「青春」をテーマにしたのは私だけだったと思います。
みなが本物のケーキを物語に出す中、「粘土」で制作。
コーヒーなどの香りを描く中、キムチ味のカップ麺登場。(ゼミ中から「キムチ臭い!!」と大不評)
しかも、結果論的に「道の上のウエディングケーキ」に見えちゃった・・・というオチも、私だけでした。
「ストレートで安易な表現の小説は書いてやるもんか」と試行錯誤した結果です。
しかし、「じゃあ私がリアルに書けるのはなんぞ?」と悩んだ末、特別な時期の「17歳」を切り取ってみることにしたのでした。
もちろん私は高校時代、美術部でした。
美術室、準備室、グラウンドの描写など、私の高校を思い浮かべながら描きました。
いやはや、
懐かしくて、なんだかトッチ狂ったことをしたような気もします。
が、気にしなーいw
また、小説を書きたくなりました。
思い立ったら書いてみます。