今回は「合意のための合意」
米国と中国は、本当に貿易交渉で合意したのだろうか。双方の発表を見ると、実は、肝心な部分ですれ違っている。両国とも、それぞれの事情で決裂は避けたかった。そこで、とりあえず「合意することに合意した」にすぎないように見える。
中でも最大のすれ違いは、米国が発表した「中国が増やす」という輸入の量だ。
米国のライトハイザー通商代表は「中国が工業製品や農産品、エネルギー、サービスなどの分野で、2年間で少なくとも2000億ドル(約22兆円)の輸入を増やす」と説明し、焦点の農産品については「年500億ドルを目指すことで合意した」と語っている。
ところが、中国側は記者会見で「米国からの農産品輸入も大幅に拡大する」と語っただけで、具体的な数字については一切、言及していない(以下、中国側の説明は主に近藤大介氏の12月17日公開コラム、https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69237による)。
中国にとって重要な米国の制裁関税については、米国側が12月15日に発動予定だった制裁関税第4弾の残り約1600億ドル分の発動を見送り、すでに発動した1200億ドル分の制裁関税15%は半分の7.5%に引き下げる、と発表した。
ところが、中国側は「米国が今後、段階的に中国製品に対する追加制裁関税を解除していく。米国は一部の追加制裁予定、及び追加制裁関税の取り消しを承諾した」と説明しただけで、数字は明らかにしていない。「段階的に解除」という意味もはっきりしない。
知的財産保護はどうか、と言えば、中国側が「いくつかの共通認識に至った。それらは企業秘密の保護、薬品の知的財産権、特許の有効期限延長、地理的な表示、ネット通販で存在する海賊版や模倣品の生産や輸出、悪意の特許申請撃退、それに知的財産権の司法執行と手続きといったことを含む」と説明した。いわば項目を羅列しただけで、具体的な改善方法は一切、明らかにしていない。
肝心の正式文書に署名する時期もあいまいだ。ロイター通信によれば、米国側は来年1月前半にワシントンでの署名を目指している。だが、中国側は「双方がそれぞれの法律の精査や翻訳といった必要なプロセスがあり、その後に日時や場所、形式を定める」と説明し、時期も場所も明示しなかった。
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