少し前の記事ですが、当会でもおなじみの今井澂氏の今年の経済展望ですので、
メモ代わりにここに記載させて頂きます。
今井澂氏の予測は、いつも楽観的なので割り引いて読む必要がありますが、海底資源の開発により、
今後の日本は明るいと明言しています。
5月には、日経で12000円を回復するとの事。
結果はいかに!!
投資はくれぐれも個人の判断で!!
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毎日新聞ニュース PICK UPより
http://mainichi.jp/life/money/kabu/eco/pickup/news/20110114org00m020042000c.html
今井澂の日本株展望
◇2011年の日本株は「天気晴朗ナレドモ波高シ」
◇今井澂(いまい・きよし=国際エコノミスト、年金シニアプラン総合研究機構理事)
「株式投資は必ずしも幸せを持ってきてくれるとは限らないが、投資をやらなければ幸福感を味わえない--というのも、また事実である」
在香港の伝説的な投資の名人、マーク・ファーバー博士は、年頭に送ってきた投資レターでこんな名言を述べた。
新年の見通しを立てるにあたって、有力ストラテジストの皆さんのご意見を拝見した。強気が圧倒的だ。
理由はさまざまだが、(1)企業収益の増益が3年続きで見込まれること、(2)米国のQE2(第2次量的緩和)の影響もあり、アジアを中心とした新興国の株価上昇に対し日本株の出遅れが目立ってくること、(3)円高・ドル安は続くが、円高抵抗力はぐんと強化されている、などなど。年末日経平均株価1万2000円以上の目標が多い。金融緩和でしかも増益期待というのは、たしかに株高に最適の環境に違いない。
私もご存じの通り強気で通っている。1989年から90年にはメチャ弱気で米『ビジネス・ウィーク』誌に「東京のビッグ・ベア」と評されたが、2003年に日経平均が7607円をつけたとき以降ずっと強気。毎日新聞社刊『日本株「超」強気論』(03年10月発行)で「とりあえず2万円」とした。現実には07年の1万8000円台だったが、まあ私の勝ちだ。
現在は「今後30年以上の株価の長期上昇相場」を主張している。目標値は決めていないが、89年の歴史的高値更新さえも想定している。
なぜか。今後、海底資源の開発を中心に「資源大国日本」の夢が現実化していき、いま四苦八苦している政府予算の財源も相当楽になるはず--と考えているからだ。
なぜ海洋資源か。騒ぎになっている尖閣諸島近辺にも約1000億バレルの原油がある。イラク級の巨大油田だ。
また海底熱水鉱床といって、地下にしみ込んだ海水がマグマによって熱せられ、地殻中の金属元素を抽出して海中に噴出、堆積させた資源鉱床が、沖縄周辺や伊豆・小笠原諸島周辺海域で見つかっている。含まれるのは金、銀、非鉄金属、レアメタルなどだ。種類によっては日本で100年以上使用できる量がある。
すでに商用化に向けて開発予定があるのはメタンハイドレートだ。これはメタンが海底の低温・高圧でシャーベット状になったもの。12年には日本近海で、海底では世界初の採掘試験が開始される。日本の近海には90年分以上の埋蔵量がある。
資源開発のおかげで斜陽国が再生、累積政府赤字を軽減した実例がある。第2次世界大戦後の英国だ。
英国は旧植民地との英ポンド交換を割高なレートで強行したことなどで財政が悪化し、米国からの援助もストップするなか、労働党政権の社会福祉政策で「英国病」を患う。68年にはIMF(国際通貨基金)から救済融資を受けるほどだった。
ところが、北海での原油採掘が75年に始まり、英国は再生した。輸出と政府収入の20%近くを北海原油が占めるようになるなか、79年に登場したサッチャー首相が前向きの政策を打つ。ビッグバンを敢行、シティは活性化した。
とはいえ、北海原油の魔術は長続きしなかった。もともと130億バレルの中型油田だったし、最近は「そろそろ終わり」といわれている。それでも30年続いた。日本の海洋資源はケタが違う。もっと長期で、もっと大きな影響があるはずだ。
◇日本株式市場で2回目のゴールデンクロス
このように私は、長期の超大型相場を予想するものの、今年については、おそらく後半にニューヨーク市場で「債券安(長期金利上昇)、株安、ドル安」のトリプル安が起きると考えている。87年のブラックマンデー級の大波乱になるだろう。その理由は後述するが、まずは、長期の買いサインがすでに出ていることを述べておかなくてはなるまい。
図1は、野村証券金融経済研究所のシニアテクニカルアナリスト、山内正一郎さんによる1878(明治11)年以降の日本株の推移である。1920年までは年間の高安のみの棒グラフ、その後は月末値の折れ線グラフになっている。
明治維新以降の日本が目指したのは「軍事大国」。おそらく国民にはあまりいいことがなかったのだろう。全体としては横ばいのまま、45年8月の敗戦を迎えた。
戦後の焼け跡を私は忘れない。日本中が貧しく、絶望し、飢えていた。そのなかで「40年後には日本は世界第2位の経済大国になり、普及率でいうと一家に1台の自動車を持つようになる」と予言したら、まあ誇大妄想狂と扱われただろう。
しかし、49年5月には早くも長期波動上昇のサインが出た。60カ月(5年)移動平均線が120カ月(10年)移動平均線を抜いた。「ゴールデンクロス」である。
この年はお隣の中国に共産党政権が成立、日本は冷戦のいわば最前線となり、米国は資本主義国発展のモデルケースに日本と西ドイツを選んだ。為替レートは360円の円安とし、米国企業の世界最先端技術を安いライセンス料で利用させた。「軍事大国」としての望みを絶たれた日本は、今度は「経済大国」としての道をたどることになる。
その結果はどうだったか。
49年から89年まで、40年間株価上昇が続き、日経平均は100円近辺から3万8915円に。行き過ぎてバブルとなり、また半導体や自動車など日本が圧倒的優勢だった分野で米クリントン政権のイジメがあり、94年10月にはゴールデンクロスの逆、デッドクロスの売り信号が出た。キメ打ちとなった95年の超円高を経て、日本はデフレに突入する。
それから13年7カ月。08年5月に59年ぶり、日本の株式市場始まって以来第2回目のゴールデンクロスが発生したのである。
何が理由なのか。私が調べてみると、ちょうどその前後に、日本の技術がカナダとシベリアでメタンハイドレート試掘に成功していた。
日本は陸地面積では世界60位の小さな島国だが、領海と排他的経済水域では世界6位。しかもそこには前記したように豊かな資源がある。
政府があまりPRしないのは、円が買われる材料にされるのを財界が恐れているからだろう。
また現在の政権では、尖閣諸島問題をめぐる船長釈放のように、中国に押しまくられて結局、取られてしまうかも。 それでも、中国やインドにおける資源消費の急増ぶりと資源ナショナリズムの高まり、そして日本の労働力の老齢化・少子化を考えると、自国の支配海域内の豊富で多様な資源の活用は大きな意味を持つ。21世紀の20年代以降の日本の見通しに、私は強気だ。
◇秋~年末の大波乱
とはいえ、その長期上昇の過程で、毎年毎年必ず株高が続くわけではない。前記したように、今年はおそらく秋から年末のどこかで、ブラックマンデー級の市場の大波乱が起きると考えている。
なぜブラックマンデーの再来か。3つの理由が考えられる。
第1は、米中間でいま起こっている「新冷戦」。
米国のほうはQE2などで、自国も含めて世界をインフレ気味にしたい。一方の中国は、人民元を割安なまま据え置いて輸出を拡大し、いわば世界をデフレに導いている。最後は基軸通貨のドル札をいくらでも刷れる米国が勝ちと思うが、中途で波乱がある。それが今年だ。
なぜか。明12年は20年に1回の、米中両国の最高指導者の同時交代年だ。米国では今年末から予備選挙が始まるし、現在の情勢から見て、何らかの形で中国にペナルティーを与えたい。対中制裁か、為替操作国認定か。一方、中国は、たとえば手持ちの米国債を大量に売ってみせ、優位を誇示したがるかもしれない。
もちろん、ドル安は人民元高に直結するので本気では売るまいが、わざと市場にわかるような形で米国債売却ショックを与えることはありえよう。
第2は逆に、中国内部の問題の表面化による「チャイナショック」だ。金融引き締めの度がすぎてハードランディング、というよりも、食料品中心の価格上昇を背景とした社会不安か。何しろニンニク、ショウガ、砂糖、食用油、豚肉など、特にニンニクは2年で実に5倍だ。暴動もストライキも空前の水準だし、事情通に聞くと、最近は5~6人集まるとすぐ公安当局がやってきて解散させられるとか。
この中国関連ショックの別バージョンとして、北朝鮮がらみで何か発生するかもしれない。金一族の放逐、亡命とか、第3次核実験強行にからんでのクーデターや中国による「北」制圧とか。ついでに言及すると、ユーロ圏の騒ぎは限定的だろう。もう市場は織り込んでいる。
第3の理由が“本命”で、債券バブルの終焉だ。08年秋のリーマン・ショック以降、ともかく安全をと債券へ資金はシフトし、10年物国債金利は2.04%まで下落した。どう見ても行き過ぎだ。当然、ここ何カ月かの米国の景気回復を期待させる指標を評価し、10年物国債金利は3.3%まで上昇している。
今後はどうか。2.7~2.8%のGDP実質成長率とFRB(米連邦準備制度理事会)が目標としている2%直前のインフレ率を合わせると、場合によっては5%台まで行ってもおかしくない。
金利が上昇し債券価格は下落するので、資金の株式市場シフトは続く。しかしある日突然、理論的に割高、と気付いた投資家が売りに転じて、急落が起きる。あるいは米国債格付けのワンノッチ引き下げかも。
◇5~6月には1万2000円
以上の懸念は、私のブログ「まだまだ続くお愉しみ(http://kiyoshi-imai.cocolog-nifty.com/)」の読者にはある程度おなじみだろうが、本稿ではさらに第4の理由、不安の根源についても触れよう。それは、現在のニューヨーク株式市場の上昇は、まだ実体景気と差のある「つくられた株高」であることだ。
図2の通り、最近のダウ平均はFRBの資産膨張と、気味の悪いほど符合している。リーマン・ショック後、FRBは住宅ローン担保証券(MBS)を大量に購入し、FRBの資産は9000億ドルから一挙に2兆ドル台に増加した。つれて株価は回復したが、10年4月にFRBがMBS購入を停止したら、株価は急落。
そこでFRBは8月からMBSの元本償還金を市場に投入。この資金を受け取った大手金融機関が株価の指数先物を購入し、NY株価は再び勢いを取り戻す。
さらにバーナンキFRB議長は「11月から6カ月間で6000億ドルの資金を市場に投入する」と宣言した。これがQE2である。これで株価は戻り新値を更新した。
FRB資金による株買いは、別に違法ではない。ブラックマンデーの後に大統領行政命令で創設された「金融市場作業チーム」が行っており、財務長官、FRB議長、それに民間金融機関代表が協議して実施されている。
問題はQE2が今年6月までと期限が決まっていることだ。資金供給が止まれば株価下落となるのは、最近の株式市場の動きを見れば明らかである。QE3を要請する声が高まればいいが、表面しか見えない政治家は多いから、何カ月か情勢を見て、ということになり、ウォール街の仕掛けで10年4~8月の株価下落に似た状況が発生するかもしれない。その場合は、短期で騒ぎは終わることになる。
結論。世界の景気は新興国中心に好況持続で金融緩和、企業収益上昇期待で今年は明るい1年になる。5~6月ごろには日経平均1万2000円は堅い。晴天である。
しかし秋には波乱必至。やはり「波高し」ではないか。2011年1月17日
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今井澂氏の予測は、いつも楽観的なので割り引いて読む必要がありますが、海底資源の開発により、
今後の日本は明るいと明言しています。
5月には、日経で12000円を回復するとの事。
結果はいかに!!
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毎日新聞ニュース PICK UPより
http://mainichi.jp/life/money/kabu/eco/pickup/news/20110114org00m020042000c.html
今井澂の日本株展望
◇2011年の日本株は「天気晴朗ナレドモ波高シ」
◇今井澂(いまい・きよし=国際エコノミスト、年金シニアプラン総合研究機構理事)
「株式投資は必ずしも幸せを持ってきてくれるとは限らないが、投資をやらなければ幸福感を味わえない--というのも、また事実である」
在香港の伝説的な投資の名人、マーク・ファーバー博士は、年頭に送ってきた投資レターでこんな名言を述べた。
新年の見通しを立てるにあたって、有力ストラテジストの皆さんのご意見を拝見した。強気が圧倒的だ。
理由はさまざまだが、(1)企業収益の増益が3年続きで見込まれること、(2)米国のQE2(第2次量的緩和)の影響もあり、アジアを中心とした新興国の株価上昇に対し日本株の出遅れが目立ってくること、(3)円高・ドル安は続くが、円高抵抗力はぐんと強化されている、などなど。年末日経平均株価1万2000円以上の目標が多い。金融緩和でしかも増益期待というのは、たしかに株高に最適の環境に違いない。
私もご存じの通り強気で通っている。1989年から90年にはメチャ弱気で米『ビジネス・ウィーク』誌に「東京のビッグ・ベア」と評されたが、2003年に日経平均が7607円をつけたとき以降ずっと強気。毎日新聞社刊『日本株「超」強気論』(03年10月発行)で「とりあえず2万円」とした。現実には07年の1万8000円台だったが、まあ私の勝ちだ。
現在は「今後30年以上の株価の長期上昇相場」を主張している。目標値は決めていないが、89年の歴史的高値更新さえも想定している。
なぜか。今後、海底資源の開発を中心に「資源大国日本」の夢が現実化していき、いま四苦八苦している政府予算の財源も相当楽になるはず--と考えているからだ。
なぜ海洋資源か。騒ぎになっている尖閣諸島近辺にも約1000億バレルの原油がある。イラク級の巨大油田だ。
また海底熱水鉱床といって、地下にしみ込んだ海水がマグマによって熱せられ、地殻中の金属元素を抽出して海中に噴出、堆積させた資源鉱床が、沖縄周辺や伊豆・小笠原諸島周辺海域で見つかっている。含まれるのは金、銀、非鉄金属、レアメタルなどだ。種類によっては日本で100年以上使用できる量がある。
すでに商用化に向けて開発予定があるのはメタンハイドレートだ。これはメタンが海底の低温・高圧でシャーベット状になったもの。12年には日本近海で、海底では世界初の採掘試験が開始される。日本の近海には90年分以上の埋蔵量がある。
資源開発のおかげで斜陽国が再生、累積政府赤字を軽減した実例がある。第2次世界大戦後の英国だ。
英国は旧植民地との英ポンド交換を割高なレートで強行したことなどで財政が悪化し、米国からの援助もストップするなか、労働党政権の社会福祉政策で「英国病」を患う。68年にはIMF(国際通貨基金)から救済融資を受けるほどだった。
ところが、北海での原油採掘が75年に始まり、英国は再生した。輸出と政府収入の20%近くを北海原油が占めるようになるなか、79年に登場したサッチャー首相が前向きの政策を打つ。ビッグバンを敢行、シティは活性化した。
とはいえ、北海原油の魔術は長続きしなかった。もともと130億バレルの中型油田だったし、最近は「そろそろ終わり」といわれている。それでも30年続いた。日本の海洋資源はケタが違う。もっと長期で、もっと大きな影響があるはずだ。
◇日本株式市場で2回目のゴールデンクロス
このように私は、長期の超大型相場を予想するものの、今年については、おそらく後半にニューヨーク市場で「債券安(長期金利上昇)、株安、ドル安」のトリプル安が起きると考えている。87年のブラックマンデー級の大波乱になるだろう。その理由は後述するが、まずは、長期の買いサインがすでに出ていることを述べておかなくてはなるまい。
図1は、野村証券金融経済研究所のシニアテクニカルアナリスト、山内正一郎さんによる1878(明治11)年以降の日本株の推移である。1920年までは年間の高安のみの棒グラフ、その後は月末値の折れ線グラフになっている。
明治維新以降の日本が目指したのは「軍事大国」。おそらく国民にはあまりいいことがなかったのだろう。全体としては横ばいのまま、45年8月の敗戦を迎えた。
戦後の焼け跡を私は忘れない。日本中が貧しく、絶望し、飢えていた。そのなかで「40年後には日本は世界第2位の経済大国になり、普及率でいうと一家に1台の自動車を持つようになる」と予言したら、まあ誇大妄想狂と扱われただろう。
しかし、49年5月には早くも長期波動上昇のサインが出た。60カ月(5年)移動平均線が120カ月(10年)移動平均線を抜いた。「ゴールデンクロス」である。
この年はお隣の中国に共産党政権が成立、日本は冷戦のいわば最前線となり、米国は資本主義国発展のモデルケースに日本と西ドイツを選んだ。為替レートは360円の円安とし、米国企業の世界最先端技術を安いライセンス料で利用させた。「軍事大国」としての望みを絶たれた日本は、今度は「経済大国」としての道をたどることになる。
その結果はどうだったか。
49年から89年まで、40年間株価上昇が続き、日経平均は100円近辺から3万8915円に。行き過ぎてバブルとなり、また半導体や自動車など日本が圧倒的優勢だった分野で米クリントン政権のイジメがあり、94年10月にはゴールデンクロスの逆、デッドクロスの売り信号が出た。キメ打ちとなった95年の超円高を経て、日本はデフレに突入する。
それから13年7カ月。08年5月に59年ぶり、日本の株式市場始まって以来第2回目のゴールデンクロスが発生したのである。
何が理由なのか。私が調べてみると、ちょうどその前後に、日本の技術がカナダとシベリアでメタンハイドレート試掘に成功していた。
日本は陸地面積では世界60位の小さな島国だが、領海と排他的経済水域では世界6位。しかもそこには前記したように豊かな資源がある。
政府があまりPRしないのは、円が買われる材料にされるのを財界が恐れているからだろう。
また現在の政権では、尖閣諸島問題をめぐる船長釈放のように、中国に押しまくられて結局、取られてしまうかも。 それでも、中国やインドにおける資源消費の急増ぶりと資源ナショナリズムの高まり、そして日本の労働力の老齢化・少子化を考えると、自国の支配海域内の豊富で多様な資源の活用は大きな意味を持つ。21世紀の20年代以降の日本の見通しに、私は強気だ。
◇秋~年末の大波乱
とはいえ、その長期上昇の過程で、毎年毎年必ず株高が続くわけではない。前記したように、今年はおそらく秋から年末のどこかで、ブラックマンデー級の市場の大波乱が起きると考えている。
なぜブラックマンデーの再来か。3つの理由が考えられる。
第1は、米中間でいま起こっている「新冷戦」。
米国のほうはQE2などで、自国も含めて世界をインフレ気味にしたい。一方の中国は、人民元を割安なまま据え置いて輸出を拡大し、いわば世界をデフレに導いている。最後は基軸通貨のドル札をいくらでも刷れる米国が勝ちと思うが、中途で波乱がある。それが今年だ。
なぜか。明12年は20年に1回の、米中両国の最高指導者の同時交代年だ。米国では今年末から予備選挙が始まるし、現在の情勢から見て、何らかの形で中国にペナルティーを与えたい。対中制裁か、為替操作国認定か。一方、中国は、たとえば手持ちの米国債を大量に売ってみせ、優位を誇示したがるかもしれない。
もちろん、ドル安は人民元高に直結するので本気では売るまいが、わざと市場にわかるような形で米国債売却ショックを与えることはありえよう。
第2は逆に、中国内部の問題の表面化による「チャイナショック」だ。金融引き締めの度がすぎてハードランディング、というよりも、食料品中心の価格上昇を背景とした社会不安か。何しろニンニク、ショウガ、砂糖、食用油、豚肉など、特にニンニクは2年で実に5倍だ。暴動もストライキも空前の水準だし、事情通に聞くと、最近は5~6人集まるとすぐ公安当局がやってきて解散させられるとか。
この中国関連ショックの別バージョンとして、北朝鮮がらみで何か発生するかもしれない。金一族の放逐、亡命とか、第3次核実験強行にからんでのクーデターや中国による「北」制圧とか。ついでに言及すると、ユーロ圏の騒ぎは限定的だろう。もう市場は織り込んでいる。
第3の理由が“本命”で、債券バブルの終焉だ。08年秋のリーマン・ショック以降、ともかく安全をと債券へ資金はシフトし、10年物国債金利は2.04%まで下落した。どう見ても行き過ぎだ。当然、ここ何カ月かの米国の景気回復を期待させる指標を評価し、10年物国債金利は3.3%まで上昇している。
今後はどうか。2.7~2.8%のGDP実質成長率とFRB(米連邦準備制度理事会)が目標としている2%直前のインフレ率を合わせると、場合によっては5%台まで行ってもおかしくない。
金利が上昇し債券価格は下落するので、資金の株式市場シフトは続く。しかしある日突然、理論的に割高、と気付いた投資家が売りに転じて、急落が起きる。あるいは米国債格付けのワンノッチ引き下げかも。
◇5~6月には1万2000円
以上の懸念は、私のブログ「まだまだ続くお愉しみ(http://kiyoshi-imai.cocolog-nifty.com/)」の読者にはある程度おなじみだろうが、本稿ではさらに第4の理由、不安の根源についても触れよう。それは、現在のニューヨーク株式市場の上昇は、まだ実体景気と差のある「つくられた株高」であることだ。
図2の通り、最近のダウ平均はFRBの資産膨張と、気味の悪いほど符合している。リーマン・ショック後、FRBは住宅ローン担保証券(MBS)を大量に購入し、FRBの資産は9000億ドルから一挙に2兆ドル台に増加した。つれて株価は回復したが、10年4月にFRBがMBS購入を停止したら、株価は急落。
そこでFRBは8月からMBSの元本償還金を市場に投入。この資金を受け取った大手金融機関が株価の指数先物を購入し、NY株価は再び勢いを取り戻す。
さらにバーナンキFRB議長は「11月から6カ月間で6000億ドルの資金を市場に投入する」と宣言した。これがQE2である。これで株価は戻り新値を更新した。
FRB資金による株買いは、別に違法ではない。ブラックマンデーの後に大統領行政命令で創設された「金融市場作業チーム」が行っており、財務長官、FRB議長、それに民間金融機関代表が協議して実施されている。
問題はQE2が今年6月までと期限が決まっていることだ。資金供給が止まれば株価下落となるのは、最近の株式市場の動きを見れば明らかである。QE3を要請する声が高まればいいが、表面しか見えない政治家は多いから、何カ月か情勢を見て、ということになり、ウォール街の仕掛けで10年4~8月の株価下落に似た状況が発生するかもしれない。その場合は、短期で騒ぎは終わることになる。
結論。世界の景気は新興国中心に好況持続で金融緩和、企業収益上昇期待で今年は明るい1年になる。5~6月ごろには日経平均1万2000円は堅い。晴天である。
しかし秋には波乱必至。やはり「波高し」ではないか。2011年1月17日
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