
9/29 安倍首相は「半沢直樹」ばりの逆転劇を演じるのか?
2013年9月29日
HS政経塾塾長 ついき秀学の公式サイトより
http://tsuiki-shugaku.hr-party.jp/economy/5345/
消費増税に向けて外堀を埋める政府・マスコミ
来たる10月1日に安倍晋三首相が、来年4月に予定されている消費増税についての最終結論を発表することになっています。
マスコミ報道によれば、安倍首相は既に来年4月の5%から8%への消費税率上げを決断しており、これによる景気下押し圧力を緩和するために、今年度の補正予算において5兆円規模の経済対策案もほぼ固まっているとされています。
また、消費増税の決断に当たって安倍首相は、法人税の実効税率引き下げに相当こだわり、結果、財務省は同税率を2015年以降に主要国並み水準へ下げるよう検討することを受け入れました。
来年4月の消費増税に向けては、夏の終わり頃から政府、メディアをあげて、その外堀を埋める動きが加速しています。
8月下旬には政府が消費増税に関する「集中点検会合」を開き、有識者60人からその是非について意見を聴取したところ、7割超の44人が来年4月の消費増税に賛成しました。
9月9日には本年4-6月期GDPの2次速報値が発表され、1次速報値と比べて企業設備投資が大幅に伸びたことにより、実質GDPは年率2.6%から3.8%へと大きく上方修正。
かねてより、消費増税の決断に際してはこの4-6月期GDPの値を判断材料の一つとすることを安倍首相は明言していましたが、ここでかなり強めの数値が出たことから、「増税しても景気の勢いが強いから大丈夫」という言い方ができなくはない状況となりました。
実は今回、大幅上方修正となった企業設備投資は2次速報値の段階で財務省が作成している法人企業統計を基にして算出されており、同統計において何らか財務省の意思が反映されたということも考えられないことではありません(あくまで推測の域を出ませんが)。
そして、9月中旬以降、大手新聞各紙が次々に「安倍首相が消費増税を決断」と報じました。12日朝刊の読売を皮切りに、同日夕刊で毎日、19日朝刊で産経、同日夕刊で日経、21日朝刊で朝日と続きます。その間、12日に菅義偉官房長官が「首相が消費増税を決断した事実はない」と記者会見で述べたものの、全く無視されています。
さらに22日に放映されたテレビ朝日のインタビューで安倍首相自身が、消費増税で景気を腰折れさせないために経済対策のパッケージを取りまとめるよう麻生太郎財務相や甘利明経済再生相に指示した旨を述べました。
消費増税が前提の経済対策パッケージの取りまとめを指示したと言うのですから、安倍首相は既に来年4月の消費増税を決断していると捉えるのが自然でしょう。
かくして政府もマスコミも、そして安倍首相自身さえも消費増税は既定路線という流れを、10月1日の正式発表を前にして積極的に作り出しているのです。
安倍首相は自分で自分の葬式を出すのか
確かに、2020年の東京五輪開催が決定して、これまでのアベノミクス、特に日銀の「異次元」緩和によって国全体のマインドが好転している中、これをさらに加速する好材料に恵まれたのですから、景気の先行きに自信を深めるのは分からないでもありません。
しかし、消費増税反対派が言うように、あるいは幸福実現党がこれまで主張し続けてきた通り、来年4月に消費税率を引き上げればその後、消費は増税前の駆け込みの反動により大きく落ち込み、景気は確実に腰折れしてしまうでしょう。
ここ15年近く常態化しているデフレは、経済全体の供給能力に比して需要が不足しているために物価が下落し続けるという現象です。その背景には消費マインドの長期的な低迷があると言えます。
そのような経済情勢のもと、国内の商品やサービスの売買のほとんどを覆う形で3%分もの増税を行えば、金融緩和等で持ち直してきた消費マインドはあっという間に冷え込んで、景気は奈落の底に沈んでいきます。東京五輪の経済効果も、冷静になって考えれば、まだ数年先の話です。
15年間、虚弱体質で寝床に臥せっていた人(日本経済)に対し、効果的な強壮剤(日銀の異次元緩和)を打って少し体力が戻ってきたからといって、いきなり30キログラムの重石(3%分の消費増税)を背負って走るように強制したら、また体を壊してしまうのは火を見るより明らかです。
安倍政権は、アベノミクスによる景気回復やオリンピック招致決定で高い支持率を維持し、盤石のようにも見えますが、確かにここで消費増税を先送りや中止するという決定を下すと、財務省を初め、政府・与党内の多数を占める増税賛成派との間で政争が勃発し、これを克服するために大きなエネルギーが削がれるようになるでしょう。
これは、安倍首相として本当にやりたいこと、すなわち集団的自衛権を行使できるようにする憲法解釈の変更や憲法9条の改正に本格的に取り組むのが遅れることを意味します。
とはいえ、消費増税で景気が腰折れし、再びデフレが常態化すれば、その責任は安倍首相自身が取らなければなりません。消費増税が経済に与えるリスクについては「10月上旬に判断する私の責任だ。結果にも責任を持たないといけない」と、首相は明言しています(9月22日付ロイター)。
増税を強行すれば、来年後半、景気悪化が表面化してくるにつれて、安倍首相への辞任圧力が強まり、結局、自民党内での政権たらい回しが復活するという蓋然性がきわめて高くなるでしょう。つまり、集団的自衛権の行使容認や憲法改正を、またもや完遂させることなく安倍首相は退陣を余儀なくさせられるということです。
2007年の第一次安倍内閣の退陣は朝日新聞が「安倍の葬式はうちで出す」といって現実のものとなりましたが、今回の第二次内閣は消費増税によって自分で自分の葬式を出すことになるわけです。
安倍首相は「中野渡頭取」のように決断すべし
要するに安倍首相は今、ぎりぎりの選択を迫られています。
増税賛成派との衝突を恐れて消費増税を実行し、結果、景気の腰折れ責任を問われて来年後半以降に内閣総辞職に至り、憲法問題を解決できずに終わる道を歩むのか。それとも増税賛成派の抵抗を乗り越えて消費増税を中止し、デフレ脱却と高い経済成長を確実なものとしながら、憲法改正まで何とかやり遂げる道を歩むのか、という二者択一です。
増税賛成派は財政再建を大義名分に掲げていますが、低成長のまま10%まで消費税率を上げても今後増大する社会保障関係費を賄うことができないのは彼ら自身も認めています。低成長経済の下で消費税率をさらに15%や20%と上げていけば、日本経済はその税の重みに耐えかねて衰退の一途をたどるのみです。彼らの主張の中に日本の未来はありません。
将来世代の繁栄を守るためにも社会保障費は抑制せざるを得ません。これは生涯現役社会、すなわち高齢の方々も仕事をしていただく社会を築くことによって可能となります。そのためには日本経済は高い成長を遂げ、大量の高齢者雇用を生み出さなければならないのです。
増大する社会保障関係費の問題を克服するために必要なのは財政再建ではなく、高い経済成長なのです。高い経済成長によってこそ、税収と高齢者雇用を共に増やすことができます。また、高い経済成長によってGDPが急速に増大していけば、巨額の政府債務も相対的に問題にならなくなっていきます。
したがって、財政問題を解決するためには、逆説的ではありますが国債の一時的な発行増を恐れることなく、むしろ高い経済成長を徹底的に目指して、減税と未来性ある公共投資を大胆に実行しなければならないのです。
日本経済の生き筋に関する、このような大局観と信念をもって当たれば、増税賛成派の反発を乗り越えて消費増税を中止することは可能です。
ところで、この夏以降、人気沸騰のTBS系連続ドラマ「半沢直樹」は9月22日の最終回で、民放ドラマとしては今世紀最高の視聴率42.2%(関東地区)、45.5%(関西地区)を記録しました。瞬間最高視聴率は関東、関西地区とも、主人公・半沢直樹が中野渡(なかのわたり)頭取から出向を内示されるラストシーンで、それぞれ46.7%、50.4%となりました。
不良債権の回収や金融庁検査への対応、銀行上層部の不正暴露で目覚ましく活躍し、昇格は間違いなしと考えられていた半沢が、頭取から意外にも証券子会社に出向を命じられる結末に唖然とした方も多いかと思いますが、安倍首相にも中野渡頭取と同種の判断が求められます。
つまり、消費増税に向けて、主要マスコミはこれを既定路線として報道し、政府は経済対策案を固め、完全に外堀が埋まって、誰がどう考えても消費増税するしかないという状況で、あえて皆の、その思い込みに反して、消費増税を中止するという決断を下すことです。
10月1日の記者会見の折に、安倍首相が「誰もが当然、半沢は昇格するものと思っていたところで、中野渡頭取は彼に出向を命じました。私も中野渡頭取にならって、誰もが当然、消費増税を決定すると考えているところで、その中止を決断することにしました」などと述べれば、話題になることは間違いありません。安倍首相には最後の最後で、大逆転劇を演じてもらいたいものです。
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