東日本大震災後よりひどい「マイナス成長」
先週17日に発表された昨年10-12月期GDP速報は、本コラムで以前から予想していたとおり、5四半期ぶりのマイナス成長となった。前期比1.6%減、年率換算で6.3%減だ。
10月と11月の経済統計はほぼ全滅といっていいほど悪い数字だったので、この程度になっても不思議でない。多くの民間エコノミストの予想より悪かった。
酷い数字だが、その内訳の動きを見ると、民間消費11.0%減、民間住宅10.4%減、民間企業投資14.1%減、公的需要1.7%増、輸出0.4%減、輸入10.1%減と、民間部門は全敗の酷い状況だ。
1994年以降、各四半期GDP前期比(年率換算)を調べると、今回の6.3%減は、4番目に悪い数字だ。ちなみに、ワースト5をあげれば、(1)2009年1-3月期17.7%減、(2)2008年11-12月期9.4%減、(3)2014年4-6月期7.4%減、(4)2019年10-12月期6.3%減、(5)2011年1-3月期5.5%減だ(表1)。
(1)と(2)は2008年9月のリーマンショック、(3)は前回2014年4月の消費増税、(4)は今回2019年10月の消費増税、(5)は2011年3月の東日本大震災によるものだ。
表1の過去のデータをさらに詳しく見てみよう。
(1)、(2)のリーマンショックでは、外需の落ち込みが激しい。(3)、(4)の消費増税では、内需の消費の落ち込みが顕著だ。こうしてみると、GDPを大きく低下させたのは、リーマンショック、消費増税、東日本大震災だったが、このうちリーマンショックと東日本大震災は外的要因であり、不可避であった。
しかし、消費増税は政治判断の結果であり、避けようと思えばできたはずだ。国の財政状況が財政再建が必要なほど悪い、という間違った状況認識の元で、間違った消費増税が行われ、予想通りにGDPが失われた。
・・・・・中略
しかし、政府・日銀は頑として消費増税による景気悪化を認めない。今回も、西村経済再生担当大臣や黒田日銀総裁が、マイナス成長について「台風や暖冬の影響」ばかり強調しているのは、呆れるばかりだ。その程度の原因では、ワースト5になったことは説明できない。
マスコミ各紙も今回のGDP減少について、消費増税の影響とともに、駆け込み需要の反動減をあげ、その上で台風や暖冬の影響を強調している。今回のGDP推計では、駆け込み需要増とその反動減の影響を除去するようになっているにもかかわらず、「反動減だ」という記事を書くマスコミは、役所の言いなりか、何もわかっていないかではないか。
・・・・・中略
5月までの終息宣言は厳しい
東京五輪開催の可否は、IOC(国際オリンピック委員会)の判断次第だが、少なくとも2ヵ月くらい前には中止かどうかの決定をするだろう。となると、5月中には決めておかなければいけない。
問題はそのとき、新型肺炎についてWHO(世界保健機構)の終息宣言が出ているかどうかだ。WHOの基準では、ウイルス患者がいなくなってから28日間が経過すれば終息とみなす、とされている。筆者の予測では、4月上旬から感染者数はあまり増えなくなるがそれでも増え続けるので、5月下旬にWHOの終息宣言が出るかどうかはかなり微妙だ。
なお、5月に予定されているロンドン市長選で、「ロンドンが代理開催都市になる用意がある」と言い出した候補者がいるのは、世界的には、東京五輪はもはや盤石ではないと認識されているからだ。
欧米から見れば、中国も日本も同じと見えてしまうのが痛い。以前本コラムでも書いたとおり、中国政府が病気の発生を公表した1月20日から、日本政府が感染症指定をした28日までの初動の危機感のなさが悔やまれる。1月28日に感染症指定をし即日施行していれば、クルーズ船の入港拒否(もちろん日本人は別途救出)が可能だったはずで、国際社会からここまで非難されずに済んだだろう。
こうして考えると、5月中に「東京五輪中止」の決断が下される可能性も考えざるを得ない。
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