吉水慈豊,2024,妊娠したら、さようなら──女性差別大国ニッポンで苦しむ技能実習生たち,集英社インターナショナル.(1.31.25)
なぜ、技能実習生の赤ちゃん遺棄事件は続くのか――。
妊娠を理由に職を追われ、帰国させられる外国人の労働者たち。
ベトナム人を支援する女性僧侶が、妊婦の悲しみと苦しみに寄り添った記録を綴る。
ベトナム人の「失踪」が相次ぎ、「奴隷労働」と国際的に批判された外国人技能実習制度。
その廃止は決まったけれど、近年は技能実習生が孤立出産に追い込まれ、赤ちゃんの死体を遺棄する事件が立て続く。
どうして「悲劇」は繰り返されるのか? 新制度が始まれば、もう起きない?
マタハラが許されないこの時代、まるで妊娠したことが罪であるかのように仕事をやめさせられ、日本から追い出される数多くのベトナム人女性たち。
寄る辺なく悲しみ、悩み、苦しみを抱えたそんな妊婦のために戦い、新しい「いのち」の誕生をやさしく支えてきた女性僧侶がいる。
その慈悲の記録は、日本社会にいまだ残る「男尊女卑」をも映し出す。
マタハラが横行する技能実習生・留学生の妊娠・出産・育児
●「妊娠は病気だから仕事はできません」と会社に言われた
●退職させられそうでも技能実習の関係機関は支援しない
●児童相談所が赤ちゃんを連れ去り、帰国させようとした
●60代日本人男性との子を出産し、認知を拒否される
●出産後の保育園探しに難航し、育児疲れで孤立する
男女雇用機会均等法および育児・介護休業法により、妊娠、出産、育休取得等を理由とする解雇は、禁止されている。
しかし、外国人技能実習生、特定技能外国人の多くが、妊娠を機に解雇され出身国に送り返される。
吉永さんは、「日越ともいき支援会」の活動をとおして、人権を踏みにじられた、数多くのベトナム人女性を救い出す。
「労働力」は欲しいが「人間」としては扱わない、そんな出入国在留管理庁をはじめとする行政への吉永さんの怒りが、一つ一つの事例に噴出する。
わたしたちの生活に、「海外にルーツをもつ人」の労働力は欠かせない。
その人たちの人権、とくにリプロダクティブ・ライツを保障するのは、わたしたちの当然の責務である。
目次
第1話 ベトナム戦争からの仏縁と増える位牌
第2話 行き場を失う遠距離恋愛の二人
第3話 「妊娠は病気」だから働けない?
第4話 児童相談所に赤ちゃんを奪われて
第5話 技能実習生の“味方”が助けてくれない
第6話 介護士を目指す留学生の“違反”
第7話 日本の大人に騙されたシングルマザーの涙
第8話 「妊娠したら帰国」という呪文
最終話 新制度で悲劇を繰り返さないために