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奇人、変人、怪人として知られるきだみのるは、優れた日本文化論としても評価が高い『気違い部落周游紀行』の作者、その人である。また、林達夫とともに、アンリ・ファーブルの『昆虫記』を翻訳した人としても知られている。
ファーブルの『昆虫記』の翻訳といえば大杉栄。きだと大杉の接点はあったのだろうか。フランスで師事したマルセル・モースの仕事は、きだの村落観察記にどう継承されたのか。いろいろと興味は尽きない。
日本生れフランス育ちを自認するきだみのるの生涯と言説の全貌!!きだが生きた20世紀の日本は「国家と戦争」の、「集団妄想と狂熱」の、つまり「精神的狭隘と自閉」の時代であった。しかし彼は当時の集団意識には同調せず、自由に自らの目で共同体の核心を凝視し、論理的に思索してその幻想性を書き綴った。彼の記述は飽くまで明晰で、胸の中を風が吹き抜けるように心地好い。しかも、経済の効率性にのみ導かれる妄想情報化社会を生きるわれわれに確実な指針、ミニマルに思考し確かに生きるセンスを教えてくれる。
目次
prologue
飽和と蕩尽―自由であるためのフィールド
キールン・函館・東京―旅の装備
第1部 マラケッシュまで
パリ・ラバ―異空間への誘い
大西洋の町々―統治のかたち ほか
intermezzo モースの教室から
モース教室の日本人学生
ミカドの聖性と古代ギリシア ほか
第2部 村へ
深層の日本へ
ミニマルな生のあり方 ほか
epilogue 小説のきだみのる
描かれたムラ八分神木の
伐採、入り乱れる欲望 ほか
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