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旧ソビエト連邦は、チェルノブイリ原発事故を隠蔽し、事故現場の写真、動画撮影を厳しく禁じた。したがって、事故や住民避難の記録は、ほとんど残っていない。
しかし、事故により、故郷や、自らか肉親、配偶者の命を奪われた者たちの声は、本書をとおして永遠に残り続ける。
未曾有の人災にみまわれた市井の人々の声の数々が、呪詛のように響き合う。
一九八六年四月二六日午前一時二三分、その事故は起こった。人間の想像力をこえる巨大な惨事に遭遇した人びと。彼らの語る個人的な体験、苦悩をとおして放たれる切なる声と願いを、作家は被災地での丹念な取材により書きとめる。消防士の夫を看取る妻、事故処理にあたる兵士、動物を処分する猟師、汚染地に留まりつづける老婆、戦火を逃れてきた難民、そして子どもたち―。歴史からこぼれ落ちた小さな声の数々が響きあい、未来の物語がつむがれる。旧版より大幅な増補改訂が施された完全版。ノーベル文学賞受賞(2015年)、全米批評家協会賞受賞(2005年)。
目次
孤独な人間の声
見落とされた歴史、そしてなぜチェルノブイリはわたしたちの世界像に疑いをおこさせるのか―自分自身へのインタビュー
第1章 死せるものたちの大地
第2章 創造の冠
第3章 悲嘆に心うたれる
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