
一応、自分の守備範囲ということもあって、貧困問題、とくに女性のそれについて書かれた著作にはできるだけ目をとおすことにしているのだが、筆者の水無田さんもさいごにことわっているとおり、本書で取り上げられている女性たちは、まだ恵まれている方である。いまいち、「貧困」のリアルが読む者に伝わってこない。
それから、参照されている統計データが既知のものばかりで、その点も不満が残った。ただ、日本の女性には、人生の選択肢が限られており、それも「消極的自己決定」に偏っているとの指摘については、そのとおりだろうな、と思った。日本の女性は、結婚する/しない、子を産む/産まない、仕事を継続する/しない、といった意思決定における自由度が著しく低い。そのことが極端な晩婚化、非婚化、低出生率につながっていることは、まちがいない。未婚のシングルマザーを肯定的に取り上げているのも評価できる点だ。
「女性の貧困」リスクについて、まだ基礎的な知識さえ得ていないという人には、読みやすいこともあり、良いかもしれない。
目次
第1章 シングルマザーの貧困問題
第2章 離婚貧国・日本―豊かな国の貧しい社会政策
第3章 近代家族の矛盾
第4章 シングルマザーの「時間貧困」
第5章 選択的未婚の母
第6章 根強い日本の文化規範
現代日本の社会制度は、戦後の高度経済成長期に普及した「標準家族」像によって設計されており、そこから外れてしまったものたちには険しい壁が待ち構えている。「家族」から抜け出し「シングルマザー」となつた6人の実例から、ここに凝縮される日本の社会保障制度、雇用慣行、家庭生活それぞれの抱えている問題をあぶりだす。
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