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スウェーデン・モデル、日本はスウェーデンになるべきか

 スウェーデンが、デンマークとならんで、社会民主主義福祉国家の最優等生として注目されるようになって、すでに久しい。
 『スウェーデン・モデル』、『日本はスウェーデンになるべきか』は、この特異な福祉国家の成り立ちを明解に素描している。
 ジャレド・ダイアモンドがその著、『危機と人類』で詳説したとおり、隣国、フィンランドはソ連に軍事侵攻され、ノルウェーとデンマークは、ナチス・ドイツに占領された。スウェーデンは、フィンランドを見殺しにし、ノルウェーに侵攻するドイツ軍に自らの領土の通行を許している。ナチスが有利なときにはノルウェー侵攻を黙認し、連合軍が有利となるや手のひらを反す。驚くべき現実主義だが、スウェーデンという国が、自らの地政学的優位を生かしながら、戦争を回避し自国民の損害を防いだことは、特筆すべきことだろう。
 1930年代の「国民の家」構想を基盤とした、1950-60年代の高福祉国家化、また、それ以降の女性の労働力化と積極的な移民、難民の受け入れ、国連PKO活動への軍の派遣等、「冷酷な実利主義国」としての汚名はすっかり払拭されたようである。
 スウェーデンは、コロナ禍については初動を誤ったが、実利主義に徹した超管理国家として、どうこの局面を打開していくのか、興味津々である。


岡澤憲芙・斉藤弥生編著,2016,スウェーデン・モデル──グローバリゼーション・揺らぎ・挑戦,彩流社.(12.24.2020)

二〇〇年間戦争を起こしていない北欧の福祉国家が到達した「スウェーデン・モデル」はユニークな政策解決技法として、また独特の社会建設技法として注目を浴びてきた。日本がいずれ直面するであろう政策課題を考えるとき、貴重なヒントを提供してくれるであろう。「女性問題」「高齢者問題」「移民問題」をはじめ、グローバル化が加速するなか、いくつものハードルに揺らぎ、そして困難を乗り越えるために挑戦している好奇心が強く、旺盛な冒険精神に満ちた“実験国家”の実態とは?


高岡望,2011,日本はスウェーデンになるべきか,PHP研究所.(12.24.2020)

リーマン・ショックは市場機能重視の「小さな政府」に暗い影を落とし、深刻化したギリシャ危機は「大きな政府」の問題点を露呈した。では、日本はどうするのか?万能薬とはなりえないが、一つの答えが「スウェーデン・モデル」である。同じ大きな政府の中でも、この国の財政は健全で、「世界トップクラスの所得・国際競争力」を誇り、年金・医療・雇用・税制にも個性的な政策が並ぶ。今、決定的に重要なのは、日本との立場の違いを明確にした上で、スウェーデンという国を深く多面的に理解することなのだ。

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