かなり専門性の高い議論が展開されている。
「障がい」における医学モデルから社会モデルへの転換は、スローガンや理念としては頻回に語られてきたが、本書は、自閉スペクトラム症の当事者研究を媒介として、生得的な「しょうがい」(impairment)と環境要因の障害(disability)の境界、交錯を論じる。
印象深かったのは、わたしたちは、たとえば、「自閉スペクトラム症」というカテゴリーで当事者を把握しようとするが、その態様は当事者ひとりひとり異なるという考えてみれば当たり前の指摘であった。
他者の、そして自らの生きづらさの根源にあるものを、虚心坦懐に把握しようとすること、そこにしか「障害」克服の方途はないことを再認識した。
当事者研究とは、自分と似た仲間との共同研究を通じて、等身大の“わたし”を発見すること、そして、そんな自分を受け容れるものへと社会を変化させることを通じて、回復へと導く実践である。当事者研究の誕生の背景と方法論を紹介し、自閉スペクトラム症研究を例として、知識や支援法の共同創造が始まりつつある現状を報告する。
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