「見舞いにぐらい来たらどうだい。」
父の声はいつも大きい。
「『出て行け』と 言った人のお見舞いに、『出て行け』と言われた人が、
どんな顔して 行ったらいいの?」
「お父さん、『ぢ』の入院はこれで何回目だか 解らないくらいだし。
『出て行け』と 言われる前は、そのたびに お見舞いに行っていたし。」
「だいたい、私達夫婦が 何 悪い事したの?」
「どんな悪い事したから『出て行け』と言われなきゃならないの?」
「お父さんは、自分の自転車を玄関の中に、ワザワザ 入り口を塞ぐ様に 横にして停めて居たじゃない。
あとから、夫くんが帰ってくるのを 知っていながら、
イヤガラセをするみたいに。入り口を塞ぐ様に 停めて居たじゃない。」
ズーと沈黙していた父は、パチパチパチと手を叩いた。
「ヤンヤ!ヤンヤ!」パチパチパチ
「名台詞!」パチパチパチ
「大女優が!」パチパチパチ
「名演技!」パチパチパチ
「泣いて!わめいて!」パチパチパチ
「大熱演!」パチパチパチ
私は居たたまれなくなってしまって、
部屋を出た。続くヤンヤ!ヤンヤ!の声を、背にあびながら…
┐(´д`)┌ヤレヤレ