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おばあちゃん?
急に動かんようになってどしたん?急に黙り込んでもて。
「ひでくん、ひでくん」ていっつもみたいに呼んでよ。
もう無理なんかな?それが現実なんやね。
仕事から帰ってきて、ちちんぷいぷいを見ながら、いろいろ喋りながら、時にはスヤスヤ寝ながら、あの当たり前のようだった、おばあちゃんとの他愛のない日常は、もうやってこんのやね。
そんな現実、今すぐに受け入れるんは俺には無理やわ。
半日会わなかっただけで、
「ひでくん、久しぶりやな〜。」
って、言ってくるおばあちゃん。
あれは決してボケていた訳じゃないよね。
俺と会わない時間、そんなに長く感じていたんやね。
そりゃ一日会わんかったら、家においてある昭和時代の黒電話から、俺の携帯電話に着信が入っているのも分かるわ。
おばあちゃんも少しねくらなところがあるから、一見感情や思いを、なかなか表にださんけど、俺のこと大好きやっていう雰囲気はすぐに見抜ける。
28歳の男がなにしとんねや、ありえへん!って他の人からみたら思われるとおもうけど、一つの布団で一緒にねたり、おばあちゃんのほっぺたに、キスをしたり、そんな行動は俺には当たり前すぎた。
「きたなー!やめなさいー!」って言ってたけど、顔はニヤニヤしてたよ。
もうすぐ地元で結婚式挙げるから、全身の痛みはあると思うけど、俺の晴れ姿、たとえ5分でも、10分でもいいから見てよ、それみたら送ってもらって帰ってもいいからさ、って約束、もう守ってくれないんだよね?
五月からもう一回車のるから、一緒に買い物行ったり、公園散歩しよなって約束も、もう守ってくれないんだよね?
ちょっと残酷、、、いや、すっげー残酷、、、
俺が薬漬けになって、生と死の狭間にいるときに救ってくれたお父さん、おばあちゃん。
二人が、「ひでくん、お前だけずるいぞ。」
って嫉妬するような生き方、これからするからさ、見ててよ。
おばあちゃん、あっちの世界に行ったら、お父さんに出会うとおもうから、
「あんた、母親の私より先に旅発って、なにしとんねや!」
って、一喝入れるんやで。
「ごめん、ごめん。」ってお父さんは言うと思うから、久しぶりに他愛のない親子話で盛り上がってよ。
ちょっとってか、ありえんくらい寂しいけど、俺の記憶に刻まれている、1ページ1ページ、1日1日は、この先死ぬまで、俺の中から消えることはありません。
ああー、最後にもう一回だけ話し、したかったなぁ。そんなん言ってたらきりがないよね。
、、、でも、ありがとう。
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