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子どもに「ありがとう」を無理やり言わせる保育

2023-10-14 18:00:00 | 保育
保育者が子どもに物を渡したり、何かをやってあげたりしたときに子どもが「ありがとう」と言わないと、何度も「はい!」と言ったり「何て言うの?」と声を掛ける保育者を目にする。

もちろん、子どもが「ありがとう」と言うことは大事である。
ただ、保育者が無理やり子どもに言わせる「ありがとう」に意味があるのだろうか。

子ども同士のやり取りや別の保育者とのやり取りの上で、保育者が第三者の立場にあるときには、こっそりと「ありがとう」を伝える場面であることを教えることは、その子どもにとってもプラスになるのではと思う。
しかし、保育者が言われる側にも関わらず、子どもに「ありがとう」と無理やり言わせるのは不可解であり、その場面を見ると不愉快に感じる。
子ども自身もその場面において、引っ掛かっているような表情を浮かべていることが多いのではと思う。

また、子どもの「ありがとう」に対して無反応な保育者も目にする。
クラス全員に配り物をする場面において、一人ひとりに渡す際に子どもの「ありがとう」を求めるものの、その「ありがとう」にはスルーをして、言えた瞬間に次の子どもに渡しに行く。
子どもの気持ちや、もっと言えば人権も無視されているのではないだろうか。

昨今の保育業界において、子どもの人権の問題は大変重要視されているが、人権とは何か?熟考する保育者がどれだけいるだろうか?
そこまで熟考するためのモチベーションを保てる保育者がどれだけいるだろうか?
人権の話や保育者のモチベーションの話は奥が深すぎるので、また次回以降に触れていくとしよう。

本題に戻ると、どうしたら子どもたちは「ありがとう」と自ら話すようになるのだろうか?私の考えは大きく次の3つではないかと思う。

まず第一に、保育者が子どもや保護者、同僚の保育者などに対して、笑顔で「ありがとう」と話すことである。
子どもは我々大人や保育者の言動をよく見ている。
どんな場面において、どのようにして「ありがとう」と話しているのだろうか?子どもに言葉で伝えるだけでなく、言動で、背中で示していくことは大変重要であると考える。

次の第二に、子どもの「ありがとう」に対してしっかりとレスポンスすることである。
レスポンスをすることで子どもの言動を認めることとなり、子どもの承認欲求を満たすこととなる。
子どもの成長において、承認欲求を満たすことは言うまでもなく大変重要である。

また、子どもにとっては「ありがとう」と話すことに緊張や葛藤の上にある子どももいるであろう。
レスポンスをすることによって、その気持ちを受け止め、認めることにもなってくるであろう。

さらには、子どもにとって友だちが「ありがとう」と言い、保育者がそれに対してレスポンスする姿を見て、自分も言ってみようと思い、感化されることも考えられる。
「ありがとう」に限らず言えることであるが、子どもの発信や言動にしっかりとレスポンスし、気持ちを汲み取っていきたいと思う。

そして第三に、子ども自身が自ら「ありがとう」と話すことを待つことである。
子どもの発信や言動を待つことができない保育者を大変よく目にする。
保育者が子どもに指示したり、一方的に話すことはコミュニケーションとは言い難い。
先述したとおり、子どもにとっての「ありがとう」は緊張や葛藤の上にあるため、子どもなりのタイミングがあるであろう。
そのタイミングや葛藤を待つことは、保育者にとって大事であるが、そのことに気づく保育者は少ないと感じる。
タイミングを待つことも「ありがとう」に限らず、子どもが発信や言動する行為の全てにおいて言えることである。

保育者は目まぐるしく過ぎていく日々の中で、なかなか保育の奥深く考えていく時間もメンタルもモチベーションも組み立てていくのは難しいのが現状であると考える。

「子どもを大人の都合のいいように育ててはならない」と、私が担任を担っていた頃の園長がよく口にしていた。
子どもに"言わせる"のではなく、"引き出す"ような保育ができるよう心掛けていきたい。


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