Good toy Time2

おもちゃ選び、子どもとのかかわり方、保育に困った時、ちょっとのぞいてみてください。

【クーゲルバーン】 おもちゃ作家の想い

2019-12-21 00:22:51 | 日記
今日は、私のお気に入りである、「クーゲルバーン」という木のおもちゃをご紹介します。おもちゃが入っているパッケージには、ドイツ語でクーゲルバーンと書かれていますが、日本ではシロフォン付玉の塔という名称で知られていることが多いです。ベックさんというおもちゃ作家が50年以上前に作った、ロングセラー商品です。

★クーゲルバーン(シロフォン付き玉の塔)★



木でできたスロープの上にある穴から、付属品の小さな玉を入れると、その玉がスロープを落ち、下にあるシロフォン(鉄琴)にあたり、ソファミレドという音が鳴る仕組みになっています。対象年齢は3歳以上で販売されています。

このおもちゃのすばらしいところは、小さな子どもが万が一、玉を口に入れてしまったとしても大丈夫なように作られていることです。人体に影響のない素材で作られています。舐めても安全な塗料、口に入れて安全な素材でできており、最後は排泄物と一緒に出てくるようになっています。そのため、ひとつひとつの玉を手作りしているので、玉の形がちょっといびつな丸になっていることも特徴のひとつです。もちろん、口にしないことが一番ですが、万が一の場合に備えた配慮がなされているという点において、良質なおもちゃだと思います。



先日のブログで、「おもちゃの箱に書かれた対象年齢はあくまでも目安」とお話したのですが、おもちゃの種類によっては、細かいパーツでできているものなどは、何でも口に入れて確かめるといった発達段階の乳児に与えるかどうか、安全面に十分配慮して与えることが重要です。そう考えると、こうした乳幼児期の発達をよく理解したうえで、食べ物と遊ぶものの認識ができるであろう年齢の子どもを対象としている理由もよくわかります。

また、このおもちゃには、3歳以上の子どもを対象として考えられた理由がもうひとつあります。それは、何歳になっても同じおもちゃでたくさん遊んで欲しい、いろいろな遊び方を子ども自身が考えて欲しいといったベックさんの願いを理解出来るようになる年齢だということです。
実はこのおもちゃには、小さな玉に紛れて1つだけ赤くて大きな玉が入っています。おもちゃの広場でも、保護者の方から「間違って入ってしまったのですか?うちの子が他のおもちゃの部品を持ってきてしまったのかもしれません・・・。」などと言われ、心配されることがあるのですが・・・。



実は、赤い玉は
あえて入っているのです!

この玉の使い方がわかるようになるであろう年齢が、3歳以上なのではないか?というおもちゃ作家の意図が込められています。

子どもは繰り返しが大好き。上の穴から入れた玉が、スロープを通ってシロフォンにあたり音がなる。この遊びを繰り返し、同じ場所に同じものが返ってくる安心感を感じることで、このおもちゃを好きになります。しかし、こうしたことを繰り返しているうちに、年齢を重ねるごとにただひとつひとつ玉を入れているだけでは遊びが物足りなくなってくるのです。
スピードをあげて次々に玉を入れてみる、音が途切れないように入れ続けるなど、袋に入っている玉をたくさん使い、いろいろな遊び方をするようになります。そしてある時、気づくのです。

「あれ?この赤い大きな玉は、穴に入らないな。」と。



あれこれ試行錯誤しながら大きな赤い玉をスロープの途中に置くと、そのあといくつかの玉を転がし、せき止められることに気づきます。そして、ある程度の玉が並んだところで、赤い玉をとると、複数の玉がシロフォンを一度に通り、綺麗な音が連続して流れることに気づきます。



こうした遊び方を、大人が教えるのではなく、子どもが自ら繰り返し遊ぶ中で気づいて欲しい。ベックさんにはそんな思いがありました。だから、あえて大きさの違う玉がひとつだけ入っているのです。

この話をおもちゃの広場ですると、大人が率先して実践されます。「ほら、こうやって遊ぶと楽しいみたいだよ!」と。おもちゃの広場では、おもちゃをいろいろな方法で遊ぶヒントを伝えるのが私の役割だと思うので、それでいいのだと思います。しかし、家庭で遊ぶ際はぜひ、子どもが自分で気がつくまで、いろいろな遊び方をするそのプロセスを温かく見守っていただきたいなと思います。

何でも大人が手出しをして教えることは簡単です。しかし、子どもが試行錯誤をしながら失敗も経験し、新しい遊びを作り出していくこと、それが今の幼児教育で言われている、「遊びは学び」ということなのです。遊びの中で試行錯誤しながら自分で新しい遊びを考え出すこと。そのプロセスこそが、長い目で考えると、クリエイティブな感性を育てていくことにつながっていくのだと思います。

【スーパーアクロバット1】 子どもが始めた小さなことに目をとめて

2019-12-19 00:21:59 | 日記
赤ちゃんにおもちゃ箱を渡すと、おもちゃよりも箱に興味を示すことがあります。その箱を持ったり、叩いたりすることで、モノとの出会いを楽しんでいるのです。おもちゃの広場でもよく見かける光景です。

おもちゃの広場の開催を知らせる際は、地元の広報誌の中で、「良質な木のおもちゃに出会えます」と宣伝をしてくださるため、訪れる保護者の方は、普段なかなか遊ぶことができない、めずらしい木のおもちゃを我が子に遊ばせようと手にされる方が多くいます。

しかし実際は、大人が意図した遊び方ではないことを子どもが始めることのほうが多く、その大半は遊び方を修正されてしまうのです。このような光景を見るたびに、「子どもがはじめた小さなことに目をとめて。」という言葉を思い出します。この言葉は、保育学の研究者である津守真先生が、「保育者の地平」という著書の中で書かれた言葉です。

「子どもがはじめた小さなことに目をとめて、それに答える保育者となるように。」

「子どもの行動は表現の表れである。その表現は、答える人があって初めて意味を持つ。」

乳児の行動は、時に大人には理解不能だったり、迷惑な行為として認識されるかもしれません。しかし、そのような行動を大人がどう受け止めてかかわるかが大事なのではないでしょうか。そしてその際は、できるだけ肯定的に受け止めることが大切です。

以前、「スーパーアクロバット」というおもちゃで甥っ子と遊ぼうと思ったことがありました。

★スーパーアクロバット★



つなげて遊ぶ人型ブロック。人の形をしているため、オブジェにドラマ性が生まれます。協力して輪を持つ姿や逆立ち姿など、まるで組体操をしているかのよう。プラスチック製で頑丈なうえパーツが大きいので、小さい子どもでも遊べます。お片付けに便利なバケツ入り。

しかし、甥っ子くん。スーパーアクロバット本体にはまるで興味を示さず、フタを開けた瞬間、手に持ち、まずは振る、床を叩く、コマのように回すなど、フタに興味を示しました。(小さなころからいろいろなものを回転させることが好きな子!手指の発達には良いかも??)

しばらくフタとの出会いを楽しんだあと(笑)、フタを手に持ち、ハンドルのような操作をしていました。そこで私が、「おおがたバスにのってます〜♪」で始まるバスごっこという曲を横で歌うと、リズムに合わせてノリノリでハンドルを動かしてくれました。

このフタだけでだいぶ遊びました.。本体いらなかったのでは??
(笑)



大人から見たら、「えっ?これが?」と思う小さなフタひとつでも、子どもにとっては何かイメージすることがあるのです。

大人の価値観で子どもの行動の意味を決めつけないよう、子どもがはじめた小さなことに目をとめて、それに答える人でありたいと思います。

【チャイルドビジョン】 子どもの目線

2019-12-16 00:11:06 | 日記
今日は雨ですね。雨の日に通勤をしていると、気になることがあります。それは、閉じた傘を手に持ちながら、前後に大きく揺らしてあるく大人の姿です。保育園や幼稚園に行く前の子どもたちが近くにいると、傘の先が子どもの顔に当たらないかとヒヤヒヤしてしまいます。

子どもは背が低いだけでなく、視野・視界が大人が思っている以上に狭いため、近くにあるものの全体像が見えていないことが多く、こうした場面では大人の足しか見えていない状態で歩いているところを、突然、細長い傘の先だけがゆらゆらと見えるのです。

2歳前後の子どものモノの取り合いが多い理由も、実はこの視野・視界と関係があります。自我が芽生える時期でもあるため、子ども同士の気持ちのすれ違いや、自分の思うようにいかない葛藤なども関係してくるのですが・・・。

友達が使っているものを急にとってしまうという場面をおもちゃの広場でもよく見かけますが、それは単にその子がワガママだからなのではなく、自分がほしいもの、気になったことしか目に入らないという、視野・視界の狭さとも関係があるのです。

子どもの横から声をかけると気がつかないという時は、正面から覗き込むようにして声をかけてみると、気がつくこともあると思います。

乳幼児の視野が体験できる、「チャイルドビジョン」という視野体験メガネがあります。今は無料でダウンロードができるサイトも多くありますので、ぜひ、作ってみてください。そして、作ったあとは子どもの目の高さになって、その視野・視界の狭さを体験してみていただきたいなと思います。

チャイルドビジョンは、誰でも簡単に作れます!
※下記の型紙をダウンロードし、黄色い原紙を黒の画用紙に貼り付けて使用するのがオススメです。(コピー用紙では素材が弱くて自立しないため。)

<参考URL>
https://kosodate.pref.yamagata.jp/wp-content/uploads/2019/07/childvision.pdf

【スフィアボール】 子どものイメージ

2019-12-15 23:48:38 | 日記
先日、甥っ子Kくん(1歳8ヶ月)とスフィアボールというおもちゃで遊びました。

★スフィアボール★

小さいボールが一瞬で大きくなる!マジックのように楽しくユニーク。アメリカでは優秀なトイの大賞や金賞に選ばれています。ミニスフィアは立方体と八面体が交差し合い多面体が出来上がり、それを「総体多面体」と呼んだものです。パーティルームのデコレーションにも。天井や椅子から吊るしてみると、部屋の中心的存在に。3つ揃えてジャグリング!外でみんなでキャッチボール!
赤い部分を持って広げたり閉じたりしながら、ボールの大きさを変えて遊ぶおもちゃです。

閉じているところ⇩


広げたところ⇩


まずはKくんの目の前でボールを広げてみました。
すると、私がボールを少しずつ大きくしていく動きに合わせ、前かがみになりながら…

「ず、ず、ず、ず、」と言葉を発していました! 効果音??(笑)

なんだ?なんだ?と思いながら、その言葉に合わせてボールを大きくし、私も一緒にその大きさのイメージに合わせて声をだんだん大きくしてみたところ、Kくん大興奮!!

最後、一番大きくなったところで、

ズーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!

と叫びながら、小さな両手を上にあげていました。まるで、トトロのワンシーンのようでした(笑)

その後、今度は小さくなる時には小さな声で…と試してみたら、これまた大興奮。最後、ボールが閉じる時には、正座のような格好で床に顔がつくまでかがんでいました(笑)

さらにその後、手を叩いたり、足をドンと鳴らしたり…。どうやったらこのボールが動くのか、まるで確かめているようでした。でも、何度か繰り返し遊んでいるうちに、気がつくと私の顔を見ながらそれを確かめていることがわかって…。

試していたのは、おもちゃに対する反応ではなく、おもちゃを動かしている私の反応だったのですね。こうして考えてみると、やっぱりおもちゃはそこにかかわる人そのものが遊びを豊かにしていくのだと感じます。

このスフィアボール、おもちゃの広場でも取り合いが起きるほど大人気!!

小さな兄弟と遊びにきてくれたAちゃん。私が持っていたスフィアボールを見せながら、「今からまほうをかけるから見ててね。1・2・3!」とボールを大きくする様子をママの近くでじーっと見ていました。その後、しばらくしてからスフィアボールを手に取り、赤ちゃんコーナーへ・・・。

「見ててね。今からまほうをかけるから。」と、かわいいふたごちゃんに、はりきって説明をしてくれました。



おねえさん、どんなまほうをかけてくれるのかなぁ…。じっと見つめるふたごちゃんたちがかわいい。

「ちちんぷいぷい、1.2.3!!」

おねえさんがまほうをかけると、ボールが大きくなりました。大きくなったスフィアボールを、はいはいの姿勢をくずさぬまま、しばらくじーっと見つめ、しばし固まるふたごちゃんたち…。その後、次はどこにいこうかな~と、再びはいはいの旅に出かけたのでした(笑)

他にも、こんな風に中に入ることもできちゃいます!



外で遊ぶ時は、空に向かって投げると、空中でパッと大きく開き、地面に落ちる時にバウンドをしながら小さくなる・・・という遊び方もできます。

言葉がなければ、ただの伸び縮みするボールですが、ボールの変化に合わせて言葉かけをかえるだけでとっても楽しいボールに大変身!!魔法遣いになったり、中に入ってみたり・・・。子どもたちは、いろいろな遊び方をしていました。

遊びを豊かにするのは言葉かけ♪一人ひとりの興味にあった言葉をかけていきたいものです。


【ビーハイブ】 おもちゃの広場で大切にしていること

2019-12-14 23:31:32 | 日記
おもちゃの広場を開催して間もない頃。2歳くらいのかわいい女の子(Aちゃん)とママが遊びに来てくれました。窓に飾られたビーハイブというおもちゃを見たママが、「どのように遊ぶのですか?何歳くらいの子どもが遊べるおもちゃですか?」と興味を持たれていたので、まずは基本の遊び方をお伝えしました。

これが、ビーハイブです。「プラントイ」という会社から出ています。



ビーハイブは、カラフルな6種類のハチの巣の中に同じ色のハチをピンセットで返してあげる木のおもちゃです。(対象年齢3歳頃)小さなお子さんはピンセットを使うことが難しいかもしれないので自由に遊んでくださいね。

説明を聞いたママは、「赤いハチさんを赤いおうちに入れてごらん。」「赤はどれかな?違うわよ、それは黄色でしょ?」と言いながら、Aちゃんに声をかけました。しかし、Aちゃんは黄色のハチを手に取るとポケットに入れたのです!その他の色のハチさんたちも次々にポケットに入れ始めました。そしてそのまま、にこにこしながらままごとコーナーへ…。

その姿を見たママは、「本当にすみません、こんな風に遊ぶものではないのに…。」と申し訳なさそうに言ってくださいました。そこで私は、「この広場ではどのように遊んでも大丈夫ですよ。」とお答えし、2人でAちゃんの遊びを見守ることにしました。

すると、ままごとコーナーに着いたAちゃんは、ポケットに入っていた6ぴきのハチさんをフライパンに投入し、近くにあったフライ返しで炒め始めたのです(笑)フライパンの上で、カラカラと良い音で炒められる6ぴきのハチさんたち...。なんだかとてもうれしそうに見えました。

しばらくすると、Aちゃんはハチさんをお皿に入れて、ママのところに持ってきてくれました。

「はい、どうぞ!」

私とママは思わず顔を見合わせて笑ってしまいました。ハチ炒め、いただきます!笑

おもちゃには、「こんな風に遊んでほしいな。」という作家の思いが込められています。そして、その遊び方ができる年齢が、対象年齢としておもちゃの入った箱に記載されるのです。

しかし、それはあくまでも「おもちゃ作家が考えた遊び方のできる、おおよその年齢」であり、その年齢に達していない子どもが遊んではいけないわけではありません。一人ひとりの子どもによって、遊び方が違ってもいいのです。

その時、想い描いたイメージを、制限されることなく、時間の許す限り自由にたのしんでほしい。おもちゃの広場を開催する時、私が大切にしていることです。