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>先住猫がナウシカの巨人兵さながら口から火を噴き怒り心頭であったとしても、レトラはまったく元気に、キョトン顔しておりまして、、昨夜などは、二階に置いてあった、つかいかけの猫砂を階下までぶちまけて階段一面に猫砂が敷かれてしまいました。
レトラのキョトン顔。右目は金色。左は黒。
右目の金色は明け方の太陽が輝く希望の朝、家族がおはようと朝ごはんを食べて、いってきますと外に飛び出す躍動感のある一日のはじまり。
左目の黒は、夜中の三時にふと目覚めてしまって凍りつく、漆黒の空気の色。そこには心細さと闇に潜む何かの気配の怖さと、そして本当に明日がくるのかという焦燥感がある。
レトラの左目のくぼんだ暗さに、娘は黒曜石を見たけれども、私は、しばらくその暗さになれずに、レトラがやってきた夏の終わりからずっと、その黒目を見る度に心がざわついていました。
しかし、やはりふっと目が覚めた夜中の、まとわりつく闇のなかで、もしかしたら、レトラは、その左目の金色をどこかに置いて生まれたのかもしれない。あるいは誰かに与えて生まれてきたのかもしれないと思いました。
オスカー・ワイルドの「幸福の王子」のように、自分の片目を誰かに与えてこちら側にやってきたのかもしれない。そうふとおもっいたった瞬間、それはまさに夜中ならではの時間だったからでしょうが、なぜだか遠い昔にわたしこそが金色をもらって助けられたようなような、どこかでその金色をもらって喜んでいる人がいるような、そんな救われた気持ちでいっぱいになり、感謝しながら寝付いたのでした。
だから、次の日からレトラは「幸福の王子」くんとわたしの中で密かに命名され、あんなに怖かった黒目の闇が、ようよく黒曜石のように輝いて見え、このブログでの題名となったのです。
しかし娘はこの母親の回りくどい思いをすっ飛ばして、レトラの目に黒い宝石を見ていたか?
ところで、レトラは、いったい誰に自分の左目を与えたのでしょうか。そのときはどんな物語があったのでしょうか。
高くて青くて凍える空を見上げながら、そんなことを考え考え、、今日も仕事にでかけましょうか。
しかし、王子(レトラ)の傍らで、あれこれと現実を教えて議論しながらも王子を信頼し最後は王子とともに死んでいった、つばめはいったいだれだったのか。
私たちは、自分に痛みをもってでも誰かに大切なものを与えられるのか。
私はどうよ?
「幸福の王子」(要約) 作:オスカー・ワイルド
幸せいっぱいに育った王子が死んでしまい、王様は王子の像を町の真ん中に作りました。
その両目には青いサファイア、腰の剣には真っ赤なルビーがはめ込まれ、体は金色に輝いている美しい王子の像は町の人々の自慢でした。
そこにやって来た一羽のツバメが王子の足元に羽を休めると、雨も降っていないのに、水滴が落ちてきます。
それは、像の王子が流した大粒の涙でした。
「どうして泣いているんですか」とツバメがたずねると、「あそこに可愛そうな婦人がいる。病気の子供を助けようとしているが、川の水しか与えられるものが無くてとても悲しんでいる。どうか、この剣のルビーをあの婦人に届けてくれないか」と。
ツバメがルビーを届けると、今度は両目のサファイアを、貧しい劇作家と幼いマッチ売りの少女にと・・。
「そんなことをしたら、あなたは何も見えなくなってしまいます。」
でも、ツバメは王子の強い願いを聞き入れ、目の見えなくなった王子にいろいろな話を聞かせます。
その度に王子は、自分の体を覆う純金をはがして持って行って欲しいと頼みました。
やがて冬になり、みすぼらしい姿になった王子の傍でツバメも弱ってきました。
ツバメは最後の力をふりしぼって王子にキスをすると、その足元に落ちて死んでしまいます。
町の人たちは、王子の像がみすぼらしくなったのを見て、こんなものはおいて置けないと壊してしまいます。
最後に、溶鉱炉で溶け残った王子の鉛の心臓は、死んだツバメと一緒にゴミ溜めに捨てられてしまいました。
しかし、天の神様は見ていました。
「町の中で最も貴いものを二つ持ってきなさい」と天使の一人に命じ、王子の心臓とツバメを天に引き上げるのでした。(岸波さん要約参照、岸波通信ナビゲーションのそれを読んでますます好きに。ぜひ参照されたし。)
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