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愛する猫の死を待つということは
まるで、
誰もいない駅のベンチで猫を抱いて、
いつ来るともわからない列車を待っているかのようだ。
猫が乗っていってしまう列車を。
暗闇から音もなく現れる列車を、冷たい風が吹き抜けていくホームで、ただ、待つ。
大好きな猫が私をおいて、乗っていってしまう列車を。
もう、まもなく。いや、まだしばらくある。まだ、こない。もう、くる。こない、まだ。
寒い、つかれた、
ひざで丸くなっている猫を抱く。
わたしは、ほんとうにくたくただ。この駅に来るまでに本当につかれてしまって、なにも考えられない、でも、きてほしくない列車を今か、今かと待っている。
やがて、
かすれた汽笛とともに、列車がホームにゆっくりとすべりこんできた。
来てしまった列車。
ドアがあき、
ひざの上でまるくなっていた猫が、ゆっくり顔をあげると起き上がりぱたんと飛び降りて、すたすたとドアの向こうに歩いていく。列車に乗り込み、ドアがゆっくりと閉まる前に、こちらをふりむく。百万回みなれた、あの子のすましたかわいい顔が
そしてドアが閉まる。
列車がゆっくりと動きはじめ、やがて暗闇に消えていく。
駅には、わたし独り。
もう、いない、あの子が
暗い深い穴に落ちていくような脱力間と抱えきれない喪失感で
駅で、ただ、たちつくす