曲がりくねった山道を抜け,視界が広がるとそこは一面の海
押し寄せる波には勢いがあり,群青色の海と鉛色の空模様が相まって,よりいっそう冬らしさを感じた
朝から随分風が落ち着き,今日はどの程度波が立っているかを心配していた一同からは安堵の声が漏れた
サラシ打ちを狙いとしているために,肝心の波がなければ勝負にならないためである
天気予報で何度も確認していたが,やはり実際に海況を見ないことには安心ができない
車内から海面を跳ねる兎を目にし,否が応でも期待に胸が膨らんでしまう
現地に着き,落ち着いて準備をしながら冷静を装う3人は,すぐにでもテトラに飛び乗りたい気持ちであった
タックルを片手にしながら堤防に立ち,海原を一瞥すると遥か彼方に鳥山が目に入った
破顔したN氏が声を上げて,今日の釣果の確信を告げた
サラシがあってもそこに餌となるベイトが入らないことには目的とする魚が釣れない
また,風の向きと強さも釣果に直結するファクターとなるため,「釣れる環境」となるためにはいくつかの条件が整っていないと成立しない
さて,適当なテトラを見定め,高所から波の動きを観察する
そして,たまに大波が来ても安全が充分に確保できることを確認してからテトラに乗った
背後からの冷気がテトラ上に立つ自分を包み込んだが,火照った体には心地よいものであった
まずは,サラシを目がけてテトラ際にキャスト
しかし,ルアーが波に翻弄されて思うような動きを見せない
そこで,リトリーブの速さやレンジを変えるなどしてテトラ周辺に潜む大物を引き出そうとした
ひと息つき,遠く左方のテトラに乗るM氏やN氏を見ると,すでに魚を掛けている
焦る気持ちを押さえつつ,次はルアーを正面に投げ,やや高速で寄せて,サラシに入ったところでストップをさせた
にわかに衝撃が伝わった
慌ててロッドを上げて,魚がテトラに潜り込まないようにコントロールする
勝負は一瞬
気を抜くと負けてしまう
強引にリールを巻き,魚を海面に浮かばせようとする
中層から上がってきた魚体が目に入る
白い泡粒が広がる海面を縦横無尽に走り回るエメラルドが見え,青物と確信する
しかも,大物
以前に釣り上げたことのあるガンドよりはるかに大きい
絶対にキャッチしたい
その焦燥からか早いタイミングでネットを海中に入れてしまう
しかし,大物は何度も海中に潜ろうとする
神にも祈る気持ちで格闘していたが
無情にもフックアウト
テトラ上で呆然と立ち尽くす自分を堤防のカモメが嘲笑している
「阿呆,焦りすぎなんだよ」
気を取り直して,再キャスト
正面には沖に戻る流れができており,そこを通すとルアーの良い反応が伝わった
そして,手前でストップさせると,今度は底の方から黒い物体が突き上げるように飛び出してきた
良型のクロダイ
その後も立て続けに釣れた
しかし,M氏とN氏の釣果は凄まじい
M氏は釣り場の状況を見極め,この日にマッチしたルアーを見つけ,良型クロダイを入れ食いのようにものにしていた
サラシの中で漂うカタクチをルアーで絶妙に体現するM氏のテクニックには脱帽である
また,N氏は90センチ近い鰤を釣り,一同を驚かせていた
昼から始めた釣りも,夕方にはバイトが遠のいた
終わってみれば,
3人の釣果であるが,私の釣果は凄腕の2人にはまったく及ばず数匹のみ
大漁とも言っても過言ではないメモリアルな釣果であったが,私には二人から教わったことが何よりも貴重なものとなった
これからもさらなる釣果を目指して,精進したい
Mさん,Nくんありがとう
次は負けませんよ
アジ釣りみたいな釣果ですねw
ツイッターでツイートさせていただきますーw-