傍聴絵日記

@さいたま地裁傍聴席

【求刑】ロゴマークの無断使用(さいたま市)

2018年04月18日 | 刑事事件
平成30年(わ)第169号 

山田 薫(53)

商標法違反

【概要】
米Adobe社のコーポレートマークを無断で使用したソフトウエアの使用マニュアルをヤフオクに出品、販売していたさいたま市在住の(自称)グラフィックデザイナーです

約1年4月間のヤフオク出品期間に爆売れしてなんと360万円程の売り上げがあったと言い、その全額を老後の生活資金として貯蓄してあると述べています
562名と商談したと思しきメールの送受信履歴が有った様ですから、余程魅力的な内容のマニュアルだった様です

にも関わらず被告人は、マニュアルが売れすぎてどんどん口座にお金が入金されて、アドビ社や警察に目をつけられることを恐れて出品をやめたと言いますが、オークション出品に使用していたアカウントをヤフーから利用停止処分を受けても、別なアカウントを再取得して出品を継続していた様ですから強固な犯意に基づく悪質な犯行と評価されざるを得ませんね
アドビ社のエンジニアがデザイナーの使い勝手を考えて、日夜改良や機能追加した苦労の結晶(ソフトウエア)になんて事をするのでしょうか

また、購入者に感謝されたので犯行を続けてしまっていたとも述べ弁解していますが、結局は岡山県警のサイバーパトロールで本件の犯行が発覚した模様です

【商標法違反】
被告人が直接ソフトウエアに手を加え改変したり、ソフトウエア自体を盗んだ訳ではない様ですから、件のマニュアルを作成するにあたってAdobe社のコーポレートマークを許可なく転載、使用した商標法違反容疑で起訴された模様です
ですから、マークを無断で使用した罪だけの些細な罪で起訴されています

しかし、被害会社であるアドビシステムズにとっては、本来なら一本数十万円相当のデザイン作業に不可欠なソフトウェアを見ず知らずのオッサン(被告人)が販売した本件のマニュアルによって、貴重な販売機会と売り上げを奪われたのですから当該共犯者(マニュアル購入者)による不正使用に係る被害の責任を被告人が取らねばならないのは言うまでも無いでしょう(損害賠償と刑事罰はあくまでも別物の筈ですから)

また、購入者は知的財産権侵害の共犯とも言えるでしょうから自ら不正使用を申告し難いことを見越した被告人による狡猾な犯行との一面も有しています

被告人質問では、他のヤフオクの出品者の手法を模倣したとか、みんなやっていることだからとか、「赤信号、みんなで渡れば怖くないと思った」などと53歳の被告人は幼稚な言い訳をしていますよ

また、自身がパニック障害で電車通勤が困難だからとか、介護の資格を取得して就職したものの、仕事が辛くて 1日で辞めてしまったとも自身の窮状を殊更声高に主張していますが、いずれも本件の犯罪行為を正当化する理由とは無関係ですよ

【動機と顛末】
自営するグラフィックデザインの仕事による収入が減少していたことから、収入を補填する目的で本件犯行を始めたと言い訳ますが、Adobeにケンカを売ってデザイン業界で生きて行けると考えちゃう能天気さんは現在、以前の取引先から仕事の発注を打ち切られてしまいインスタグラムで他人の猫のイラスト(水彩画)を描いて売っていると言います

【求刑】
懲役1年及び罰金100万円

【弁論】
Adobe社に損害賠償の交渉を400万円でしているので、上述の罰金100万円は不要と弁護人は主張しています(なるほど、アドビ社が提示された損害賠償額で示談に応じるのならばその通りですね)

本来なら数十万円のソフトウエアを多数(メールの送受信先数は562件とも言いますからメールの半数に販売したとしても200を超える共犯者のソフトウエアの不正使用に関与したことになりそうです)の共犯者に不当に廉売しておいて、自身の利得を返上しますから許して呉れとは余りにも虫が良すぎないかい
被告人は本来の被害額、すなわち最低でもAdobe社に与えた損害額(パッケージの正規代金)×(マニュアルの販売数)に見合う金額を補填すべきでしょう

【被害額の算定】
以前はパッケージ販売では購入時の機能は永続的に利用出来る形式で概ね30万円前後で販売されていましたが、現在は期間ライセンスというライセンス料を支払った期間内だけ最新の機能を使用できるという販売方法を取っています
概ね年間ライセンスで6万円程度の様です
仮に以前のパッケージ販売の頃算出方法だとしても30万円×500=1億5千万円、
年間ライセンス6万円×500=3千万円×何年分を被害額として請求するかはアドビ次第
つまり、推定ですが(最大)被害額は桁が2つくらい違いますね
また、マニュアル販売で得た360万円余のあぶく銭も購入者へ返金すべきものと考えますが、どうでしょう

例えるなら、先の弁論は迂闊に特殊詐欺に加担した小僧が数百万円を高齢者から騙し取っておきながら自身の取り分(最近では概ね詐取金額の数パーセントから10パーセント程度が相場の様です)を返上するから堪忍してくださいと言っている様なものですが、どう感じますか?
もしくは、万引き犯が盗品を返すから良いじゃないかと開き直る様を彷彿としてしまうのはわしだけかのう?

【マニュアル】
本来なら、一定期間で使用できなくなる試用版のソフトウェアを永続的に使用できる様にしてしまう方法を解説したマニュアルの様です
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