この方向性は間違っていないはずです。私自身が強くそう思っています」──福井県坂井市 産業環境部 観光産業課長が言葉に力を込めてそう語った。
【本記事の写真を見る】1948年に撮影された東尋坊の航空写真。この写真の発見が再整備の方向性を決定づけた
坂井市三国町の東尋坊。海岸線に断崖絶壁が約1キロメートル続く天下の奇勝である。この日本有数の観光地で、きわめて稀有な、それでいて日本のあらゆる観光地再生のモデルケースになり得る、大規模再整備計画が進められようとしている。 計画を主導するのは坂井市だ。
行政の現場責任者の課長が、プロジェクトのとりまとめ、関係者間の調整、予算計画などを担当している。 東尋坊の景観の壮大さと希少性は、改めて説明するまでもないだろう。これほどの規模を持つ輝石安山岩の柱状節理は世界に3カ所しかないと言われ、国の天然記念物および名勝に指定されている。
「すごい、いや本当にすごい・・・」。入江を見下ろす東尋坊の崖の上で、30~40代と思しき男性観光客グループの1人がつぶやいた。東尋坊を訪れた人は、剥き出しの火山岩、無数の崖の柱の圧倒的な迫力の前に誰もが息をのみ、言葉を失う。特に真冬、日本海の吠えるような波しぶきを崖の上から見下ろし、強風に身をさらされると、転落の恐怖を感じずにいられない。誰でも自由に足を踏み入れられる景勝地で、自然の力の偉大さと恐ろしさをこれほど感じさせてくれる場所は日本でここだけではないか。
だが、どんなに素晴らしい自然の景観、観光資源があっても、必ずしも“魅力的な観光地”であるとは限らない。 担当課長がこう明かす。「東尋坊には毎年130万~140万人ほどの観光客が来るんですが、実はアンケートを取ってみるとリピート率が非常に低いんです」。
東尋坊は一度訪れればもう十分、ぜひまた行ってみようという気にはならないようなのだ。 ネットの口コミをみると、実際に評判は芳しくない。海岸自体は「想像以上の絶景」「眺めが最高」「迫力満点」などと絶賛されている。ところが周辺の観光施設に対しては辛辣なコメントが目立つ。
(WEB抜粋引用)