見出し画像

雨の記号(rain symbol)

風の絵師第18話から

 ユンボクの父親が残した「遺言の絵」から導き出されたのは、私画署のジョニョンが父親を殺したという確証であった。怒りに震え、ジョニョンのもとへ駆けつけようとするユンボクをホンドは必死になだめた。
 落ち着きを取り戻したユンボクは部屋に引き揚げる。
 部屋では謎の絵を手にジョニョンが待ち構えていた。彼もまたユンボクに疑いの目を向け始めていたのだった。
「どこに行っていた?」
「興味深いものを見てまいりました」
 疑心暗鬼の眼差しを向け合ったまま、二人が絵のやりとりをしているところへ客がきたとの知らせが入る。ジョニョンが部屋を出ようとした時、引き戸の向こうに前髪で左目の隠れた女剣士が立った。一瞬、ユンボクの表情は凍りついた。
 父親が描いた女剣士と印象が重なったからだ。私を護衛するこの女は冷たい血が流れている、とジョニョンは威嚇の言葉をユンボクに発する。
 ホンドは二枚の絵から自分の師と友を殺したのは大行首キム・ジョニョンである、ことを正祖に報告した。これには朝廷の勢力も絡み図画署にも一味がいる、と。正祖は義禁府の兵を差し向けると言うが、ホンドは証拠が十分でないとそれを断わる。 
 ユンボクは自分の画いた絵をめぐってジョニョンと再び議論を展開する。
 ジョニョンは、一人の男をめぐって女の嫉妬と欲望が交錯し、逢瀬を楽しむ二人と夫を奪う女を懲らしめようとする妻の姿を見ている。
 それは男の立場からの見方に過ぎない。真実は違う。男に抱かれる女は逃げたがっていて、塀のこちら側の女は男の凶暴さを怖れ、息をひそめている。
 絵の鑑定に自信を持つジョニョンは、自分の見解をユンボクに真っ向否定されて腹を立てる。ユンボクの不敵な態度に、自分が挑発を受けているのを覚える。
「女の憎しみも侮るな、だと・・・生意気な奴!」
 ジョニョンの怒りも募った。ユンボクをチョンヒャンから引き離すだけでなく、始末することも念頭に置き始める。
 一方、ユンボクの復讐の決意もまた固かった。
 ホンドは師匠と友の殺害にかかった一派の証拠をあぶりだすため、彼らの挑発に動き回った。ジョニョンの前に現れては彼の商売の邪魔をし、金で栄えれば金で滅ぶ。どこまでものさばれると思うな、と啖呵を切る。次に別堤の前にも現れた。師匠のなくなった十年前、突然、別堤の座に就いたあなたが不思議でならなかった、とホンドは言う。すると推測のすべてがつじつまが合ってくる。次に会う時、別堤の最後の日だ、と言って去る。
 ユンボクは喪服を着て微笑むチョンヒャンの姿が入った「二婦貪春」を描いてチョンヒャンに託す。それはジョニョンを挑発する絵だった。ジョニョンは怒り心頭の湯気をたぎらす。
 ホンドに言われたことが不安でならない別堤はジョニョンを呼び出す。
 別堤の動きをマークしていたホンドは二人の話を盗み聞く。大絵師を死に至らせたのは別堤が用意した顔料の毒。ホンドを早く始末しろ、とジョニョンに迫る別堤。ジョニョンは余裕の笑み。気を抜くな、と別堤。ソ・ジンの娘のことを切り出したりする。その娘とユンボクが重なると知ってか知らずか、ジョニョンは「一世を風靡した画人にふさわしい最期を用意してやります」と余裕の笑みは変わらない。
 
 自宅に引き揚げてきたジョニョンは、別堤の言っていた女装の話を思い出す。ユンボクの絵の解釈を思い起こし、そこでやっと思い至る。ユンボクは女人であった、と。
 そこでジョニョンはチョンヒャンを出しにして、ホンドとユンボクの画事対決を思いつく。
 ユンボクには「これを受けねばチョンヒャンを売りに出す」と脅し、「おたくの弟子である薫園は女だとの噂が立ち始めている。これを受けねば、噂はどんどん広がることになる」とホンドにも話を持ちかける。
 二人は画事対決を受け入れ、巷はこの噂で持ちきりになる。人気は沸騰し、賭けをするため長蛇の列ができる。
 しかしこの画事対決は二人を陥れるジョニョンの策謀。どちらが勝っても苦難が待ち構える。
「優れた師匠は優れた弟子を作り、優れた弟子は師匠を理解する」
 必ず勝て、自分も必ず勝つ。それしか生き残る道はない。
 ホンドのこの言葉の持つ意味は・・・?

 これで残るのはあと二話。次話の画事対決から最後の山が一気に続くのだろうが、クライマックスの気配がどうやらここでもさしだして、どことなく寂しさが漂ってきた。

blogram投票ボタン
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「韓国ドラマ他」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事