『ウィキペディア(Wikipedia)』より
トンマン王女がウォルチョン大師の説得を重ねながら大師に提案したのが、現在韓国慶州市月城公園内にある瞻星台(天文台→東洋最古と言われる)を作る話である。ウォルチョン大師はトンマン王女のこの話に感動し、正光暦から日食が起こる期日を割り出した。
トンマン王女はこのことを持ち札としてミシルの攻略に乗り出す。それには気象に関する情報を手中に収め、手練手管や偽計を用いて天の意を宮廷や民の前で自由自在に操る天心皇女ミシルの欺瞞を暴かねばならない。それにはこのことを自分の胸だけに収め、事を運んでいかなければならない。
――敵を欺くにはまず味方から――
トンマン王女はウォルチョン大師が正光暦を手に計算して出した日食の起こる期日を味方の誰にも教えないでミシルに勝負を挑む(地位が人を作るとはこのことか。これまで身につけ養ってきたものが一気に開花しだした観のあるトンマンだ)。
手始めに彼女は策をさずけピダムを市中に送り込む。ピダムが予定通りミシルのもとへもぐりこみ虚々実々の駆け引きを展開する一方、第二弾としてユシンもトンマンの指示でミシルに書状を届けに出向く。書状は正光暦の写しだった。トンマンの意図を測りかねたミシルはユシンに会い、ユシンの言動や振る舞いから真偽を探り出そうとする。
ミシルはピダムやユシンの行状から、二人の持ち寄った情報が限りなく怪しいとにらむ。日食はないと判断し、世間に公表する。
脱走を企ててつかまったピダムは日食の起こらなかった翌日、民をあざむき騒がしたかどで宮中の広場で火あぶりの刑にされようとする。そしまさにその刑が執行されようとした時、中天の太陽がにわかに翳り出す。日食が始まったのだ。宮中で動揺が起きる。広がる。火あぶりの刑も執行が止まる。
ミシルも王もすべての者がこの現実の前で息を呑んだ。
日が翳り、一瞬の闇が駆けすぎた後、宮中の高殿に一人の女が出現する。それは両側にユシンとアルチョンをしたがえた王女姿のトンマンだった。
これを見て磔台のピダムは高らかな声で朗読する。
「開陽天日有錦之鶏林天明新天到来」
石碑にあった予言の追記の章(トンマンがピダムにさずけた言葉)だった。
「みんなよく聞け、予言にあった新たな天を開く者、あの方が開陽者様である」
広場に集まった民たちはこれに歓喜の声をあげ始める。そして口々に叫び、質問をしだした。
「王様、教えてください。チョンミョン王女さまは双子として生まれてきたのですか?」
日食が去った後のこの演出にミシルも動揺を抑え切れなかった。
「よくもこのミシルをあざむいてくれたな・・・!」
狼狽の中でトンマン王女にいっぱい食わされたことを悔しがった。
トンマン王女の登場に気持ちの昂ぶりを抑えようとした王たちだったが、歓喜の声で質問する民の姿には、その事実を素直に受け入れ、肯定的に受け止めようとする姿勢があった。王妃は高殿のトンマンのもとに駆けつけた。彼女の手をとって広場を見渡す場所に連れてきて、王妃は民の前で告白した。
「北斗七星が八つになって現れた夜、私はチョンミョン王女を産みました。そのあとまた陣痛が起こり、二番目の王女を産みました。ここにいるトンマンです」
歓喜で受け止める広場の民。民の歓喜に励まされ、チンピョン王も二人のそばに歩み寄る。トンマンの手を取り、彼女に父親であり王である自分を詫びた後、その手を高々と差し上げた。みなの前で宣誓した。
「すべての民と世の中に明かす。ここにいるのが私の娘である。神国の娘であるトンマン王女である・・・」
ミシルにとってトンマン王女の宮廷への登場は大きな痛手だった。しかもそれがピダム処刑の場で日食が起こり、民の関心が集まっていた中だったから衝撃も大きかった(ここで小さな疑問。日食がもう少し後にずれたとするなら、トンマンはピダムを救っていただろうか? トンマンの人間性からすると助けたと思うのだが、王になるため一人の人間であること女であることを捨てたと言っていたし、微妙なところがある。僕的にはピダムを助け出そうと戦いを始めたところに日食が起こってほしかった気がする。後に善徳女王はこのピダムを自ら上大等(新羅王下の最高官位)に任命している。ピダムへの信頼は相当厚かったと見ていいだろう。たぶん、ピダムはキムユシンよりはるか上の地位だったはずである。ただピダムの場合は、後に唐の圧力が新羅に強くかかってきた時、親唐派に組し、女王廃位の反乱を起こす。唐の圧力は(百済に兵を差し向けてほしければ)女王を廃し、自国(唐)王室の者を王にせよ、というものだった。このドラマでピダムはミシルの息子ということになっている。このドラマではミシルが母と知って反乱に及ぶのであろうか? それともこのドラマはそこまでは進行しないで終わるのかな? この時、女王の後ろ盾となって登場したのが地方勢力を束ねていたキム・ユシンだった。この戦いの中、善徳女王は生涯を閉じる。ピダムに裏切られた失意が彼女の寿命を早めたのかなと僕的には思ったりする。実際、オム・テウンよりキム・ナムギルの方が、ずいぶんカッコ良いと思うのは僕だけかな?)。
閑話休題。
トンマン王女の就任を認める代わりに貴族の税を軽くするように話を持っていきなさい、とミシルは配下に命じる。トンマンを認めても、貴族たちや周囲の兵たちさえ王側になびかないようにしておけば、王同様、トンマンも押さえていける、との読みが彼女にはあった。
しかしそれはミシルの配下に対する虚勢でもあった。彼女の苛立ちは最高潮に達していた。ミシルは自室で心地よい音を楽しんでいた途中、音を奏でる一個のグラスを割った瞬間、何かの糸が切れてしまったように棒で次々とグラスを割っていった。
就任式の日。二人は宮廷の通路で顔を合わせる。
「王女になられたことを祝福いたします」
「手伝っていただいたおかげです。あなたの言葉ひとつひとつが私の血になり肉になりました。その通り事を進めたら、天心皇女になりました。王女になれたのはそのおかげです」
皮肉なやり取りを行った後、ミシルがふと見ると、トンマン王女の手は震えている。
ミシルは彼女に近づいて手を取り、かすかな笑みをたたえて言った。
「どうしたのです? まだ、恐怖に打ち勝てないでいるのですか?」
「この手を何だと思っているのです。控えなさい」
トンマン王女はみなの前でミシルを叱り付けて通り過ぎるのだった。
就任式を終えた後、トンマン王女は臣下をすべて集めた。王女としての最初の仕事をするためだった。
「天文に関するすべての資料を民の前に公開することといたします」
臣下の前でそう宣言した後、ウォルチョン大師を呼んだ。
「すべての民はこの暦を活用することができます。気象天文台も作ります。その責任者はここにいるウォルチョン大師が務めます。すべての新羅人は天気の運行を知ることができます。これからは民の無知を利用し、不安がらせることはいっさいしてはなりません…」
臣下、いやミシルを見つめていうトンマン王女であった。
トンマン王女の一方的な宣言をを許せないミシルは、彼女を自室に招きいれ、そのことを咎めた。
「せっかく得た神権を放棄するということですか?」
「ええ」
「だけど王女様、世界を縦にして見渡せば、百済、高句麗、新羅とあり、この新羅には王女様に従う者もいれば、ミシルに従う者もいます。しかし横から見れば二つしかありません。支配するものと支配される者、すなわち横に見れば、王女と私は同じ仲間です。私たちは支配する側の人間です。このミシルから神権を奪ったなら、王女様が守っていってください」
トンマン王女は首を振った。
「そうすれば、私もいつか誰かに奪われてしまうでしょう。だから、民に返すのです」
「それが捨てるということです。それならどうやって民を統治するのですか?」
「・・・」
「私たちは戦争をしているのです。戦争にも規則があります。これは規則違反です。これを破って、何の権威ですか。権威も権力もなく、何で民を治めるのです」
ミシルの言葉にトンマン王女は迷いに沈む。
「答えてください。何で民を治めるのです・・・?」
「真心を持って・・・」
「真心を持って? そんなもの私にはわかりません。私にそれを理解する能力はありません。真心ですって・・・?」
薄ら笑いを浮かべながらミシルは続けた。
「幻想を作り出すことにより、民を統治できるのです」
「いいえ、民は幻想より希望を求めているのです」
迷いの中にありながら、そう答えるトンマン王女だった。
民はたとえそれが邪であろうと幻想を引き連れてしか統治出来ないとするミシル(悲観主義? あるいは性悪説?)。
民は幻想を求めていない。夢や希望を求めている、できる限り手をさしのべたいとするトンマン王女(楽観主義? あるいは性善説?)。
二人の意見は平行線をたどる。
ミシル。
「民は何故雨が降るのか、なぜ日食が起こるのか、それを知りたがりません。誰かが雨を降らせ、誰かが日食を防げばいいという無知でバカな存在なのです」
トンマン王女。
「それは知らないだけの話です」
「そうです。知らないというより知りたくないのです。自分が何を望んでいるのかさえ知りません」
「民が暦を知れば、自ら天気を知ることができるようになります。何故雨が降るのかはわかならなくても、雨を自分達の農作にどうやって利用できるかを知るようになります。それはそうやって少しずつ知っていけばいいことでしょう」
民の幻想と民の希望の対立。
民は知らなくても導いていってあげればいい。民とともに知は共有できるようにしてあげた方がいい。
どうやらこの対立には社会構造、社会体制的な対立も含んでいるように感じられる。
二人は議論を続けながら、自分の考えに少しずつ不安を抱いていくのであった。
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