第247回王将会活動報告
第247回王将会例会は令和5年2月3日学士会館で開催されました。今回の開催も前回同様に東京都のコロナビールス新規感染者数がまだ3000人以上の状態の下での開催となりました。ただし、東京都はもとより、広く日本全国的に見て新規感染者が前週の同一曜日より減少しているという比較的安定した状態での開催となりました。参加者は少し増加して4名でした。すなわち、武田三段、島田三段、伊藤三段と清水様でした。ただし、清水様は招待者で、前回報告したように多摩市立第一小学校放課後将棋教室の指導員をされている方です。なお、島田三段、伊藤三段の2名も清水様と同様放課後将棋教室の指導員をしていますので、旧知の仲です。
さて、対局は午前10時過ぎに開始されました。清水様と伊藤三段、武田三段と島田三段
が対局しました。成績は清水様の2勝0敗、武田三段と島田三段とは1勝1敗でした。
午後の対局は清水様と武田三段の間で戦われ、清水様の2勝0敗で終了しました。全体を通じて清水様の好成績が光りました。
次に、昼食前に新春懸賞詰将棋応募結果の報告を行いました。出題問題数5問で、応募者数3人でした。全問正解者は武田三段、4問正解は関二段、3問正解は島田三段でした。武田三段の健闘ぶりが解答内容からも伺われました。
以下、出題者の私、伊藤3段の出題に関する従来の経緯と心境を述べます。
私は王将会会員を対象とした出題のほかに、日々谷同友会会報にも詰将棋問題を投稿しています。時期的には後者の方が古く163号から始まっています。投稿を始めた動機は、当時の事務局長・編集長(加来億一氏)による同友会会員の活性化要求でした。それは、2003年の初秋の頃で、各種「お楽しみクラブ」に属している世話役が集められました。
要件は各「お楽しみクラブ」に一層の活性化(会員数の増大)要求でした。私は王将会の世話役でしたからこれに応じ、「会報に懸賞詰将棋欄を設け、広く応募を募っては…」と提案しました。編集長からは「それは面白い提案だ。さっそく実行しよう」との熱い賛意が表されました。帰宅後、この提案をしたことに反省が起こりました。詰将棋作成はむつかしい問題です。えらいことを提案した。一体王将会のだれが担当するのか、長期的に続けられるのかの点でした。結局「言いだしベイ」の私がやらざるを得なくなりました。それからは、毎日この問題作成が頭から去らなくなりました。それでも最初の1~2回はなんとか作成し、投稿することが出来ました。また懸賞に対する応募者も10人くらいでき、かつ、王将会新規入会者も1名現れ、活性化が図られたように感じました。
ところが、同友会の会員間で変な噂が流れているのが気に止まりました。それは伊藤の詰将棋問題は本人が作成したのではなく、雑誌か新聞に出ていた問題を盗作しているのではないか、との噂でした。これには私自身びっくりしました。しかし、「盗作ではなく、自分自身で新しく考案した問題だ!!」と絶叫してもそれを証明する手段がありません。好意的な王将会会員からは、「ほっておけば消滅するのでは…」との意見もありました。しかし、そのうちに私個人に面と向かって「盗作嫌疑」をかけられる羽目になりました。これではほっておけない、外部に流れたら、編集部自体にご迷惑をおかけすることになる、何とかしなければ…と思うようになりました。ではどうするか、熟慮した結果、専門棋士が「凡作」あるいは「愚作」として作成しない問題、すなわち正解が2通り以上ある問題の作成でした。ではどの様な問題か。それは現在でも続けている様な玉を盤の中央(5一から5九)に置き、かつ、王方の駒の配置を5筋の線から見て線対称に置くことでした(第一図参照、以下対称詰将棋)。その結果、攻め方は玉の左方から王手するか、右方から王手するか、あるいは玉頭・玉尾からするか、少なくとも2種類以上の正解が存在することになります。(第一図の問題は2種類)。
3回目からは早速これを適用しました。4回目以降も同様で今日まで継続しています。この結果、伊藤の詰将棋問題の盗作嫌疑は、瞬く間に消滅しました。やれやれ、といった感じでした。ただし、作成者の私には根本的な問題がありました。それは「問題作成が本当に継続できるのか」でした。当初は2~3年で目的の「活性化」が進んだと判断されれば、中止を編集長の申し出ればよい、との安易な考えでいました。しかし、編集長はそれを察してか、「どんどん投稿してほしい」との要請が出されました。
その後、事務局長・編集長は加来様から山森様、田村様、林様、中山様と交代がありましたが、どの方からも私に温かい手を差し伸べて頂きました。今でもよく覚えているのは、投稿後、問題に大きな誤りを発見し、簡単には訂正できないことが分かりました。「今回は休ませていただきます」と申し上げようとしたとき、当時の田村編集長から、「2~3日よく考えてください。待っています」と言われ、地獄で仏に会ったような感じがしました。この時、休んでいたら小学校生徒が皆出席表彰を1日の欠席で台無しにした気持ちになったのと同様になったでしょう。
さらに、会報の「詰将棋欄」を毎回塾読している読者から、「いつも楽しみにしています。今後も投稿してください」との激励を耳にするようになりました。
その結果、私の「対称詰将棋」投稿は今日に及んでいます。今年の秋で満20年となります。この間、幸い1回も休むことなく続けてまいりました。振り返りますと、結果的にはよく継続できたという満足がありますが、心境的には意識的に長く続けよう思ったことはなく、ある号の投稿を終えると、すぐに次号の問題を考えるという単純な態度の繰り返しでした。
前者の王将会会員を対象とした「対称詰将棋」出題も10年以上前から実施しています。こちらの方は出題者と応募者間の距離が近いためか「こんな簡単な問題をやらすのか」とか、「手数が長すぎる。簡潔で面白い問題を出題しろ」といった「遠慮のない注文」を受けることがあります。確かに詰将棋問題は「通常の将棋には現れない、あるいは現れることの少ない問題」、「ハッとする妙手」を含んだ問題が人気を得るのでしょう。この点は私も百も承知ですが、なかなか実際に問題を作るとなると、この様な妙手を含んだ問題作成には大変苦労しています。しかも短手順(10手以内)で詰ませる問題作成は至難の業です!!