糸たて

私の父と母は定年まで縫製工場に勤めていた。

父は裁断、母は他の人がやりたがらないアイロン。

定年と同時に会社は閉めることになった。倒産だ。

外国の工場に仕事がまわり、日本の縫製工場にまで仕事が来なくなったからだ。

縫製工場の給料は安く、ボーナスなんてなかった。

幼い頃からミシンに親しんできたけど、将来は絶対、縫製の仕事はしないと決めていた。

高校も大学や専門学校も家政科なんて行って、万が一、縫製関係の道に進むと貧乏をするといけないから、と思い選ぼうとも思わなかった。


だから両親の勤めていた会社が倒産した時、沢山の資材をもらい損ねた。

母は「あんたが、こんなにミシンするなら、糸やらなんやら、もらっとくんだったわ」といった。


ほんま、残念や。


何本か、テトロン糸がある。私のミシンじゃ置けない。

父が糸たてを作ってくれた。

テトロンやレジロンは糸がよれる。動力ミシンを見るとわかるけど、糸が遠くからやってくる。

この釣竿の一番上まで糸を通すと大体がきれいに縫える。

格好は悪いけど、ニットを縫う時、下糸がぐちゃぐちゃにならない。

他に何と言って教えてもらえるような知識も持ち合わせてない父だけど、これはすごい。

ジューキで１５００円で買った、糸たてきは全然使えなかった・・・。

ちなみにこれは、１０センチほどのテトロン糸。比べると結構長い。