本番前のこの時間が好きだなあ。
音の響きも、匂いも、温度も・・本番とは違う。
そんな気がする。
本番前にだけ感じる空気がある。
お客さんのいないホール。
お客さんを待つホール。
ゲネ(総合リハーサル)
薄暗い袖で出番を待つ。
本番以上にシンとした空気の中、
ちょっと動いても音が漏れそうで
じっと息を殺して待つ。
ひんやりした床にぺたんと座り
膝をかかえて舞台を見つめて。
ホコリっぽくて咳が出そうなのをがまんする。
効果の煙が放つ独特の匂いを、なんだか懐かしく感じながら。
客席から見えないように小さくなって出番を待つ。
客席には誰もいないのに・・
明日は本番。
私は同じように、薄暗い袖で膝を抱えて座っているだろう。
お客さんとは違う角度からステージを見つめているだろう。
今度はすぐ近くにお客さんの息づかいを感じながら。
明日は本番・・
