降り続いた雨も夕刻にはあがり
雲の切れ間から射す日の光が
早い雲の流れに押されるように
北から東へと移ってゆく。
小寒を向えるこの時期としては
寒さをさほど感じない
しかし、手袋もなしに持つカメラは
今が一番寒い時を知らせる様に
無機質の機械の冷たさを伝えていた。
冬のこの時間の光量の無さに
撮影の設定に思案するうちに
列車は不意に現れた。
暗い空と僅かに残る雪の間からのぞく黒い地膚の
荒涼とした空気の冷たさの中を縫って
列車は車窓から溢れる「灯り」と共に通りすぎた。
カメラ同様に機械であるはずの無機質の存在が
あの「灯り」を見た、あの瞬間なぜだかとても暖かく感じられた。
人は光りを感じたとき
温かさという幸福を感じる。
遠く瞬く家々の小さな灯りに目をやりながら
あの家々にもそれぞれの幸せが
灯っていることを願った。
Posted by I.Tachi at January 5, 2017