TVなどでは今までも幾度となく観てきたその建物。
「防災庁舎」とうたわれながらも、多くの方が津波の犠牲となってしまったその建物に、今日思いがけなく連れていってもらえました。
あの未曾有の震災からもう1年と2ヶ月あまり…。
画面などで観る風景とは比べものにならないほど生々しい「現実」がそこにありました。
塩枯れした木々。
剥き出しになったコンクリートの土台の数々…。
沿岸のあらゆるものは破壊され、広がる風景は以前とはまるで変わってしまっていました。
そこに在ったはずのなにもかもが…あの日の津波の威力に飲み込まれてしまった……。
大切な人たちや、大切な思い出。
生み、育んでくれた町や村、美しい海岸線や山並み…。
大切な…愛してやまない沢山のものが…目の前で、少しずつ削られ、壊され、形を変えてゆくことへの恐怖。
どうすることもできない自然の大きさ。
それは、その場に居た人でなければとてもわかり得ない、はかりしれないものではなかったでしょうか…。
…あの日。
私たちの友人もこの場所にいました。
いつもならば居ない場所。
たまたま仕事でこの場所に来ていたのだといいます。
骨組みだけを残す庁舎。
硬く重いはずの鉄骨はあちこち折れ曲がり……押し寄せるその恐怖はいかばかりのものだったでしょうか…。
どうしてその日でなければならなかったのか。
どうして早く逃げてくれなかったのか…。
何度となく問いかけてみましたが…とうとう答えは出ませんでした。
早く帰るように声を掛けられても、彼はそのままにしておくことができなかったのかもしれません。
…それが彼の今までの仕事に対する姿勢を物語っているような気がしてなりません…。
…震災後。
やっと訪れることができた防災庁舎。
花が手向けられ、多くの人が手を合わせに訪れるその場所。
降り立ってみて感じたのは……屈託のない、彼の笑顔なのでした。
…思えば、いつも優しい眼をしてた…。
彼の、息子を見つめる眼や、仲間をそっと見守る眼があざやかに思い出されます。
前から思っていたけれど、それは友人のまなざしとよく似ているのです。
2人で同じ仕事をやり遂げた彼らは…きっといつでも、いつまでも、どこかで繋がりあっているような気がしてなりません。
穏やかな晴天の今日。
見上げれば骨組みだけの庁舎の屋上。
青空の向こうにあの優しい眼を感じたような気がした…!
「あれ、2人して泣いてる」って…。
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それは天災であり、被災した皆さんの運命だったと思うしかないのでしょう
あの日から会えなくなった友人…
私たちは彼が存在したことを忘れず、私たちの記憶に深く、いつまでも残すことが彼への弔いなのだと思います。
彼と出会えてよかった…
今日あの場所に行けてよかった…
私にも彼の眼差しと声を感じることができた…
「なんで泣いてるの?」確かに不思議そうに問いかけていた気がした…
私は彼がいつの日か家族の元へ戻れることをこれからも祈り続けたい…
合掌
…そうですね。
一日でも早く家族の元へ戻れるように私も祈り続けたい…心からそう思います。
いつものように朝出勤して、いつものように夕方帰宅するはずだったろうに…。
急に大切な家族を奪われてしまったご家族の方の思いもどれほどのものでしょうか…。
姿は見えないけれど…もしかしたらいつでも、彼はすぐ近くに存在しているのかもしれません。
友人さんが以前、彼と共に手懸けたシステムに思いをめぐらせ、新たな職場でもその橋渡しをしたいと感じているのも…彼との貴重な経験があったから…。
もしかしたら本当に私たちは彼に自然と呼ばれたのかもしれませんね。
その場所で手を合わせることができて本当に良かったと思っています。
心からご冥福をお祈りいたします。
そして…早くおうちに帰れるといいな…。