王者・川崎に完膚なきまでに打ちのめされての敗戦。
Jリーグ2連覇は伊達じゃないということを見せつけられた“多摩川クラシコ”の一戦。首位として王者を迎えるというこれまでにないシチュエーション、チケット完売、4万2千を超える観客が詰めかけた文字通りのビッグゲームに“挑戦者”として臨んだFC東京だったが、残念ながら、戦術、テクニック、そして気迫と全ての面で上回っていたと言われても致し方ないほどの完敗を喫した。
それでも序盤には好機も演出していた。永井やディエゴ・オリヴェイラがゴール前の混戦からシュートを放つが、相手のブロックやGK・チョン・ソンリョンのセーヴで均衡は破れず。すると、15分過ぎあたりから川崎の時間帯に。ジェジエウのヘディングがクロスバーに弾かれて難を逃れたと思った矢先、20分にCKから小林悠が巧みなステップでFC東京DF陣のマークを外してフリーでヘッド。小林はJ1通算100ゴールとなるゴールをネットへ突き刺し、先制。川崎ゴール裏から大歓声が沸き起こった。
このセットプレーでの失点が少なからず尾を引いたのか、FC東京は川崎のパス回しに翻弄されて、ボールが奪えず。相手のプレスをかいくぐってから素早い縦への攻撃を試みたかったのだろうが、球際で強く当たってくる川崎のプレスを思うようにいなせず、パスコースを塞がれて苦し紛れなパスがミスに繋がるという悪循環。FC東京はボールを足元に収めこねてからパスコースを探すのに対し、川崎は素早いダイレクトパスでボールを動かすという“テクニックの差”も見せつけられた。
ハーフタイムに檄があったか、後半序盤は攻勢を仕掛けたFC東京。だが、アタッキングサードまでは進出するも、結局遅効を余儀なくされ、シュートを打つことが出来ない。推進力のない横・バックパスをしながら縦にパスを入れるタイミングを見計らうものの、王者はそれもなかなか許してくれない。FC東京が得点を奪いに前線が前がかりになると、次第にオープンな展開へと移行。シュートもままならないところをボールを奪われ、川崎のカウンターを受けて最終ラインが引けてしまうという後手に。そして、54分、中村憲剛の憎らしいとしかいいようがないシュートモーションフェイントで僅かな“タメ”を作ってからパスを右サイドの小林へ流すと、中央に折り返した小林のパスに走り込んだ齋藤学がゴールを決める。実に川崎らしい崩しによる追加点で、FC東京に落胆の色を落とさせる。
それでも川崎はリードからくる余裕のパス回しから、隙を見てFC東京陣内へ仕掛けていく。69分、齋藤がDF裏へ抜け出すとGKと1対1に。シュートは一度GK林がビッグセーヴするも、その弾いた浮き球を収めた森重が不用意に出したパスがカットされ、最後は阿部が綺麗な弧を描いたシュートをネットに突き刺して万事休す。ここで川崎は攻めを終わらせず、小林に代わってピッチに入った知念がポスト直撃のシュートを放つなど、貪欲にゴールを奪う姿勢を見せた。終わってみれば、王者の完勝。FC東京にとっては、スカウティング、技術、精度含め、リーグを制覇してきたチームとの差を見せつけられたまま、屈辱の敗戦となった。
近2戦、横浜F・マリノス、G大阪戦では先制されるも逆転し、複数得点で勝利出来たFC東京だったが、やはり川崎相手に先制されると厳しい。横浜F・マリノス、G大阪戦で逆転出来たのは、相手のスタイルや相性という要因も少なくなかっただろう。そういう意味では、川崎にとってのFC東京はタイプとして与しやすいタイプなのかもしれない。だとしても、好機を演出出来なかった以前に、FC東京のサッカーをさせてもらえずの敗戦は、単なる3ポイントロスト以上のダメージを受けたといっていい。中盤の田中碧、下田北斗が躍動し、永井やディエゴの突破を許さないジェジエウをはじめとするDF陣、そしてなによりもヴァリエーション豊富なボールを供給する中村のタクトに、FC東京はついていけなかった。
一方、川崎は高萩を徹底マーク。その出所を抑えられてしまうと、高萩もリスキーなパスにチャレンジしてあえなくミスパスに。また、ディエゴへのサポートが弱いため、ディエゴがボールを持ち過ぎて囲まれてロストするという場面も散見。怪我人などで層の薄さもあるだろうが、途中からムードを変えるような効果的な交代が出来たとも言い難かった。
力の差をまざまざと見せつけられた敗戦。川崎との対戦は未勝利に終わった。だが、J1リーグはここで終わりではない。最終節まで他のチームよりも上回っていれば、一戦毎に勝ち点を積み重ねていけば、現時点でリーグ優勝に最も近いのはFC東京ということ。これまでに積み上げた勝ち点とそこで培った自信を失わず、この敗戦をしっかりと受け止めて次へと再びチャレンジしていくことが肝要だ。後半はアウェイ8連戦も待ち受けている。ここで下を向いている暇はない。
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【明治安田生命J1リーグ 第19節】
2019年7月14日(日)19:03試合開始 味の素スタジアム
入場者数 42,401人
天候 曇 / 気温 23.2℃ / 湿度 90%
主審 佐藤隆治 / 副審 聳城巧、田中利幸 / 4審 今村義朗
FC東京 0(0-1 / 0-2)3 川 崎
≪得点≫
(東):
(川): 小林悠(20分)、齋藤学(54分)、阿部浩之(69分)
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【FC東京】
≪スターティングメンバー≫
GK 33 林 彰洋
DF 02 室屋 成
DF 32 渡辺 剛
DF 03 森重真人
DF 25 小川諒也
MF 10 東 慶悟
MF 08 高萩洋次郎 → 大森晃太郎(53分)
MF 18 橋本拳人
MF 17 ナ・サンホ → 矢島輝一(70分)
FW 09 ディエゴ・オリヴェイラ
FW 11 永井謙佑 → 内田宅哉(85分)
≪サブスティテューション≫
GK 01 児玉 剛
DF 29 岡崎 慎
MF 28 内田宅哉
MF 36 安部柊斗
MF 39 大森晃太郎
MF 45 アルトゥール・シルバ
FW 23 矢島輝一
≪監督≫
長谷川健太
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【明治安田生命J1リーグ FC東京 日程・結果】
第01節 02月23日(土)14:00 △FC東京 0-0 川 崎(A・等々力)
第02節 03月02日(土)16:00 〇FC東京 3-2 湘 南(A・BMWス)
第03節 03月10日(日)14:00 〇FC東京 2-0 鳥 栖(H・味スタ)
第04節 03月17日(日)13:30 〇FC東京 1-0 名古屋(H・味スタ)
第05節 03月30日(土)14:00 △FC東京 1-1 浦 和(A・埼 玉)
第06節 04月06日(土)14:00 〇FC東京 2-1 清 水(H・味スタ)
第07節 04月14日(日)14:00 〇FC東京 3-1 鹿 島(H・味スタ)
第08節 04月19日(金)19:00 〇FC東京 1-0 広 島(A・Eスタ)
第09節 04月28日(日)14:00 〇FC東京 2-0 松 本(H・味スタ)
第10節 05月04日(土)16:00 △FC東京 0-0 G大阪(A・パナスタ)
第11節 05月12日(日)14:00 〇FC東京 1-0 磐 田(H・味スタ)
第12節 05月18日(土)14:00 〇FC東京 2-0 札 幌(H・味スタ)
第13節 05月25日(土)15:00 ✕FC東京 0-1 C大阪(A・ヤンマー)
第14節 06月01日(土)14:00 〇FC東京 3-1 大 分(H・味スタ)
第15節 06月15日(土)19:00 ✕FC東京 0-1 神 戸(H・味スタ)
第16節 06月23日(日)19:00 ✕FC東京 0-2 仙 台(A・ユアスタ)
第17節 06月29日(土)19:00 〇FC東京 4-2 横浜FM(H・味スタ)
第18節 07月07日(日)19:00 〇FC東京 3-1 G大阪(H・味スタ)
第19節 07月14日(日)19:00 ✕FC東京 0-3 川 崎(H・味スタ)
第20節 07月20日(土)19:00 FC東京 vs 清 水(A・アイスタ)
第21節 08月03日(土)19:00 FC東京 vs C大阪(H・味スタ)
第22節 08月10日(土)19:00 FC東京 vs 仙 台(H・味スタ)
第23節 08月17日(土)19:00 FC東京 vs 広 島(H・味スタ)
第24節 08月24日(土)13:00 FC東京 vs 札 幌(A・札幌ド)
第25節 08月30日(金)19:30 FC東京 vs 名古屋(A・パロ瑞穂)
第26節 09月14・15(or 13)FC東京 vs 鹿 島(A・カシマ)
第27節 09月28・29日 FC東京 vs 松 本(A・サンアル)
第28節 10月05・06日 FC東京 vs 鳥 栖(A・駅スタ)
第29節 10月19・20日 FC東京 vs 神 戸(A・ノエスタ)
第30節 11月1・2・3・4日 FC東京 vs 大 分(A・大銀ド)
第31節 11月8・9・10日 FC東京 vs 磐 田(A・ヤマハ)
第32節 11月23日(土祝) FC東京 vs 湘 南(H・味スタ)
第33節 11月30日(土) FC東京 vs 浦 和(H・味スタ)
第34節 12月07日(土) FC東京 vs 横浜FM(A・日産ス)
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