

ライヴ・バンドとしての生命力と成長を実感した一夜。
メジャー・シーンへと歩を進めたアルバム『formula』のリリースを記念したCICADAのワンマンライヴ〈CICADA 2nd Full ALBUM“formula”release oneman show〉が金曜夜の渋谷で開催。その雄姿を目に焼き付けるべく、渋谷WWW Xへと馳せ参じた。
今作『formula』について、前回の記事(CICADA『formula』)で「本作はCICADA史上最高の名盤、ではない」「これはCICADAアルバムという以上に“及川アルバム”という気がする」などと煽ったが、CICADA作品という意味では発展途上という感覚はやはりまだ変わらずにある。ただ、同時に「進取性に富むハイセンスなポップ・サウンドで描き上げた、非常に刺激的なアルバム」という思いもそのままだ。彼らにとっては近い将来への決意表明のような思い入れの深い作品を、どのようにライヴで表現するのか。大きな期待を持ちながら、開演の刻を待った。
「スタイン」「daylight」と切れ目なく続く構成に冒頭から熱量が上昇していたステージだったが、早々と結論から言ってしまえば、彼らがこの上ない“ライヴ・バンド”であることを再認識したライヴだったといえる。
冷静と情熱の間ならぬ、官能と美麗を湛えたクール&セクシーなヴォーカルとワイルド&ホットなフロウとを巧みに使い分ける城戸あき子、フリーキーなアドリブを組み込みながらファンタジックでモダンな音世界へいざなう及川創介、幻想的な世界観の構築を電子的な音鳴りでサポートする若林ともの3人をフロントに、ブレなく安定したボトムを紡ぎ続ける職人芸を発揮する木村朝教、強弱や抑揚を変えながらも細やかなビートの滴を放ち続ける櫃田良輔をバックにしたバンドが創るサウンドは、“音の近未来的パレード”とも呼べそうなほどの華やかさと躍動感を提示。その瞬間にしか鳴らせない音の大切さや愉しさを自身で体感すると同時に、オーディエンスへもその心地良さを伝播させていく。解き放たれたグルーヴはオーディエンスの五感に反応し、さらなるうねりを生み出していく。
パブリック娘。を招き入れての「初恋とはなんぞや」「What's going on」では“ぶっつけの美学”(といったら恰好良すぎか)ならではのコラボレーションでフロアの温度を上昇。その終盤はやや緩い連係にもなりかけたが、そこはストリート的な感覚で乗り切っていく。何よりも音に揺られる楽しさに包まれた瞬間でもあった。
もう一組のゲスト、GOMESSは咆哮のように投げつけるフロウが印象的だが、刺々しさや痛切さの中に見え隠れする本質を問うよう。そこに城戸のヴォーカルとバンドのグルーヴが重なり、他ではあまり見られないようなパフォーマンスに、オーディエンスの興奮度もさらに高まったのではないか。
ゲストとの“一期一会”を披露する一方、メンバー自身もその時にしか鳴らせない音に愉しむ姿も。ヴォーカルフェイクを繰り出す城戸に普段とは異なる鍵盤アレンジで前奏を“仕掛ける”及川をはじめ、各メンバーそれぞれが互いに音を鳴らしながら会話を交わすような光景は、ライヴを満喫しているとともに自身のパフォーマンスに対してオーディエンスが納得出来るとの自信も感じているのだろう。楽曲だけではない、寧ろライヴこそが彼らの生命線ではないか、そんな思いが脳裏を往来しながら、体躯を走る爽快なグルーヴに身を委ねる自分がそこにいた。

アンコールまでライヴ・バンドの矜持を背負いながら、グッドミュージックを鳴らし続けた彼ら。ラストでは彼らの現在地とその行く先を示した重要曲「YES」で締めたが、個人的に最もヴォルテージが上がったのが「one」。“立ち止まって 前を向いて 今を睨みつけろ”とメンバー全員が眼前を直視して焚き付けるように挑んだ姿には、迫力という言葉だけでは片付けられない“凄味”も垣間見られた。
日に日に進化を伴っていく彼ら。あとは自身の音楽をどう伝播させていくかだ。来年4月には代官山UNITでのワンマンショウも決定した。メジャー・デビューはあくまでも通過点。そう語った彼らの意気込みがどのように具現化されるのか。彼らのさまざまな一期一会とそこから生まれるケミストリーの成り行きが気になるところだ。
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<SET LIST>
00 INTRODUCTION
01 スタイン
02 daylight
03 Naughty Boy
04 INFLUX
05 ゆれる指先
06 DROP
07 初恋とはなんぞや(guest with パブリック娘。)
08 What's going on(guest with パブリック娘。)
09 Reloop
10 one
11 MISTA B
12 City Light(guest with GOMESS)
13 Colorful
14 door
15 ポートレート(including phrase of“Abyss”by Especia)
16 stand alone(blue)
17 dream on
≪ENCORE≫
18 YES
<MEMBER>
CICADA are:
城戸あき子(vo)
木村朝教(b)
櫃田良輔(ds)
及川創介(key)
若林とも(key)
Guest:
パブリック娘。(斎藤辰也、清水大輔、文園太郎)(MC)
GOMESS(MC)

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