J1昇格としてはライバルといってもいい、昨季共にJ1からJ2へ降格したチームの戦い。
FC東京は高松が負傷により離脱したことで高さを目標とするサッカーからの変更を考えなければならなくなった。そこで組まれたのは、ロベルト・セザーを1トップに羽生、田邉、鈴木を3シャドーとする布陣。SBには阿部が先発を外れ、中村北斗が入った。
東京は開始早々、スローインからロベルト・セザーが今季初ゴール。だが、結局それ以降追加点を奪えず、いつものように、15分限定での出場を余儀なくされている途中出場の湘南・中村に同点弾を決められホームでの“勝点2”を失った。
湘南・反町監督のコメントに「1点を取ったので、どちらかというと、アンパイ・プレーに走ってくれたという印象を受けた」とあった。つまり、1点を先取してから相手に対して脅威を与える攻撃を仕掛けることが出来なかったということになるだろうか。また、反町監督は前半の途中から東京が自陣を固めたスタイルをとると手も足も出なかったと認めながら、自分たちのチームの良さを活かすための“攻撃”というストロングポイントを崩さずに取り組んだとも言っている。それが後半の得点に繋がったという。そして、「追いついて良しとするゲームだったと思う。大熊はこの後、勝点2を失ったと言うかもしれないが、我々としては価値ある勝点1を取れたゲームだったと思う」と語っている。
一方の大熊監督は「中盤や前線にけが人が続出し、チームの方向性を定めるという部分では試行錯誤が続いている」「これでいこうと前線を決めたところで怪我というのは、クラブとしても私としても未曾有のこと」「(高さがないとか)そういう意味ではやりたいサッカーもあるのですが、点を取る選手にある程度合わせないと」「精度や枚数、サイドバックの質も含めて『ダメだダメだ』と選手を取り替えていても、またバラバラになってしまうこともあるので、我慢が必要」といったように、まだ多少錯綜しているところが見える。「足元に収められる選手と裏に抜け出せる選手のバランスが悪いのではないか?」という記者の質問にも「そういうところにナオ(石川直宏)やペドロ(ジュニオール)がいないということで、後半に使うカードとして足元の選手というのがある。ご指摘の点は継承しなければならない」と、戦術や起用法に非常に悩みを抱えている印象を受けた。
試合に立ち返ろう。
東京は追いつかれた後、バランスを失い、攻撃も単純な放り込みなど、パワープレイを展開する状況も見られた。それは、本当に最終的な戦法であり、勝点3を奪う戦術ではない。先日の記事「大熊でいいのか」でも述べたが、昇格圏に入るためには、とにかく勝利数を増やすこと。“負けないサッカー”ではなく“勝つサッカー”をしなければならないのだ。1点を先制しても、多少のリスクを冒しても2点目、3点目を奪いに行くサッカーをしなければダメなんだということだ。逆に、大熊監督が掲げるのが、1点を獲ったあとは守り切るというサッカーだとしても、それを東京というチームが1年でJ1へ上がるための最善策と考えて徹底するのであれば(面白さは半減するだろうが)構わない。問題なのは、どちらにせよ、それがチーム認識として徹底されていない、浸透していないことだ。
一つ光明が見えたと思うのは、これも「大熊でいいのか」で述べたが、圧倒的な破壊力を持つ点取り屋の補強か、プレイスタイルの再考、あるいは、それを完遂するための劇薬としての監督交代、の3つあたりが得点、勝利への方策といううち、プレイスタイルの再考という点で、先発した田邉は評価していいと思われる。これがこれからの試合でコンスタントにパフォーマンス出来れば、ゴールへの連動性も高まってくる気もする。ただ、この試合でも田邉を下げてから失点したように、チームバランスを崩さないような選手起用が重要になってくる。たとえば、羽生が90分使えないとするなら、どこでチーム戦術を切り替えるのか、ハッキリとした指針を選手交代とともに送り出さなければならない。つまり、迷っている場合ではないのだ。ここまできたら、チームが一つの信念に従って、一体感を持ってやり抜く以外にないのだから。
ただし、7試合消化して2勝2敗3分で勝点9。得点4、失点6、得失点差-2というのは依然として厳しい。上位が混戦ということで挽回する可能性は十分にあるが、それでも首位の千葉(勝点16)との勝点差は7。終盤では残り試合数と勝点差が同数以上だと追いつくのは厳しいとも言われる。その意味で、7試合で勝点差7というのは一つのボーダーラインでもある。次節はアウェイで昨季の最終節で辛酸をなめた京都が相手。今季は京都もスタートダッシュに失敗した。それゆえ、いつも以上に必死に戦ってくるだろう。アウェイではあるが、ここで勝点3をしっかりともぎとってこれなければ、連勝の上昇気流などには到底乗れそうもない。そして、チームに劇薬を投入するデッドラインも、刻一刻と近づいていることもしっかりと意識しなければいけない。
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Jリーグディビジョン2 第13節
2011/05/22 味の素スタジアム
FC東京 1(1-0、0-1)1 湘南
【得点】
(東): ロベルト セザー(1分)
(湘): 中村(78分)
観衆:15,423人
天気:雨、弱風
<メンバー>
≪FC東京≫
20 GK 権田修一
33 DF 椋原健太
03 DF 森重真人
06 DF 今野泰幸
14 DF 中村北斗
02 MF 徳永悠平
10 MF 梶山陽平
11 MF 鈴木達也
27 MF 田邉草民 → 39 MF 谷澤達也(72分)
22 FW 羽生直剛 → 19 MF 大竹洋平(79分)
09 FW ロベルト セザー
01 GK 塩田仁史
26 DF 阿部巧
36 DF ジェイド ノース
04 MF 高橋秀人
32 MF 上里一将
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