ブラジリアントリオのゴールで、FC東京が開幕戦逆転勝利。
FC東京の2020年のJ1リーグの開幕戦は、アウェイでの清水戦。昨年もホーム&アウェイともに勝利したのをはじめ、近年負けなしという相性の良さはある清水だが、今季は横浜F・マリノスのアンジェ・ポステコグルー監督の下でヘッドコーチを務めていたピーター・クラモフスキーが清水の監督に就任。ポステコグルーが築いたマリノス・ライクな攻撃サッカーを掲げており、これまでのデータはあまりアテにならない。FC東京もACLプレーオフ、ACLグループステージ2戦の公式戦3戦を経験しているものの、4-3-3という新システムがJ1リーグで機能するのかはまだ未知数といったところ。快晴の日本平で2020年のJ1リーグの火ぶたが切って落とされた。
前半は70%前後のボール支配率を誇った清水が攻勢。右サイドの奥井、左サイドの西澤からティーラシン、金子、後藤らへと素早くボールを回すテンポよいサッカーは、以前の清水とは明らかに異なるテンポの良さ。ただ、FC東京も清水にボールをエリア周辺までは運ばせるものの、中をしっかり閉めて、決定的なシュートは打たせない。FC東京は前半はある程度様子見ということもあったのか、重心はやや低めで、前線のディエゴ・オリヴェイラ、レアンドロ、田川の連係があまり見られず。アンカーの橋本の横を使われ、高萩も前目のポジションでボールを散らそうとするも、効果的な供給が出来ず。40分過ぎにレアンドロとのワンツーでゴールエリア内へ侵入したディエゴ・オリヴェイラがシュートを放ったくらいが目立っただけで、あとは清水がミドルシュートを打っていた印象だ。
前半の勢いのまま、後半も清水が押し込む時間が続くと、47分に立田がハーフライン付近でディエゴ・オリヴェイラからボールをタイトな当たりから奪うと、そのこぼれ球を拾った西澤が前線へスルーパス。倒れ込んだディエゴ・オリヴェイラへのタックルがファールだとセルフジャッジをしてしまったのか、森重らがやや対応に遅れて、ティーラシンにパスが通ると、GK・林の動きを冷静に見て左へシュートを流し込んで、ホームの清水が先制点を挙げる。さらに加勢した清水は、中村や石毛などもよく走ってFC東京陣内へと攻め込むが、FC東京も何とか追加点を許さずに、最少得点差のまま耐える展開に。
FC東京は反撃の一手として、55分にアダイウトンを投入。すると、早速アダイウトンが室屋のロングフィードに反応し、DF・立田の裏を取って抜け出しGK・ネトヴォルピと1対1に。シュートはネトヴォルピの飛び出しで弾かれたアダイウトンは、そのこぼれ球を拾って右からクロスを送るが、ディエゴ・オリヴェイラのヘディングシュートは枠の上。59分には、Jリーグ初先発の中村帆高が左サイドからファーサイドへクロスを送るも、田川のヘディングはタイミングが合わずにこれまた枠の上へ。だが、徐々にFC東京が攻撃へのギアを高め、61分に高萩に代わりアルトゥール・シルバがブラジリアン・トリオへの供給源としてピッチへ送り出される。すると、70分にレアンドロがフリーで左からエリア内にドリブルで侵入したところを、立田がスライディングで倒して、FC東京がPKを獲得。ディエゴ・オリヴェイラが冷静に左隅にPKを決めて同点に追いつく。その3分後、FC東京陣内で田川が競り合ったこぼれ球をアルトゥール・シルバがレアンドロへパスすると、レアンドロは自陣から一気にドリブルを仕掛けてペナルティエリア付近まで進出。左にアダイウトン、右にディエゴ・オリヴェイラが並走するなか、ディエゴ・オリヴェイラ右から左へと斜めに横切ろうとする直前にレアンドロがスペースへパス。これをディエゴ・オリヴェイラが駆け込んできたアダイウトンへパスを渡すと、アダイウトンがGKの動きをよく見て浮かしたボールでゴールマウスへ流し込み、FC東京が逆転に成功。
さらに、田川に代わった紺野がドリブルで相手を翻弄しながら攻撃にアクセントをつけ、チャンスを演出。前半は良い距離感を保って攻勢を仕掛けていた清水だが、このあたりから前半から運動量も豊富だったゆえに疲労も見え始める。アディショナルタイムに奥井からのGK・ネトヴォルピへの不用意なバックパスに駆け寄ったレアンドロがボールを奪ってペナルティエリアへ。ここでまたもや立田のスライディングに倒れて、PKに。レアンドロ自らこれを冷静に左へ決めて、FC東京が3点目を挙げて、勝負を決した。
前半こそ停滞していたが、アダイウトン投入から流れが変わり、ディエゴ・オリヴェイラ、アダイウトン、レアンドロのブラジリアントリオがそれぞれ得点を決めるという幸先の良いスタート。序盤はアンカー役に苦しんでいた橋本も、前線の攻撃の圧力が増すことで、広範囲なスペースを機転を利かせて埋められるようになっていったのも大きい。そこには大学時代は“法政のメッシ”とも称された紺野というドリブラーや、アルトゥール・シルバが入ることで、さらに前への圧力とバランスが保たれたともいえる。
確かに後半終盤はFC東京の時間帯となったが、清水が先に追加点を挙げるような展開だったとしたら、ここまでの逆転劇はなかったかもしれない。後半にアダイウトンや紺野というジョーカー的存在を残しておいた戦術も一理あるが、それがしっかりと錬成された訳ではないゆえ、まだ諸手を挙げて喜ぶには早い。だが、さまざまな収穫もあった。初先発となった中村帆高は、ミスも見られものの、期待以上のパフォーマンスを見せてくれた。相手陣内へ侵入した際に、自分でグイグイ行くよりは周りを探してしまう遠慮がちな部分もあったが、今日のプレーぶりが継続出来るならば、ある程度起用出来る計算が立ちそうだ。ACLで運動量豊富に走った安部、この試合で出場した中村帆高やドリブラー紺野と、今季の大卒組は大いに期待が持てそうだ。
結果的には3得点を挙げたものの、清水はだいぶ厄介な存在に変貌しつつあった。今対戦では勝利を収めたが、後半のホームでの再戦でも同じように結果が上手くいくとは限らない。昨季のFC東京がホーム戦で横浜FMと対戦した際には4得点を挙げて勝利したが、最終節は逆に0対3で敗れて、リーグ優勝の瞬間を見せられた。清水が横浜FMと全く同じサッカーで、同じ道程を進む訳ではないだろうが、前半に見せた細かく繋ぐ攻撃サッカーが馴染み、決定力を増してくると、非常に怖い存在になり得る気がした。
とにもかくにも、初戦に勝ち点3、ブラジリアントリオがそれぞれ得点しての勝利というのは大きい。次節はホーム開幕戦。早速、昨季Jリーグ王者の横浜FMを迎え撃つ。王者は初戦黒星に終わっているため、勝利への執念も人一倍強く臨んでくるだろうが、スタートダッシュを決めるためにも、是が非とも勝ち点3を挙げ、連勝といきたい。
◇◇◇
【明治安田生命J1リーグ 第1節】
2020年02月23日(日)13:03試合開始 IAIスタジアム日本平
入場者数 17,549人
天候 晴 / 気温 14.6℃ / 湿度 23%
主審 荒木友輔 / 副審 聳城 巧、淺田武士 / 4審 勝又弘樹 / VAR 東城 穣 / AVAR 井上知大
清 水 1(0-0 / 1-3)3 FC東京
≪得点≫
(清): ティーラシン・デーンダー(47分)
(東): ディエゴ・オリヴェイラ(77分、PK)、アダイウトン(80分)、レアンドロ(90+2分、PK)
◇◇◇
【FC東京】
≪スターティングメンバー≫
GK 33 林 彰洋
DF 02 室屋 成
DF 03 森重真人
DF 04 渡辺 剛
DF 37 中村帆高
MF 07 三田啓貴 → アダイウトン(55分)
MF 08 高萩洋次郎 → アルトゥール・シルバ(61分)
MF 18 橋本拳人
FW 09 ディエゴ・オリヴェイラ
FW 20 レアンドロ
FW 27 田川亨介 → 紺野和也(81分)
≪サブスティテューション≫
GK 13 波多野豪
DF 32 ジョアン・オマリ
DF 49 バングーナガンデ佳史扶
MF 40 平川 怜
MF 45 アルトゥール・シルバ
FW 15 アダイウトン
FW 38 紺野和也
≪監督≫
長谷川健太
◇◇◇
【2020 明治安田生命J1リーグ FC東京 試合日程】
第01節 02月23日(日)13:00〇FC東京 3-1 清 水(A・アイスタ)
第02節 02月29日(土)14:00 FC東京✕横浜FM(H・味スタ)
第03節 03月08日(日)14:00 FC東京✕浦 和(H・味スタ)
第04節 03月14日(土)15:00 FC東京✕C大阪(A・ヤンマー)
第05節 03月18日(水)19:00 FC東京✕広 島(H・味スタ)
第06節 03月22日(日)15:00 FC東京✕ 柏 (A・三協F柏)
第07節 04月03日(金)19:00 FC東京✕横浜FC(H・味スタ)※1
第08節 04月12日(日)14:00 FC東京✕大 分(H・味スタ)
第09節 04月18日(土)14:00 FC東京✕湘 南(H・味スタ)
第10節 04月26日(日)17:00 FC東京✕G大阪(A・パナスタ)
第12節 05月01日(金)19:00 FC東京✕神 戸(H・味スタ)
第13節 05月10日(日)14:00 FC東京✕鳥 栖(H・味スタ)
第11節 05月13日(水)19:00 FC東京✕鹿 島(A・カシマ)
第14節 05月16日(土)14:00 FC東京✕名古屋(A・豊田ス)
第15節 05月23日(土)14:00 FC東京✕仙 台(H・味スタ)※2
第16節 05月31日(日)14:00 FC東京✕札 幌(H・味スタ)
第17節 06月13日(土)19:00 FC東京✕川 崎(A・等々力)※3
第18節 06月20日(土)19:00 FC東京✕大 分(A・昭和電ド)※4
第19節 06月27日(土)19:00 FC東京✕浦 和(A・埼 玉)
第20節 07月01日(水)19:00 FC東京✕鳥 栖(A・駅スタ)
第21節 07月04日(土)19:00 FC東京✕神 戸(A・ノエスタ)
第22節 08月15日(土)18:00 FC東京✕横浜FC(A・ニッパツ)
第23節 08月23日(日)19:00 FC東京✕湘 南(A・BMWス)※5
第24節 08月29日(土)19:00 FC東京✕広 島(A・Eスタ)※6
第25節 09月11日(金)00:00 FC東京✕清 水(H・味スタ)※7
第26節 09月18日(金)00:00 FC東京✕G大阪(H・味スタ)※8
第27節 09月26日(土)00:00 FC東京✕川 崎(H・味スタ)※9
第28節 10月03日(土)00:00 FC東京✕札 幌(A・札幌ド)※10
第29節 10月17日(土)00:00 FC東京✕名古屋(H・味スタ)※11
第30節 10月31日(土)00:00 FC東京✕仙 台(A・ユアスタ)※12
第31節 11月07日(土)00:00 FC東京✕C大阪(H・味スタ)※13
第32節 11月21日(土)00:00 FC東京✕鹿 島(H・味スタ)※14
第33節 11月28日(土)00:00 FC東京✕横浜FM(A・日産ス)※15
第34節 12月05日(土)00:00 FC東京✕ 柏 (H・味スタ)
※01 ACLプレーオフ敗戦の場合、4月04日(土)14:00(味スタ)に変更
※02 ACLラウンド16進出の場合、5月22日(金)19:00(味スタ)に変更の可能性あり
※03 ACLラウンド16進出の場合、6月12日(金)19:00(等々力)に変更の可能性あり
※04 ACLラウンド16進出の場合、6月21日(日)19:00(昭和電ド)に変更の可能性あり
※05 ACL準々決勝進出の場合、8月21日(金)19:00(BMWス)に変更の可能性あり
※06 ACL準々決勝進出の場合、8月30日(日)19:00(Eスタ)に変更の可能性あり
※07 9月11日(金) or 9月12日(土) or 9月13日(日)
※08 9月18日(金) or 9月19日(土) or 9月20日(日)
※09 9月26日(土) or 9月27日(日)
※10 10月03日(土) or 10月04日(日)
※11 10月17日(土) or 10月18日(日)
※12 10月31日(土) or 11月01日(日)
※13 11月07日(土) or 11月08日(日)
※14 ACL出場クラブが決勝進出の場合、10月28日(水)に変更の可能性あり
※15 ACL出場クラブが決勝進出の場合、11月03日(火・祝)に変更の可能性あり
◇◇◇