*** june typhoon tokyo ***

CARLEEN ANDERSON SOUL TRIO@BLUENOTE TOKYO

■ カーリーン・アンダーソン・ソウル・トリオ

Carleenanderson_01


 父親がボビー・バード、母親がヴィッキー・アンダーソンという、共にジェームズ・ブラウン・バンドに欠かせない存在だった二人から誕生したのが、カーリーン・アンダーソン。90年代アシッド・ジャズ勃興期にヤング・ディサイプルズを結成して、アシッド・ジャズ・ムーブメントのパイオニア的な役割を担った。ヤング・ディサイプルズ自体は1枚のアルバムをリリースしたのみで解散するが、その後ソロで活躍。一時期はザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズのフィーチャリング・ヴォーカルとして1999年のベスト・アルバム『トランク・ファンク』に参加。その作品内でも、ヤング・ディサイプルズ時のヒット「アパーレントリー・ナッシン」をカヴァーしている。2005年には、ポール・ウェラーやジョセリン・ブラウンを招いたソウル・アルバム『ソウル・プロヴィデンス』をリリースしている。

 以前、カーリーン・アンダーソンを見たのは、インコグニートの2005年末のライヴだったか(その時の記事はこちら)。ヴォイス・オブ・インコグニートのメイザ・リークも同じステージに上がったが、小さいカーリーンの方が迫力で長けていたのを記憶している。それから7年、今度は自身のソロ・バンド名義での登場となった。

 ステージ左にはグランドピアノが横たわり、中央にオルガンベース/キーボードのラッド(フィーチャーリングとして記されているということは、実力者であり、相当の信頼を置いているという証拠だろう)、右に初来日というドラムのグイド・メイを配置。ギターもベースもないが、音の厚みやもの足りなさを全く感じさせないのは、ひとえにカーリーン・アンダーソンの気迫のこもった歌唱に尽きる。ソウルフルではなくて、生身のソウル。小柄ながらも驚くほどの生命力と神秘性、いや野性美といってもいいような、生々しい活力が漲るパフォーマンスは、オーディエンスの息を呑み込ませ、圧倒させ、驚嘆へと突き動かす。低音のスピリチュアルな歌唱から、全身からエネルギーが放出されるような熱気に満ちたハイトーン・ヴォーカルまで、彼女の魂が剥き出しになる間際まで削ぎ落とされたストイックさと情念が心拍を高めるエナジーが鍔迫り合いをするかのような興奮。それは、精神上の官能や恍惚とでもいえそうな生の衝動による、人間味溢れるストーリーでもあった。

 息の合ったラッドのキーボード、過不足ない裏方に徹したグイドのドラムとで織りなすサウンドは、実にバランスがとれている。バランスといえば、カーリーンの見事なところは、各曲の冒頭では崇高なヴォーカル・ワークを存分に放ち続けるややオルタナティヴな面もありながら、決してスピリチュアルなベクトルへ行き過ぎないところか。そこはJBバンドと深い係わり合いを持っていた両親の遺伝子がそうさせるのか、しっかりとグルーヴィンなものへと落とし込める。普段の大人しそうなキュートな顔立ちが、非常に肉感的で味のある表情になるのも、まことにファンキーだ。

 確かに、スピリチュアルに踏み込む寸前というところもあるし、変則的なオルタナ要素もあって、キャッチーとは言い難い。ヤング・ディサイプルズやザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズでのグルーヴィンな彼女を強く意識していた人は面を食らったかもしれないし、人によってはとっつきにくさもあるだろう。だが、彼女の声から伝わるのは、紛れもないソウル(魂)の叫び。キャッチーでなくとも、その声に感化されることは間違いなかった。


◇◇◇


<SET LIST>

00 INTRO~SPOKEN WORD
01 AS WE COME TO BE (CONTEMPLATION VERSION)
02 TRUE SPIRIT (LAID-BACK VERSION)
03 MAMA SAID (SWING VERSION)
04 YOUR HEART WILL KNOW (UNRELEASED)
05 FREE (TRIBUTE COVER)(Original by Deniece Williams)
06 WOMAN IN ME (BLESSED BURDEN VERSION)
07 APPARENTLY NOTHIN' (CHURCH VERSION)
≪ENCORE≫
08 DON'T LOOK BACK IN ANGER (CARLEEN PIANO SOLO)(Original by Oasis)
09 WHEN THE LIGHT SHINES (GOSPEL TUNE)


<MEMBER>

Carleen Anderson(vo,p)
Rad.(organ bass,key)
Guido May(ds)



◇◇◇

Carleenanderson_02

【追記】

 上記で「父親がボビー・バード、母親がヴィッキー・アンダーソンという、共にジェームズ・ブラウン・バンドに欠かせない存在だった二人から誕生したのが、カーリーン・アンダーソン」……と記したのだが、正確には二人から誕生した訳ではなく、ボビー・バードは義理の父。なので、母方姓の“アンダーソン”を名乗っている訳だ。

 そして、生まれはアメリカ(テキサス・ヒューストン)。ヤング・ディサイプルズのイメージが強いとUKじゃないの?となるが。インコグニートにフィーチャーされたのも、一時期ブルーイが、「UKの音楽の質は格段に向上、USのそれに充分対抗出来るが、ヴォーカリストだけは、アメリカのシンガーが長けているところがある」といってアメリカのシンガーを多分に迎え入れていたから(今は各地にUSに対抗出来うるシンガーが出てきたということでそういった偏重はないが)。思えば、メイザ・リークもアメリカ(ボルティモア出身)だ。


 
 
 
 
 






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