

Especiaは儚い夢=“Mirage”だったのか。
先日、体調不良で1月9日のライヴに行けなかったことの腹いせに「談話室 スパイス ~ Flavor of Especia ~」なる記事をアップし、「次はどんな楽曲を披露してくるのか、リスナーを裏切った作風でチャレンジしてくるのか。そういった楽しみもあるのがEspeciaですので、新作を待ちながら、ライヴでの成長も見届けていきたいところ」との言葉で締めたのですが、それから5日も経たない1月17日に「Especiaが3月末をもって解散」との発表がありました。
1月17日といえば、昨年のこの日には新木場・スタジオコースト公演があり、メンバー3名の卒業が発表された日でもありました。ぺシスト&ペシスタ(=Especiaのファン)にとっては「あれから1年か…」と感慨に耽っているところに飛び込んでくるニュースとしてはあまりにもショッキングなものだったといえるでしょう。
ただ、これは昨年にも言及したと思うのですが、“3月末に解散する”ということが発表されただけで、まだEspeciaは何も終わってはいません。もちろん“たられば”を言ってもキリがないことは分かっていても、つい何かと言いたくなったり、憶測したりしてしまうのは致し方がないところだと思います。しかしながら、もうこれで活動の場が閉ざされた訳ではありません。少なくとも3月には福岡、大阪、名古屋、東京の4都市にてフェアウェルツアーが開催されます。彼女たちの勇姿や有終の美を肉眼に焼き付ける機会は残されているのです。そして、どんなことがあろうとも、彼女たちの楽曲は今すぐにでも聴くことが可能なのです。さまざま言うのは解散してからでも全く遅くはありませんし、解散へ向けて時を進める時に解散の理由を聞ける機会があったとしても、それほど興味を持てないなというのが正直な想いです。

解散について一つ言えるとしたら、昨年の新木場・スタジオコーストで真っすぐ前を向いて「一人になっても私はEspeciaを辞めない」と鋭い眼差しで決意を吐露したリーダー冨永悠香を含めたメンバーとスタッフとの間で話し合われて出された結論ということであれば、“辞めよう”ではなく“辞めざるを得ない”ということなのでしょう。経済的な理由が大きな部分を占めているとは思いますが。
そして、メンバーが抜けたからとか、路線を変更したからなどが大きな打撃となったとの声もあるようですが、それはあくまでも要素の一つではありますが、直接的な原因ではないと思います。では、旧体制のままであれば発展したのか? と言えば、イエスとは断言は出来ないでしょう。もちろんノーとも言えません。
それぞれファンの嗜好や趣味があるので、これが正解というものは存在しないでしょう。それでも、ブラック・ミュージックのグルーヴを下敷きにしながら過去と未来を行き来する術を、時にモダンに、時にエキセントリックなアプローチで駆使することが出来るEspeciaチームにおいて、楽曲は高品質を維持し、トライポッド体制となってからは以前にはあまり見られなかった新たな魅力も増えていました。人によってはアイドル性を欠き、推進力を失ったとの見方もあるようですが、失った代わりに得たものも多かったはずです。敢えて言うなら、プロデュースとマネジメントが思い描いた通りに運ばなかったということでしょう。極端に言えば、楽曲のクオリティや魅惑的な音楽性がなくとも、プロデュースやマネジメントに長けていれば、過大な評価を得られることも稀ではありません。全てがそうとは言えませんが、秋元康プロデュースが成功しているのは、そういうことだと思います。

ところで、個人的な感覚でいうと、そもそも自分はEspeciaをいわゆる“アイドル”としてではなく、彼女らも自称しているように“ガールズ・グループ”として捉えていて、一過性ではなくパーマネントなグループとして成長して欲しいと願っていました。女性のグループゆえ、途中で結婚や出産などさまざまな事柄が起こり、活動を休止せざるをえなくなっても、時を見計らって、再び、三度と再始動すればいいとも考えていました。ですから、意外とこの解散の発表が全ての終わりを意味するとも思えていません。楽観主義過ぎるのかもしれませんが、延命するだけのために命を削るようにして無理にグループを存続させたところで幸福な結末が待っているとも思えませんし、メンバーを含めて続けられないと決めたのなら、単にグループとして今は継続するタイミングではないということなのでしょう。
解散後は生で観る機会も消え、新たな楽曲にも出会えることはありません。しかしながら、これまで彼女たちが歌い、踊った楽曲たちが消える訳ではありません。楽曲にもブレスが必要なように、グループとしてブレスをとる時期がやって来たということなのだと思います。再始動するという確約などは何もありませんから、ここで結果的に終わりを告げることになるかもしれませんが、グループとしての生や夢は消えても、曲や歌は残ります。

いい意味での大人の悪ふざけをガールズ・グループを通じて提示してきたEspeciaクルー。ファッションやアイテム、ヴィデオや特殊なライヴ・スタイルなどもそうですが、3名の卒業を発表した1年後に解散を発表するなど、元来ギミックを駆使することでファンを驚かせてきたとも言えます。メンバーの今後がどうなるかは知る由もないですが、劇場版『さよなら銀河鉄道999~アンドロメダ終着駅~』の一場面「私はメーテル。鉄郎、999に乗りなさい」ではないですが、2、3年後の1月17日に再び「私たちはエスペシア。ぺシスト&ペシスタ、正気じゃいられないくらい踊る準備を始めなさい」みたいな告知がされないとも限りません。前回ツアーのイントロダクションでテーマ曲が使われた『宇宙戦艦ヤマト』も続編にて“これが最後のヤマト”とか煽りながら、その後“永遠に”“完結”“復活”“追憶”“星巡る”と何度も続編を繰り返してきたではないですか。ギミックということでは、ギミックの大権化とも言える? プロレスラーなどは華々しい引退興行を打っておきながら、幾度となくいけしゃあしゃあと復活を繰り返してますよ(笑)。まあ、それは冗談としても、一時期のブレスが成長と成熟を豊かにして、機を熟した頃に再燃という可能性は0ではありません。他のグループでは考えられない“遊び”のスタイルでファンたちが振り回されてきたEspeciaだからこそ、最後までギミックを楽しもうと思います。それが今の率直な感想です。翻して、解散後は毒舌吐きまくりになるかもしれませんが……(苦笑)。

とかなんとか言っては来ましたが、なかなかピシッと纏まらないので、最後はこの曲で締めたいと思います。
ARCADIA「GOODBYE IS FOREVER」
アーケイディアはデュラン・デュランのサイモン・ル・ボン、ニック・ローズ、ロジャー・テイラーが1985年に結成したグループで、この「グッバイ・イズ・フォーエヴァー」はアルバム『ソー・レッド・ザ・ローズ』(邦題『情熱の赤い薔薇』)からの2枚目のシングルです。“さよならは永遠なんだ”というのは、どんなものにも終わりがある。形あるものいつかは壊れる。だからこそ、終わりを迎えることで永遠になることを始められる……という哲学的な解釈も出来る詞が印象的です。
ピリオドを打つという意味は全て終焉に直結することではないでしょう。ピリオドを打った後には、また新たなセンテンスを生み出すことは出来ます。カンマやピリオドが表われない文は、いつしか冗長になり、飽きられ、目が追わなくなります。生まれては消え、消えては生まれの繰り返しが“生”の必然だとすれば、ピリオドを自ら打てることはネガティヴなことばかりではありません。
何はともあれ、3月末までの“生けるEspecia”を存分に愉しみ尽して行きたいと思います。

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【〈Especia the Second〉(新体制)以降の記事】
・2016/06/25 ESPECIA@渋谷Club asia
・2016/08/12 Especia「Mirage」
・2016/08/28 Especia@渋谷CHELSEA HOTEL
・2016/09/11 Especia@O-nest
・2016/10/16 Especia@六本木VARIT
・2016/11/13 Let's Groove@六本木VARIT
・2016/11/27 Especia@六本木VARIT
・2016/12/24 Especia@六本木VARIT
・2016/12/25 Especia@HMV & BOOKS TOKYO
・2017/01/13 談話室 スパイス ~ Flavor of Especia ~
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