

音楽レビューサイト「3055」に寄稿したレビューの第3弾です。
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≪2014年掲載分≫
■Janelle Monae/The Electric Lady
[ 2013 ] Warner
古代と未来を繋ぐアフロ・フューチャリズムをテーマにした『ジ・アークアンドロイド』で喝采を浴びた“クイーン・オブ・フューチャー・ソウル”、ジャネール・モネイ。その成功もあってか、この2作目にはプリンス、エリカ・バドゥ、ミゲル、エスペランサら豪華な面々が集った。
だが、その豪華客演陣に浮かれず、あくまでも前作の続編として着手。それはオーケストラによるオーヴァーチュアやインタールード、組曲風の構成のほか、前作同様“Suite~”と区切られた章立て作風からも窺える。
リーゼントヘアにタキシードという強烈なルックス同様、楽曲も多彩で独創的。その享楽的な娯楽の下、揺るがない信念をぶちまけているのが痛快だ。エリカ客演の“Q.U.E.E.N.”や“Electric Lady”では、縛られた女性像からの解放が揚々と謳われる。
壮大なスケールで描くエンタテインメント絵巻。娯楽の裏側にある社会への鋭い視点に唸らされる作品だ。
Jan 09 ,2014 UP (Baseball Mania)
1. Suite IV Electric Overture 2. Givin Em What They Love (feat. Prince) 3. Q.U.E.E.N (feat. Erykah Badu) 4. Eletric Lady (feat. Solange) 5. Good Morning Midnight (interlude) 6. Primetime (feat. Miguel) 7. We Were Rock & Roll 8. The Chrome Shoppe (interlude) 9. Dance Apocalyptic 10. Look Into My Eyes SUITE V 11. Suite V Electric Overture 12. It’s Code 13. Ghetto Woman 14. Our Favorite Fugitive (interlude) 15. Victory 16. Can’t Live Without Your Love 17. Sally Ride 18. Dorothy Dandridge Eyes (feat. Esperanza Spalding) 19. What An Experience
■SOULCHEF/Classics
[ 2013 ] GOONTRAX
世界は広いようで狭い。また逆も真なり。音楽を深く好む者でなくとも、自身に衝撃を与えた音楽に出会った時、音楽は一瞬にして国境や人種、ジャンルを超越するから面白い。ニュージーランド・オークランド出身のMCもそんな感覚を経験したに違いない一人だ。
当初は自国産ヒップホップに夢中だったが、90年代USヒップホップとの出会いで開眼。ジャズやソウルに傾倒し、自国シーンを世界標準へとのしあげるべく、ネットを通じて海外のアーティストをプロデュースすることで名を挙げた。2010年の初作『Escapism』発表後は“NZのNujabes”と評判に。それから3年後、初のベストとなるのが本作。
フロウやトラックは冷温どちらにも振り幅があるが、走るビートはどれもグルーヴィ。肉をえぐるようなハードコアとは無縁だが、耳をすり抜けるだけではない、趣深く洗練されたヒップホップを刻む。レトロだが洒脱で新鮮。細胞までグルーヴを浸透させそうだ。
Jan 30 ,2014 UP (Baseball Mania)
1. Eyes Like Blue Skies feat. Need Not Worry 2. Franki Valli feat. The Outfit 3. Drifting In A Daydream feat. Need Not Worry 4. When I Close My Eyes feat. Tunji 5. Bad Bad Whiskey feat. Home Brew 6. California feat. Nieve & Tunji 7. Breathless feat. Hy-Definition 8. Tonight feat. Deep Foundation & Ashley Robles 9. How We Do feat. Nieve & Ine 10. Say Somethin' feat. Nieve, Noah King, Adub & Tunji 11. Proud Of Me feat. Nieve & Marie 12. Dreams feat. Need Not Worry & Ine 13. Hope feat. Marie, Nieve & Noah King 14. Never Been in Love Like This feat. Noah King, Nieve, Adub & Tunji 15. Blind Man See feat. The 49ers 16. Sentimentally Madd feat. Need Not Worry
■Nik West/JUST IN THE NIK OF TIME
[ 2013 ] SWEET SOUL RECORDS
大仰な煽り文句は時に食傷気味となると知りつつも、『シアトル・タイムズ』による“プリンスとエリカ・バドゥがファンキーなベースラインの上で出会った”との賞賛にも頷ける、アリゾナ州フェニックス出身のベーシスト/シンガーのアルバム。ブーツィ・コリンズのベース講座にはゲスト講師としても招かれる才女だ。
ソウル、ファンク、R&Bあたりをスムーズに横断する楽曲は全編高い質を誇る。腹に響くグルーヴィなベースはもとより、曲により表情を変えるヴォーカルにも魅力を感じた。
ファットでファンキーなベースが強烈なインパクトを与える“Forbiddenn Fruit”を聴けば一気にプリンスを想起するが、“Black Beauty”“Be Okay”あたりの佇まいはジル・スコット風味のジャジィなネオ・ソウル。その点からも、ロバート・グラスパーやエスペランザ・スポルティングら近年のトレンドともいえる“ジャズ×R&Bの邂逅”をファンキーな切り口で提示したといえるか。
モデルの経験もある才・美備えたポスト・エスペランザ最右翼の今後に要注目だ。
Mar 05 ,2014 UP (Baseball Mania)
1 Wait a Minute 2 Forbidden Fruit 3 Do What You Gotta Do 4 Who's in the Mirror 5 Eyes Closed 6 Just in the Nik of Time 7 Written All Over Me 8 Black Beauty 9 Be Okay 10 Never Forget to Love 11 Black Beauty [Live] (Japan Bonus Track) 12 Forbidden Fruit [Live] (Japan Bonus Track) 13 Superwoman [Live] (Japan Bonus Track)
■ED MOTTA/AOR
[ 2013 ] P-Vine
巨漢で髭面と一見コワモテ風だが、音を鳴らすとそれに陶酔し、客を楽しませるアドリブには茶目っ気たっぷり。2003年のインコグニートのブルーイとの来日公演での彼を目の当たりにし、大きなインパクトを受けたことを覚えている。
そのブラジリアンのエヂ・モッタが、冠名通りの“ザ・AOR”というべき作品を作り上げた。レコード収集家として知られ、山下達郎を”神”と仰ぐ親日家による、自身がよく耳にしたという80年代隆盛のAORサウンド・マナーを踏襲した、爽やかな夏の涼風のような一枚だ。
デヴィッド・T・ウォーカーやブルーイらの共演も手伝って、幼少期から親しんだAORサウンドに思うがままに委ねた歌いぶりとともに、エレガントなムードが充満。何より癒しと興奮とを適度に行き来する絶妙のグルーヴがたまらない。スティーリー・ダンやボビー・コールドウェルあたりに目がない人はもちろん、良質なシティ・ポップ好きにも薦められる好盤だ。
Mar 13 ,2014 UP (Baseball Mania)
1. PLAYTHINGS OF LUV 2. SIMPLE GUY 3. LOST IN THE NIGHT 4. DONDI 5. SMILE 6. 1978 (Leave The Radio On) 7. DRIED FLOWERS 8. AOR 9. FARMER'S WIFE 10. MAIS DL QUE EU SEI 11. MARTA (Alternate Piano solo) 12. LATIDO 13. DONDI (Alternate Guitar intro) 14. A ENGRENAGEM
■一十三十一/Snowbank Social Club
[ 2014 ] Billboard Records
シティ・ポップを極めたといっていい。『CITY DIVE』から続く、一十三十一(ヒトミトイ)のアーバン路線第3弾。街、海ときて、本作は冬が舞台。前作ではウェットスーツを着ていたジャケットも、真冬のゲレンデに衣替え。バブル時代に登場したホイチョイ映画的な世界観で、リゾートでのラヴアフェアを演出してみせた。
デザインのみならずサウンド、言葉選びをみても、見事にそのムードを踏襲。甘酸っぱい胸キュンな青春群像を、あくまでもオシャレに、トレンディに描き出す。まさに『私をスキーに連れてって』の世界へタイムワープさせたような出来だ。彼女の歌唱は媚薬系とも呼ばれるが、当時のトレンド・アイコン、ユーミンとどこか声の質感が似ている気も。そのあたりもシティ・ポップとの融和性をもたらした一因かもしれない。
とはいえ、単なる焼き直しに終わらないのが傑作のゆえん。クニモンド瀧口(流線型)やtofubeatsほか気鋭クリエイターが2010年代としてのシティ・ミュージックにしっかりとドライヴしている。
近年着目される80年代ポップス。閉塞感ある時代だからこそ、思い切ってトリップしてみてもいいのではないか。
Mar 26 ,2014 UP (Baseball Mania)
01 Snowbank Social Club 1 02 Catch Me in the Snow ~銀世界でつかまえて~ 03 Night Flight Telephone Call feat. PUNPEE 04 Winter Rouge Mellow 05 Silver Wind ~移りゆく季節~ 06 Snow Storm Loneliness 07 Frozen Horizon 08 Chocolate Neverland 09 Diamond Dust 10 Snowbank Social Club 2 11 Park Suite feat. BTB 12 Awakening Town
■Pharrell Williams/GIRL
[ 2014 ] Sony
ダフト・パンク“Get Lucky”やロビン・シック“Blurred Lines”をはじめ、八面六臂の活躍の2013年。年明けてのグラミーで4部門で受賞を果たしたファレル・ウィリアムスが『イン・マイ・マインド』以来約8年ぶりにアルバムを発表した。随分と間隔が空いたが、それは多忙ゆえのことで、ブランクとは無縁なのは言わずもがな。ソロ2作目では、2010年代中葉の主流になりうる近未来ディスコ・ファンクを届けてきた。
ゴスペル風多幸感溢れる大ヒット作“Happy”をはじめ、ホーンとファルセットの高揚が胸躍らせ、マイケルがちらつく“Brand New”、ダフト・パンクとの邂逅がもたらしたようなエフェクト使いの“Gust Of Wind”など、既聴感を親近感へとシフトさせつつ古臭さを感じさせない手合いは見事。旧き良きディスコ、ソウルを手本に、新旧最良のバランス感覚で“今”という時流にかなった音を導き出している。
しばらくの好調を予感させる傑作といえよう。
Apr 08 ,2014 UP (Baseball Mania)
1 Marilyn Monroe 2 Brand New feat. Justin Timberlake 3 Hunter 4 Gush 5 Happy 6 Come Get It Bae 7 Gust of Wind 8 Lost Queen 9 Know Who You Are Duet with Alicia Keys 10 It Girl
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以上です、キャップ。


