病気や怪我をした木々に 包帯を巻いたりして
ケアをされていた京都府立植物園の桜もいたけれど
数年前に
桜色の花びらをいっぱいつけていた苔むした老木
切ない切り株の姿になって
ふんばっていた頃を知っているからこそ 切なくて
あのとき 桜と一緒にみつめたブランコは
同じにいて
あのとき
錆ついていたすべり台は
ぴかぴかに塗り直してあったけれど
桜の風景と一緒に想いを馳せたあの時間は
あの時だけで終わって
二度と同じ風景は見られなくなって
童話「むっつりケンの歌」に登場した
じさまと呼ばれた むっつりな少年も
ブランコと
滑り台と
一緒の風景に
この桜もいたのかな
この老木の桜を
知っているひとだけの切なくて思いかな
苔むした老体なのに ふんばってふんばって
電線に届きそうなくらいの背丈まで枝をのばして
斜めな感じで 両手を広げて花を咲かせていた桜
ブランコ越しにみつめたり
すべり台越しにみつめたり