ストロッツィ宮の中庭からの画像が残っていた。
ヴェッキオ宮にもパッツィ修道院にも、回廊のようなバルコニーが廻っているが
ここは、邸宅規模なので、
まさに、ジュリエットがお付の婆やに、せかされているシーンが浮かんだ。
外の真夏の日差しも別世界に涼やかな、そよ風が揺らいでいた。
音も響いて、集音効果もあるようだ。
ここは、行く予定には入れていなかったが、
その時期、フィレンツェの街角の至る所に
ボッティチェッリの描いたオリーブの王冠を被った女神が貼られていたのだ。
一際大きい、はためく幟に導かれるように入ったら、
ボッティチェッリの企画展だったのだ。
ウフィーツィの所蔵のようだったが、
二時間、並んで待つこともなく”春”や”ヴィーナス”とは、
また違った女神に出逢えたのだ。
メジィチ家の紋章とオリーブと思われる植物に包まれた女神は
甘すぎずに斧を持って精悍でなかなか、立ち去れなかった。
しかし、あの、ひんやりとした、静けさは、石造り独特のような気がする。
この記憶は、そこに揺らめいていた草花も含めた
まるごとでの出逢いであろう。
初めての”ヴィーナス”との出逢いは、まだ、床が板張りで
歩くとミシミシ云って、今のような、防御のガラスもなく、見張りの監視員もなく
空調もなくて、真夏の体育館のようでした。
いくら外で二時間待っても、中に入ると人に邪魔されることもなく
初恋の人に出逢えたような気分で、長い間座っていました。
その時の体感温度と一緒に床の音まで、まるごと、そっくり、引き出しのなかにある。
ものすごく、たくさんの引き出しがなくてもいいけど
簡単に消えていかない、そんな引き出しを増やせるような
そんな出逢いは大切にしたい。
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