富士フイルムホールディングス(HD)による米ゼロックス買収を取り上げた記事。
買収スキームについて。
「まず両社が出資する富士ゼロックスが、富士フイルムHDから富士ゼロックス株を6710億円で自社株買いする。さらにゼロックスが既存株主への特別配当で時価を下げ帳尻を合わせる。富士フイルムHDは得た6710億円でゼロックスが発行する新株を取得、全体の50.1%の持ち分を握る。その後富士ゼロックスはゼロックスと合併。合併後、新会社の経営権を富士フイルムHDが握る。
つまり、富士フイルムHDは実質“タダ”でゼロックスを傘下に収めるという仕組みだ。」
富士ゼロックスも含めた連結グループで見れば、グループ内で捻出した6710億円が、グループ外部である米ゼロックスへの出資に当てられるわけですから、「実質“タダ”」といえるのかどうか...。
ただし、米ゼロックスの株主に対して支出されるのではないので、米ゼロックスを富士フイルムHDに連結したあとは、6710億円が連結グループ内に戻ってくることになります。
富士ゼロックスへの持分が75%から50.1%に減るのと交換に、米ゼロックスの50.1%の持分を取得したということになるのでしょう。交換だから、資金の流出はないわけですが、「タダ」とはいえないでしょう。
会社のプレスリリースによると、自社株買いにより、富士ゼロックスはいったんゼロックスの100%子会社となり、富士フイルムHDの単独決算では、子会社株式売却益が発生するそうです(連結では消去)。税金面では不利な取引のようにも思われますが、何かからくりがあるのでしょうか。
富士フイルムホールディングスによるゼロックスコーポレーション株式の50.1%取得 及び富士ゼロックスとゼロックスコーポレーションの経営統合並びに特別利益 (子会社株式売却益) の計上に関するお知らせ(富士フイルムHD)(PDFファイル)
「7. 今後の見通し
• 本件経営統合が成立した場合、新富士ゼロックスの連結子会社化後の当社連結業績に、本件経営統合の成果が中長期にわたってプラスに寄与すると見込んでいます。
• 本件経営統合が成立した場合、下記Ⅱのとおり、当社単独決算において、富士ゼロックスの株式売却益を認識しますが、 当社連結決算においては当該売却益は消去されます。
• 本件経営統合に関して、当社の2018 年3 月期の連結業績に与える影響はありません。」
「Ⅱ. 特別利益(子会社株式売却益)の計上
上記「Ⅰ. 2.本件経営統合の方法」(ii)に記載のとおり、富士ゼロックスは、当社から当社が保有する富士ゼロックスの発行済株式総数の75%を自己株式として取得し、当社はその対価として6,710 億円を受け取ります。 この結果、当社は、単独決算において、2018年度第2 四半期中(予定)にて、約5,000億円の株式売却益を計上する見込となりました。なお、上記Ⅰ-7のとおり、当社連結決算において当該売却益は消去されます。」
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通りすがりの会計士
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