会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

東芝決算「限定適正」目指す=10日期限へ監査法人が2案提示(時事より)

東芝決算「限定適正」目指す=10日期限へ監査法人が2案提示

東芝の監査人であるPwCあらた監査法人が「不適正」と「限定付き適正」のいずれかを意見表明するとの案を会社に示したという記事。

「東芝は米原発子会社ウェスチングハウス(WH)の巨額損失の認識時期と会計処理をめぐり、PwCあらたと対立している。PwCあらたの国内監査部門は東芝の主張に一定の理解を示しているが、WHを担当する米国部門は厳しい姿勢だ。米国部門の判断次第では「不適正」が出る可能性がある。東芝としては、東証の上場廃止基準に抵触する恐れがある「不適正」ではなく、基準に該当しないとされる「限定付き適正」を得たい考え。」

日刊工業新聞の記事では、「限定付」と「無限定」の2択でしたが、こちらは「不適正」と「限定付」の2択で、同じ2択でも影響は全然違います。日刊工業の記事で東芝の株価は上がったようですが、不正確な記事だったのでしょうか。

また、「米国部門の判断次第では「不適正」が出る可能性」というのは、ちょっと不自然です。10日にあらたが監査報告書を出すためには、子会社の監査人(米国のPwCなど)からの監査結果報告(あるいはそのほぼ確定した案)は、今の時点で受領済みで、その結果を受けて、親会社監査人であるあらたが東芝の連結決算に対する最終的な意見を検討するという段階までいっていないと間に合わないはずです。今となって、米PwCに何を決めてもらおうとしているのか、よくわかりません。(米PwCへの責任転嫁?)

記事によれば、「東芝は「限定付き適正」で決着を図る方向で調整に入った」そうですが、商品売買の値段を決めるときのように、会社と監査人の交渉で監査意見が決まるような書き方で、誤解を招きます。東芝に与えられた選択肢としては、決算を訂正するかしないかぐらいしかないのでは。

いずれにせよ、10日には正式発表されるそうですから、その少し前に、日経あたりから、結論が報じられるのでしょう。あらた監査法人には、どちらの意見になるにせよ、監査報告書ではたっぷりスペースをとって、監査利用者の納得がいくように、きちんとした説明をしてほしいものです。監査業界全体も注視していると思います。

東芝は一時9%高と急伸、前年度決算に「適正意見」との報道を好感(株探)

(補足)

朝日も時事通信と同じほぼ内容です。

東芝決算「不適正」か「限定適正」 監査法人が見通し(朝日)(記事前半のみ)

「関係者によると、PwCあらたは16年3月期に計上するべきだった金額を「数千億円」と伝えた。しかし、東芝と当時の監査担当だった新日本監査法人は「指摘に根拠がない」と修正に応じない姿勢だ。

このため、PwCあらたの監査意見は、100%のお墨付きを与える「適正」にはならない見通し。意見を先送りする「不表明」は避ける方針で、誤り部分以外は適当と認める「限定付き適正」と、決算の信頼性を否定する「不適正」のいずれかになる案を示した。」

結局「あらた」対「東芝+新日本」という構図となったようです。

あらたの監査意見だと、過年度決算で「数千億円」の損失計上もれがあったことになりますが、当局は、そのことについてきちんと調べるつもりがあるのでしょうか。

また、普通に考えると、会社と監査人との間でこれだけ大きな考え方の違いがあるとすれば、当然、新年度は監査契約を辞退するはずですが、後任監査人は用意しているのでしょうか。
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