M&A効果、開示義務付け 国際会計基準審議会
来年にも草案 投資家、リスク評価しやすく(記事冒頭のみ)
IASBが、M&Aに関する情報開示を拡充する会計基準案を2024年にもまとめるという記事。IASBの議長に日経が取材したそうです。
「国際会計基準(IFRS)を策定する国際会計基準審議会(IASB)は同基準の適用企業に対し、M&A(合併・買収)に関する情報開示を拡充するよう要請する。M&Aが売上高やコストなどに与える効果を定量的に示すことを求め、2024年にも草案をまとめる。M&Aの世界的な増加で財務リスクが膨らんでおり、投資家がリスクを評価しやすくする。」
・世界の約3万7000社ののれんは22年末で約9兆5000億ドル(約1300兆円)。10年で5割増えた。
・IASB議長は、取材に対し、M&Aについて透明性を向上させ、経営者に説明責任を負ってもらうと述べた。
・24年にも公開草案を出し、数年後に適用の可能性。
・従来は定性的情報などにとどまっていた。
・企業が重要とみなすすべてのM&Aについて、実施した年の財務報告書で期待する相乗効果の開示を要請。定量情報の開示が必要。
・経営戦略に重大な影響を及ぼすM&Aについては、より詳細な開示。
・市場は歓迎。企業からは懸念する声。
・機密情報など一部については開示免除を検討。しかし、その対象について紆余曲折が予想される。
・のれんの定期償却再導入の議論は、反対論が根強く、減損処理のみの現行ルール維持を決めた。今回の開示拡充はそれを補完する狙いもある。
といった内容です。
この記事でいっている開示拡充は、昨年9月の会議ですでに決まっていた話のようです。
その詳しい内容はこちら。
IASB and joint IASB-FASB Update 2022 年 9 月(IASB)(日本の企業会計基準委員会による日本語訳です。)
「のれんと減損」というアジェンダで以下のような議論がなされたそうです。決定事項も記載されています。
「開示目的
IASB は、IFRS 第 3 号「企業結合」への 2 つの新たな開示目的の追加を提案することを暫定的に決定した。財務諸表利用者が次のことを理解するのに役立つ情報の開示を企業に要求することとなる。
a. 事業を取得するための価格に合意した際に企業が企業結合から期待した便益
b. 企業結合に関しての企業の目的が満たされている程度
11 名の IASB メンバー全員がこの決定に賛成した。
企業結合に関する情報
IASB は次の提案をすることを暫定的に決定した。
a. IFRS 第 3 号の B64 項(d)における企業が「企業結合の主要な理由」を開示するという要求を、「企業結合を実行したことの戦略的根拠」を開示するという要求に置き換える。
b. 企業結合の年度において、期待されるシナジーに関する定量的情報を企業が開示するという要求を IFRS 第 3 号に追加する。
11 名の IASB メンバー全員がこの決定に賛成した。
IASB は、「戦略的に重要な」企業結合について、企業が以下に関する情報を開示するという要求をIFRS 第 3 号に追加する提案をすることを暫定的に決定した。
a. 当該企業結合に関しての経営者の目的
b. 当該目的が満たされつつあるかどうかを経営者がモニターするために使用する指標及び目標
c. その後の各期間(経営者が自らの目的と比較して企業結合をモニターしている間)において、経営者の目的がどの程度まで満たされつつあるのか(当該指標を用いて)
11 名の IASB メンバー全員がこの決定に賛成した。」
「戦略的に重要な」企業結合」をどのようなものとするかや、情報開示の免除についても決定しています。
ちなみに、直近の2023年5月の会議では、のれんの減損について議論していますが、基本的には現行ルールどおりという結論のようです。