今年の株主総会は株主提案が増えているそうですが(「日本企業への「株主提案」が過去最多に 企業はどう向き合う?」)、株主提案の中でも経営の主導権を争うような事案を取り上げた3本の記事を紹介します。いずれも東洋経済オンラインのものです。
1.コスモ社長に「失格の烙印」押した村上氏の真意 株主提案の村上絢氏らを直撃インタビュー
「──コスモの公表資料にある「やるのなら血みどろになっちゃいます。短期的な買収防衛策をやられたら僕はもちろん全員の首を切りにいきます」という世彰氏の発言。穏やかではない内容です。
村上 それは「会社側の出す取締役候補の選任議案に賛成できないかもしれないよ」ということを言っている。父は感情が高ぶるときがあるが、これら切り取られた発言には前後の文脈がある。
とはいえ、父は反省していた。「僕はもう議論の場に出ないほうがいいのかな」と。がんばって伝えたい、伝えたいという気持ちが先走っているだけなのだが。」
「──6月22日のコスモの定時株主総会に向けて、山田茂社長の取締役再任に反対するよう、ほかの株主に呼びかけています。そこまでする理由は。
村上 いちばんの理由は、経営陣の保身のための不当な買収防衛策の発動について、「MOM決議」(買収者および経営陣を除いた株主の意思を確認すること)という不適切な方法で承認を得ようとしていることにある。
MOM決議が許容されうるのは「事案の特殊事情も踏まえて、非常に例外的かつ限定的な場合に限られる」。経済産業省が立ち上げた「公正な買収の在り方に関する研究会」の指針原案にはそう書かれている。そして特殊事情として示されているのは、「買収手法の強圧性、適法性、株主意思確認の時間的余裕」などだ。
私たちは、2022年4月の株式取得以降、コスモに何度も説明をしてきた。しかも買収防衛策をコスモが今年1月に導入して以降、1株も株式を取得しておらず、約半年間、株式を購入していない。株式をさらに追加取得するかどうかも現時点では決めていない。
つまり、強圧性や株主意思確認の時間的制約は存在しない。そのような中で、MOM決議を強行することはあってはならない。」
(コスモ側の反論は→「コスモ社長「村上さん側の主張は株主還元に終始」 「再エネ分離」迫る旧村上ファンド提案に猛反論」)
2.任天堂創業家へ反撃!東洋建設「意外すぎる一手」 6月27日の株主総会を前に攻防がヒートアップ
東洋建設は、任天堂創業家側に対抗するかのように、新しい経営体制への移行を発表したそうです。
「東洋建設が提案する新役員案について、YFO関係者は次のように明かす。「大林氏や平田氏といった、土木と建築という事業柱のバックグラウンドがある方については、(YFO側は)反対しないだろう。ただ、スキルセットを考慮したうえで、一部の役員候補については反対するかもしれない」。
この関係者のいうスキルセットとは、YFOが株主提案する役員候補との経営上のバランスのことだ。YFOは常勤取締役候補として、元三菱商事の代表取締役である吉田真也氏、元フジタの建築本部理事の登坂章氏、そして社外取締役候補として弁護士で日本ガバナンス研究学会理事の山口利昭氏などを提案する。」
「YFOとしては、提案する新役員候補の9人全員が東洋建設の経営に参画することが前提だが、そのうち数名が選任されることも考えられる。つまり、結果としては、今後の東洋建設の経営は、東洋建設側が提案する役員とYFO側が提案する役員が混在する「連邦」体制になる可能性はある。」
そのそも、任天堂の創業家が、中堅の建設会社を狙う意味がよくわからないのですが...。村上ファンドの二番煎じをやって、何がおもしろいのでしょう。
3.老舗ベンチャーキャピタルで「経営権争い」再び FVC社長の更迭を狙う筆頭株主は何者か
昨年の定時株主総会では、投資家グループの提案が通り、金武偉氏が社長に就任しました。
「2.5%の株式を保有するにすぎなかった金氏が勝利できたのは、同社の株主構成に理由がある。約6000人の株主のうちメインは個人。創業家株主はいない。その中で約8%を保有していた筆頭株主の法人「DSG1」が、金氏の株主提案に賛同し、経営陣交代を後押しした。
ところが6月13日に開かれる今年の定時総会を前に、DSG1が取締役7人の選任を求めたのだ。DSG1は今年2月から株を買い増し、6月3日までに保有比率が22%となっている。その影響力は大きい。
一方、現経営陣は金氏を含む2人の取締役(3人の監査等委員取締役は含まず)の再任案を出している。計9人で定数8人の枠を争うことになった。」
DSG1の代表者は、ラブホテルの経営などをやっていた人だそうです。
そのほか、株主提案ではありませんが、議決権行使助言会社の米グラスルイスがトヨタ自動車の会長の選任に反対推奨しているそうです。
トヨタ会長に「反対」推奨、18年ぶり株主提案 異例の株主総会(朝日)
「豊田氏の選任に反対したのは、米グラスルイス。5月、取締役の候補者10人について「十分な数の独立した社外取締役がおらず、客観性や独立性、適切な監督能力について重大な懸念を抱いている」とし、その責任は取締役会議長の豊田氏にあるとした。」